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『3.11 慟哭の記録』 (東北学院大学准教授 金菱清 編)の出版社、新曜社が、第9回 「出版梓会新聞社学芸文化賞」を受賞

2013年01月18日

昨年12月、第9回 「出版梓会新聞社学芸文化賞」が発表され、東北学院大学教養学部地域構想学科准教授 金菱清 編『3.11 慟哭の記録 71人が体感した大津波・原発・巨大地震』を出版した新曜社が受賞しました。

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「新聞社学芸文化賞」は、1年半以上が過ぎて大震災が時として過去の出来事として扱われかねない状況は看過できず、ジャーナリズムとしては原発の問題を含めたこの大災害を、常に心にとどめておくべきではないかという観点から「3.11 慟哭の記録」の出版が決め手となり、今回の受賞となったそうです。
ちなみに、「梓会新聞社学芸文化賞」とは、「主要新聞社・通信社の文化部長で構成した選考委員会の選考」によって贈られる賞です。
 1月17日、日本出版クラブ会館において、出版梓会の授賞式が行われ、『3.11 慟哭の記録』の出版社、新曜社の関係者が出席し受賞と記念品、副賞などを受けました。
  受賞式には新聞社、通信社7社の文化部長が出席、選考委員長である東京新聞文化部長の講評を下記にご紹介します。


第9回 出版梓会新聞社学芸文化賞株式会社 新曜社 殿

選考のことば
歴史の中の出来事は、記録されることで初めて後世に残される。いにしえの記録の多くは為政者のものだったが、2011年3月に東日本を襲った大震災と津波、そして原発事故は、政府や電力会社による報告から、マスメディアによる報道、さらにはツイッターの個人的なつぶやきまで、さまざまな形で記録され、歴史となった。活字や映像、電子媒体に残された3.11の記録は、おびただしい数に上る。
だが、どんなに網の目を小さくしても、漏れてしまいがちな情報がある。美談の陰で起きていた犯罪とか被災者の何気ない仕草とか、遺体に触れたときの感触といったものだ。新曜社が出版した『3.11 慟哭の記録 71人が体感した大津波・原発・巨大地震』(金菱清編、東北学院大学 震災の記録プロジェクト)は、そんな網からこぼれがちな情報に満ちている。

スーパーに略奪に入った子供が「お母さん、カップラーメンあったよ」と言うと、母親が「よく見つけたね」と褒める光景。「中国人に刺された」というデマ。ボランテイアが持ってきた下着が、婦人用の3Lだけだったこと。避難している中学校の図書室で『ハリー・ポッターと死の秘宝』を手に取る若者。「あなたでなければできない仕事がある」と言われて行ってみると、遺体の身元照合のボランテイアだったこと…。包み隠さず体験を語る被災者たちのモノローグは、公式な記録や報道の陰に隠れがちな「3 ・11の襞の奥」まで伝える良質のドキュメンタリーだ。小さな活字で541ページ。ひとりひとりの言葉の力で描く、長大な「震災エスノグラフィ」は、3.11関連の膨大な数の出版物の中でも傑出しており、最終的に全社一致で新曜社への受賞が決まった。
(東京新聞文化部長 加古陽治氏)


 まさに、最大の賛辞をいただきました。
 また、金菱清准教授は、現在発売中の『文藝春秋』2月号の「人材はここにいる」特集で、10年後の日本を担う逸材、108人として、今後の活躍が期待される社会学者と紹介されています。

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【梓会出版文化賞】について
1948年、出版界と読書文化の復興を目標に、有志出版社42社によって設立さ;た「出版団体・梓会」は、1984年7月、その公益的活動が認められて「社団法人出版梓会」となり、2012年には「一般社団法人 出版梓会」に移行し、現在は専門書を中心とする中小出版社111社を擁する出版文化事業団体となりました。
当会は社団法人化を機に、出版文化の向上と発展に寄与することを目的として「梓会出版文化賞」を創設し、以来毎年、年間を通して優れた書籍を発行している出版社を顕彰してまいりましたが、2004年には同賞「20周年記念」として特設した「新聞社学芸文化賞」の常設化によってさらなる充実を図り、もって「梓会出版文化賞」はますます読書界の注目を集める大きな賞へと発展してまいりました。
対象となる出版社は、原則として年間5点以上の出版活動を10年以上にわたって継続している中小出版社であり、各出版社からの自薦図書と一般読者の方々から寄せられた推薦図書をもとにして選考いたします。