研究最前線リポート機械工学専攻 01

Professor Report

人の身体と心を深く理解することで
人に優しい生活支援機器を開発。

◎ 梶川 伸哉 教授

日常生活や介護・福祉の現場で利用できるヒューマンケアロボットや生活支援機器の開発を行っています。人の体に優しく触れ、マッサージなどのサービスを提供できる安全性の高いロボットハンドや、車椅子搭載型のロボットアームなどの製作です。また、それらの機器を誰でも容易に使用できるような操作インターフェースの研究も行っており、直観的で曖昧な言葉でもロボットが動かせるような仕組みや、四肢に障がいのある人でも動かせる舌用のジョイスティックなどを考案・開発しています。

そんな研究テーマの一つとして、電動車椅子の知能化、多機能化、フレンドリー化に力を入れています。高齢者や身体障がい者の移動手段として、今後ますます需要が高まることが予想されますし、認知機能や操作能力が低下した人々にとっては、操作アシスト機能(危険回避、自動運転など)の充実が不可欠だと考えられるからです。

こうした機器は、人間の身体や心理についてのさまざまなデータを基に設計するのですが、その過程においては常々、人の能力の凄さや複雑さに驚きを感じます。人の能力を理解することで、さらに新たなものづくりの発想が湧いてきます。「人を知ること」と「ものをつくること」をどちらも深く経験でき、その関係性を考えながら研究した成果が、やがて人のために役立っていく──これが当研究室の魅力だと思います。ぜひ一緒に学び、考え、新しいものをつくってみましょう。

Student Report

博士前期課程2年 人間─機械システム学研究室
大場 拓

生活支援機器の研究を通して、福祉社会の進歩に貢献を。

操作反力提示可能な舌操作型ジョイスティックの研究がテーマです。四肢に障がいを持つ方が、生活支援機器を安全かつ直感的に、舌で操作できるインターフェース装置の開発を目的としており、舌に対して力覚情報のフィードバックを行うことで、より高度で多彩な操作を実現しようという研究です。舌の運動能力や触覚などを解析し、その特性に基づいたデバイスを作製して、さまざまな実験により性能評価を行っています。操作方法ごとに反力の調節・提示が可能な新機構を考えるのは苦心しましたが、主任教授や技術者の方々とのディスカッションを通して、工夫を重ねました。また、学会発表の場で多くの研究者と意見交換できたことも、非常に良い刺激となりました。今後はこのデバイスを生活支援機器と接続し、実用化に向けて有効性を評価していきます。