研究最前線リポート電気工学専攻 03

Professor Report

電磁界を操るワイヤレス給電技術で
医療と産業に貢献したい。

◎ 佐藤 文博 教授

ラテン語の「ubique(遍在)」に由来する「ユビキタス」という単語が、我々の日常生活に浸透してきました。スマホを用いたSNSのように「欲しい情報を、いつでもどこでも簡単に得られる」ことを指してよく使われますが、じつは電気エネルギーの世界にも、この単語が馴染んできています。電線や電気コードに頼ることなく、電力そのものを空間に放射して、いつでもどこでも送受電できるという技術の研究が進んでいるのです。

私は現在、こうした「非接触電力伝送」や「ワイヤレス給電」と呼ばれる技術を基にして、高速道路走行中の電気自動車に路面からワイヤレスで電力供給するシステムや、身体に非接触で入力した電力を用いて、がんを治療したり、肢体不自由な方の神経刺激を行って動作再建したりするシステムなどを開発しています。いずれの研究もパイオニアとしての自負があり、多くの企業との共同研究や特許の取得として成果が現れています。

「実質的に人々の役に立つこと」を信条として研究に取り組んでいますが、それは決して簡単なことではありません。常に最先端の知識を取り入れ、新しい発想を生み出し続ける姿勢で臨まなければ、真に役立つ研究の見極めはできません。電磁気の分野には長い歴史があり、すでに確立された学問のように見えるかもしれませんが、実際の研究においては、若者の新しい文化や柔軟な発想力こそが必要とされているのです。皆さんが、これから大いに活躍できる分野だと思いますよ。

Student Report

博士前期課程2年 ワイヤレス情報通信研究室
佐藤 拓也

周波数利用効率の向上により、無線通信方式を高効率化。

第5世代移動通信に向けた、無線通信方式の高効率化に関する研究を行っています。東京オリンピック・パラリンピック開催への対応やIoTの普及促進など、2020年以降の移動通信システムには多くの要求条件が課せられています。その中で、私は周波数利用効率の向上に着目しました。それによってデータ伝送効率を上げ、大容量化や低電力化を実現しようという研究です。複数の手法を組み合わせた新方式を考案しているので、見通しと異なるシミュレーション結果が出た場合、原因の特定は非常に困難です。特定に2週間ほどかかったこともありますが、究明したことを次に活かして興味深い結果が得られた時は「また一つ新しいことを知ることができた」と研究の面白さを再認識します。その手応えを糧に、新方式の実現を目指して最後までやり遂げようと思います。