東北学院大学

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国際交流部長 ドイツ協定校訪問記

2012年04月03日

 2012年3月18日~3月24日、ドイツにある協定校2校(ラインマイン大学・トリア大学)を訪問してきました。協定校訪問は、一昨年前の韓国協定校2校の訪問、昨年のアメリカ研究夏期講座の際に訪問した米国協定校2校に続く訪問となります。ドイツとの交流は他の国にくらべて、非常にうまくいっていますが、長い関係であればあるほど改善すべきところや見直すべきところが出てきます。また国際交流では、国や時代によってニーズが異なるので、常にその変化を捉えなければなりません。メール等を使えば簡単に済みそうですが、留学経験とまったく同じで、協定校との話し合いは、実際に会って話すことで何十倍もの効果があります。今回の訪問の目的は、東日本大震災後の本学における留学環境の説明と、これまでの交換プログラムにおける問題点の整理と検討、新たな国際交流のあり方について話し合うということでした。

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ラインマイン大学訪問
 3月18日に仙台空港から成田空港を経由しドイツのフランクフルト空港へ到着。それからDBというドイツの国鉄に乗り換えて、ヴィースバーデン市を目指しました。到着は日が暮れかかる頃で、仙台から約20時間の旅でした。
 ヴィースバーデン市は、ドイツの西側、ライン川とマイン川の合流点に位置し、カイザー・フリードリッヒ・テルメをはじめとする温泉が湧き出る、ドイツの保養地として有名な都市です。街はコンパクトなつくりで、中心部にはお店やレストランの立ち並ぶ商店街があり、それを囲むようにテルメや歌劇場、大聖堂がある美しい街でした。

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ヴィースバーデン市内
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車窓からマイン川


 19日に、ドイツ協定校1校目であるラインマイン大学を訪問しました。ラインマイン大学は14学部8千名の学生を数える大学で、ヴィースバーデン市内に学部が点在する、いわゆる都市型大学という形態の大学です。本学が主に交流しているのは、街の中心部にあるビジネス・スクールです。このビジネス・スクールでは第二外国語として日本語が選択必修になっていて、一学年50名のうち10名ほどが日本語を選択しています。かつてバブル時代には、日本の企業や経済を学びたくて日本語を専攻する学生が多かったのですが、現在は、マンガをはじめとするポップカルチャーに対する興味から日本語を学びたいという学生が多いそうです。
 ラインマイン大学の学生は、1991年から行われている日本研究秋期講座という9月~12月までのプログラムに主に参加しています。日本研究秋期講座では、日本語学習に加えて、文化と経済に関する講座が英語で提供され、かつ受講生にはそれぞれの問題意識に基づいた課題研究が課されます。3か月という短いプログラムですが、その中で日本語能力の向上と、日本の文化・経済に関する知識の習得、課題研究の作成・発表をしてもらうという非常に内容の濃い講座です。内容が濃いゆえに我々受け入れ側も準備が大変なのですが、昨年は東日本大震災の影響でプログラムは中止、今年度も参加希望者がゼロという残念な結果になってしまいました。そこで、今回の訪問では、その事態の打開と本学からの派遣を活発にするための話し合いをしました。
 話し合いには、学部長のレネット教授と、日本語を担当されている中山先生、国際交流職員2名が同席しました。最初に、今回の東日本大震災に関連して、日本研究秋期講座に参加した学生が中心となってチャリティ・イベントや募金活動をしてくれたことに対して感謝の意を表し、現在の復興状況などの話をしました 。
 続いて、日本研究秋期講座についての具体的な話し合いを行いました。ラインマイン大学から本学へ留学を希望する学生は多いものの、原発の不安から昨年、今年と参加者がゼロであること、また、日本語は他の言語よりも難しく留学年度まで日本語の専攻を継続する学生が半分に減ってしまうため、少人数しか派遣できないことなどを聞きました。しかし、日本の受入先としては依然として人気も高く、受講した学生の満足度が非常に高いため、ぜひとも秋期講座を継続してほしいとの要請を受けました。本学側としては、留学生に来てもらうことは非常にありがたいけれども、少人数の受け入れにも柔軟に対応できる交換留学について提案し、半期留学という比較的学生達が滞在しやすい留学のあり方について話し合いました。これは、ラインマイン大学からの学生のみならず、本学からの派遣についても同じです。

