先端を駆ける研究者たち|情報インタラクション研究室

人間の認知特性を活用し、より使いやすい作業支援システムを開発。

木村 敏幸 准教授

【RESEARCH THEME】
インタラクションによる作業支援システム開発

さまざまな作業支援システムを開発

視覚や聴覚など、人間が複数の知覚情報を処理する過程を解明し、誰にとっても使いやすい作業支援システムを実現したい。
その思いを根幹として、木村准教授はさまざまな研究開発に取り組む。
立体音場再生や音像定位の技術を応用した音提示システム、それらと映像ディスプレイと組み合わせた視聴覚システムなど、開発例は多方面に枝を広げる。
「今、新たに進めているのは、大画面多地点遠隔通信会議システムのための音提示と、大学キャンパス用電子掲示板に関する研究です」。
大画面多地点遠隔通信会議システムでは、誰が話しているのか直感的にわかるよう、MVP方式という新たな立体音響技術を提案。もぐらたたきゲームを使ったユニークな実験で、有効性を実証できた。
大学キャンパス用電子掲示板では、紙の掲示板と同じような使い勝手の実現を目指し、PDF貼付方式を提案。評価実験で、確かな手応えを得ている。
「どんな方法で研究するか、いかに新しい技術を思いつけるか、ネタ探しにはいつも苦心しています。でも、やりたいことを仕事にしているので、研究生活の満足感は大きいですよ」。

マルチモーダル情報処理の基礎研究

誰にとっても使いやすい作業支援システムを開発するためには、人それぞれに異なる認知特性の解明が不可欠だ。
人間が知覚情報をどのように処理しているのかを理解するために、本研究室では、マルチモーダル情報処理過程の基礎研究にも取り組んでいる。
スピーカーを左右に置くステレオフォニックや、スピーカーを上下に置く垂直パニング、映像ディスプレイの後ろ側から音を出した場合など、さまざまな条件において複数の位置で音を聞かせ、その結果を統計的に分析する。
「誰がやっても同じ結果を出せるためにはどうすればいいのか、試行錯誤を重ねています。この研究は奥深く、知れば知るほど興味が増していきます」。
マルチモーダル情報処理の中でも、特に聴覚の情報処理過程は、いまだに不明な点が多い。だからこそ、それを解き明かすことで応用できる分野も幅広い。
これまでの基礎研究で得た成果は、新たな音場収録・提示システム構想の源となり、遠隔操作コックピットや大学キャンパス用電子掲示板、遠隔通信会議システムなどの開発につながっている。
「もともと音楽が好きで、大学院生時代には、音に関する職業に就きたいと思っていました。それがきっかけで現在の研究テーマに興味を持ったのです」。
大学院は、将来ライフワークとなる研究との、出会いの場でもあるのだ。

【PROFILE】
2005年名古屋大学大学院人間情報学研究科社会情報学専攻博士後期課程修了。東京農工大学特任助手、情報通信研究機構有期研究員などを経て、2015年より東北学院大学大学院工学研究科電気工学専攻准教授。