東北学院大学

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『ヨーロピアン・グローバリゼーションの歴史的位相―「自己」と「他者」の関係史』を公刊

2013年08月12日

文学部歴史学科 教授 渡辺 昭一          

 今年6月に、平成19年度~平成23年度にかけて私立大学学術研究高度化推進事業「オープン・リサーチ・センター整備事業」に採択された、「ヨーロピアン・グローバリゼーションと諸文化圏の変容に関する研究」(研究代表者・渡辺昭一)の研究成果を勉誠出版社から公刊することができました。およそ5年間にわたり、学内研究者11名、学外研究者10名の総数21名によって組織され、さらには、各メンバーの個人的ネットワークにより国内外の多くの研究者から協力をいただきました。またヨーロッパ文化史専攻のPDやRAをはじめ特別研究員として東北大学のPDなど若手研究者にも参加してもらうとともに本学の教職員の方々からも多大のご支援を得て継続してきた成果であると思います。
 本書は、紙面の関係上、残念ながら全員が執筆するには至りませんでしたが、その共同研究の成果は十分に反映されていると思っています。「ヨーロピアン・グローバリゼーション」は、聞きなれない言葉ですので、当初から賛否両論を引き起こした概念でした。このプロジェクトの狙いは次の点にありました。つまり、今日の市民社会の形成・発展に及ぼした「ヨーロッパ」(単なる地政学的な意味ではなく歴史的に古代ギリシア・ローマ文化を継承し、かつキリスト教的文化を共有する空間)に着目して、その「ヨーロッパ」という枠組みの形成・発展において生じた国家、民族、都市、農村がおりなす様々な問題をグローバルな視点から検討することにありました。その際、ヨーロッパの精神構造の核となっているキリスト教の拡大と市民社会の形成との関係、さらには「ヨーロッパ」世界から非ヨーロッパ世界への膨張に伴って繰り広げられてきた他の文化圏、特にイスラーム文化圏、ヒンドゥー文化圏、アジア文化圏との対立・融合・共存関係を検討し、現代社会に起きている世界紛争の歴史的背景とその解決に向けての展望を得ることをめざしました。
 グローバル化が進んでいる今日において、依然として国家と国家、民族と民族間の対立が起きていますが、歴史的にアイデンティティーがどのように形成されてきたか、いかに共存共栄がはかられてきたかを知るのに有益な書と思いますので、できるだけ多くの方々からお読みいただけることを願っています。

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