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ラインマインビジネススクール
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ラインマイン大学ランチ
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ラインマイン大学スタッフ
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 海外留学に関しては、多くの学生が非常に興味を持っているものの、不安から1年間の滞在にはしり込みしてしまうケースが多く、最近は半期や3週間などの短期留学が人気です。話し合いの結果、お互いこれまでの留学プログラムを生かしつつ、半期の交換留学もしましょうということになりました。また、ヴィースバーデンは市民大学講座が充実しているので、ドイツ語に不安がある学生にはその講座を受講することをお勧めするということでした。なお、ラインマイン大学における生活に関しては、英語でのサポートが主となりますが、スタートアップの際には日本語を学んでいる学生が空港出迎えや生活のサポートをしてくれるということで、派遣する我々としてもひとまず安心できました。
 約2時間半に及ぶ話し合いの後、日本語講師の中山先生と小林先生がメインキャンパスや学生寮、市内などを案内してくださりました。メインキャンパスでは、ドイツで一番おいしいといわれている学生食堂へも伺い、実際にラインマイン大学で学んでいる学生たちの生き生きとした姿を見ることができました。それから学生たちが過ごすヴィースバーデンの街の様子や治安の良さについての説明を受け、長い1日が終わりました。

トリア大学訪問
 3月20日。今日は、ヴィースバーデンからトリアへ移動です。トリア市はルクセンブルグとの国境に近いところにあり、ヴィースバーデンからは国鉄を乗り継いで約3時間半の長旅です。ライン川沿いを走る電車の窓からは、古城が見えてとてもきれいでした。ライン川をはさんで反対側には、教会を中心とした小さな集落がいくつもあって、ヨーロッパ特有の都市形成の様子が分かり、非常に興味深いものでした。旅の途中,ライン川からモーゼル川へと流れが変わると、景色も一転、今度は山の壁面が一面ブドウ畑となります。モーゼル地方はシャトーが立ち並ぶドイツワインの産地です。私が訪問したときは、残念ながらまだ幹だけでしたが、収穫時期にはきっとぶどうの甘い芳香が漂っていることでしょう。
トリア市には午後2時ごろ着きました。3時間半は長いかな、と思ったのですが、ライン川・モーゼル川の美しい景色を見ながらの旅はあっという間でした。
 さて、トリア市には、協定校トリア大学があります。国際交流の仕事をするまで、トリアという街の名前すら知らなかったのですが、今回の訪問を機に調べたところ、多くの世界遺産があるだけでなく、カール・マルクスの生家もあるという、一大観光地でした。私が訪れたのは平日でしたが、街はヨーロッパ中から来た観光客でにぎわっていました。

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トリア大学スタッフ
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トリア大学キャンパス
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トリア大学の学生たち
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 宿泊予定のホテルは、トリア大学の提携先で,駅から徒歩で10分程度のところを紹介していただいたのですが、世界遺産に登録されているポルタ・ニグラという2世紀末に作られた城壁のすぐ隣にありました。このようにトリアの街は、ちょっと歩けば沢山の世界遺産を見ることができる、旧ローマ帝国とドイツの歴史を感じる街でした。
 明けて3月21日、トリア大学訪問の日です。トリア大学は郊外型の大学で、トリアの中心地から車で20分ぐらいのところにあります。広大な敷地の中にすべての学部が集まっていて、学生数は1万6千人という大きな大学です。
 到着後、すぐに国際交流担当スタッフのクルガーさんと、派遣・受け入れ人数や期間についての交渉を行いました。トリア大学は、ドイツの留学先として人気が高く、今後も留学希望者が増加すると予想されます。また、半年の予定で留学した学生が、もう半年滞在したいなど、留学後に滞在期間の延長を申し出るケースが最近多く見られます。しかし、延長した場合に、次期の受け入れ人数に影響が出ると、公平な留学機会を与えられなくなる可能性があります。そこでその件について相談したところ、延長した場合でも受け入れ人数を変更しないという確約を頂くことができました。せっかくの留学の機会を多いに生かしたいものです。

