東北学院大学による大学情報誌発刊
2011年01月21日
本受託研究は、いまから約2年前の2009年4月に始まった。東北学院大学経営学部(村山貴俊教授)は、東北学院大学産学連携推進センターを通じた文系学部初の受託研究契約(2009、2010年度、各年度5万円)を、仙台市の教育サービス・ベンチャー(株)セレクティー(商標名:家庭教師・個別指導のアップル)と締結した。これは、経営学部の教育理念の1つ「経営学の理論と実践の融合」に沿った取り組みでもあった。
ニーズの発見
印刷・出版会社との共同事業とする案も考えられたが(これだと100万円程の資金が必要)、今回は、「学生らしさ」、「独自性」、そして「非営利」などをキー・コンセプトとし、企画、編集、取材、撮影、執筆のすべてを村山ゼミナールで引き受けることとした。まさに自分たちですべてを引き受けることでゼロ・コストでの作成を試みたわけだが、そこには高校生や中学生に雑誌を無料で配布したい、という学生たちの想いがあった。また、お金をかけなければ売るための雑誌作りにはならず、自分たちが本当に伝えたい情報を自分たちなりの視点で高校生や中学生に発信できるという学生たちの考えもあった。また、印刷代も節約するために、今回は、雑誌のPDF版をCD-ROMで配布すると決めた。
苦難の連続
また、学生への取材では、ゼミ生たちが、学業だけでなく、サークルやアルバイトなどを通じて培ってきた在仙他大学の学生たちとの人的ネットワークが存分に活かされた。結果、より多くの大学、より多くの学部の学生の勉強や生活の実態を取り上げることができた。また、ファッションや通学スタイル、一人暮らしの部屋、仙台のお祭りを支える学生団体の取り組み、保護者へのインタビューなど、学生同士だからこそ聞き出せた情報もたくさん掲載できた。
第二の難関は、実際の記事の作成やレイアウトであった。5万円の受託研究費により導入した雑誌編集ソフトを使って作成と編集をおこなったが、業者の手をいっさい借りないという目標を掲げたため、すべてが試行錯誤であった。売れている雑誌のレイアウトなどを参考にしながら、何度も書き直しや配置の見直しをおこなった。また情報が不足していたり、良い写真がない場合は、幾度も取材先の大学や施設に足を運んだ。結局、学生は冬休みも返上で作成に取り組み、最終版が完成したのは報告会の数時間前であった。
報告会
セレクティー畠山明社長からは、「取材、作成は本当に大変だったと思います。内容を拝見して感激しました。売ることを考えていない、自分たちが高校生の頃に知りたかった情報をリアルに発信するという想いが、良い結果を生み出したのだと思います。巷にあふれている商業目的の受験雑誌とは、コンテンツが差別化されていますし、高校生や中学生が本当に知りたいのは、皆さんが伝えようとした大学入学後の生活や学びに関するリアルな情報なのかもしれませんね。より多くの高校生や中学生に読んでもらえるようにしたいです」とのコメントを頂いた。
その後、贈呈式では村山ゼミナールからセレクティーに同雑誌のCD版および製本版が引き渡され、セレクティーからは学生一人一人に感謝状が贈られた。
また、本報告会および受託研究の成果については、2011年1月15日付『河北新報』朝刊で報じられた。なお情報誌の詳しい内容を知りたい方は、(株)セレクティー(022-223-5001)までお問い合わせ頂きたい。
いま1つの共同研究と今後の展開
実は報告会では、もう1つの研究が報告された。それはセレクティーが地元の若手起業家を支援する形で展開されりネット通販事業の改善に関する提案であった。実地調査の結果、同ネット通販は、オリジナル製品の欠如、ホームぺージの構成、大手ネット通販運営企業への高額な手数料支払いなど多くの問題を抱えていることが明らかになった。そこで学生グループは、セレクティーが大切にする地域との繋がりをキー・コンセプトとし、大手通販運営会社から独立しても顧客に閲覧してもらえるような魅力ある通販事業構築の可能性を検討した。その結果、宮城県のB級グルメ総合マップの製作、さらに現地取材情報を盛り込んだうえで、そこから商品購入へと結びつけるビジネスを考え、実際に通販用のホームページ「発掘!宮城県ご当地B級グルメマップ」を試作し、セレクティーおよび若手起業家に提案をおこなった。このホームページも学生が1年かけて宮城県のB級グルメや特産品を実際に取材して作り上げた力作である。ただし、実際に特産品やB級グルメの販売するためには、商品を扱うメーカーや小売店などとの交渉や契約が必要となるため、当該受託研究は今期で終了するものの来年度以降も同課題を継続して検討していくことになった。
セレクティーの畠山社長からは「人材や開発資金など不足する地域のベンチャー企業にとって、地域の大学さまとの連携は今後ますます必要になる。サービスを手がける弊社にとって、経営学部などとの関係づくりは特に重要となる。来年度以降も、可能であれば、受託研究を延長して頂き、地域の大学さまと一緒に様々な経営課題を解決していければ」との言葉を頂いた。