陶久教授のドイツ留学日記(56)
2016年05月18日
【物乞い】
物乞いの姿をこの町でよく見かけます。しかも、殆どが比較的若い男。駅や郵便局、デパート、教会などの出入り口に必ずいます。その数、10人は下らないでしょう。ドイツの町からその姿が殆ど消えたかのように思っていましたが、そうではありませんでした。彼らはどこに住んでいるのでしょう? 食事や入浴は? 生活保護等の社会保障は? 何が人をして物乞いにさせるのでしょうか? 老い? 失業? 難民? 生活への失望?
新聞には、厳しい労働環境に疲弊している若者特に男性の約3割が、精神的治療を要している、との記事も掲載されていたようです(妻からの情報による)。経済大国と呼ばれているドイツも、日本と似たような状況にあります。そのような状況に耐えられない人々が必ず一定数はいて、更にそのうちの何割かが物乞いをするようになるのでしょうか? 経済的・宗教的・社会的等の背景を探ることは急務です。
正直なところ私は、物乞いをする人の姿を見たくはありません。一方は与えるだけ、他方はもらうだけ、という形を取ることが、人間相互の「対等」とか「互酬性」といった原理と矛盾するように思えるからです。何よりも双方が笑顔で向かい合えません。これは辛い。(写真は町中心部の教会/物乞いとは無縁の町郊外の風景)
法学部教授
陶久利彦