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トリア大学学生寮
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トリア市内


 次に、最近始まったサマープログラムについても伺いました。サマープログラムは、ドイツ語の初学者から上級者までレベル別に集中してドイツ語を学ぶ3週間のプログラムです。ドイツへの正規交換留学の準備としてサマープログラムだけに参加したりすることも可能ですし,留学中の学生や、留学期間終了後のプラスアルファとしても、ドイツ語能力を伸ばすのにはうってつけのプログラムです。そこで、サマープログラムの利用の可能性についてうかがい、本学としてもこのプログラムを今後有効に活用したい旨を話しました。
 その後、キャンパス内にある学生寮を見学させていただきました。トリア大学では一般学生の多くが寮生活を送りますが、国際交流課でも、130室を留学生用におさえて提供しているそうです。学生寮にはすべての設備が整っており、さながらワンルームマンションのようなつくりです。パブリックスペースには、学生たちが懇談する場所やパーティを行う場所、ランドリーなどもあり、快適に過ごせそうな印象を受けました。
 学生寮の見学後、学生食堂では、本学に留学していたことのあるユリアさんとティロ君が待っていてくれました。2人にアテンドしてもらいながらランチを済ませ、いよいよトリア大学と東北学院大学との交流のあり方についての話し合いです。
 ユリアさんとティロ君に加え、4月から本学に留学する予定のアンヤさん、9月から留学する予定のニコラス君とクリストファー君、本学からトリア大学に滞在中の佐々木さん、これから留学を開始する川村さん、小堺さん、熊谷さん、高島さんが参加しました。日本学科の下羽先生が司会となって、まずは留学経験者から、良かったところ改善すべきところなど、率直な感想をもらいました。そして、これから留学を開始する日本とドイツの両方の学生から不安なことや準備に関して戸惑ったことなどを出してもらい、どうしたら問題が解決できるか、良いプログラムにするにはどうしたら良いかなど、時間をかけて話し合いました。また、これからのトリア大学と東北学院大学との交流のあり方の一つとして、東日本大震災の復興関連のスタディツアーや被災者とのつながり、復興支援などを協同学習という形で何かできないか、という提案も受けました。単にそれぞれの大学で学ぶということではなく、お互いの国や大学の長所を生かした取り組みに基づいて継続的な相互学習をしていくことで長期的な関係性を築いていこうという話が取り上げられました。本学としてどのようにこの協同学習に取り組めるか、今後、国際交流部や関係する学部・学科に提案してみたいと思っています。この話し合いは、約2時間にも及ぶ、非常に中身の濃い話し合いでした。正直なところ、学生たちからの意見は、派遣・受け入れを行う部署として、耳が痛いこともありましたが、今後の国際交流事業の改善には大いに役立つことでしょう。
 学生たちとの話し合いの後、日本学科長のゴスマン教授とお会いしました。ゴスマン学科長は、今回の東日本大震災に非常に心を痛めていて、震災時における本学の様子や震災後の復興状況に強い関心を寄せていました。約1時間にわたっての懇談でしたが、これからも東北学院大学との関係を大切にして、支援していきたいとのお言葉を頂きました。
 朝10時から5時まで休みなしの訪問となりましたが、非常に充実した話し合いができました。その後、下羽先生のお計らいで近くのモーゼルのレストランに連れて行っていただき、ディナーをいただきながら復興支援に関する協同学習や国際交流についてさらに話し合い、気がつけば夜9時を過ぎていました。
 翌日の22日は空港に近いフランクフルトへ3時間半かけて移動、23日にドイツを飛び立ち帰国しました。

 駆け足での協定校訪問ではありましたが、それぞれの大学の関係者と直に顔をあわせて率直に意見を交換したことは非常に有意義でした。ドイツとのより活発な交流を目指していきたいと思います。