永きにわたって人々を見守ってきたラーハウザー記念東北学院礼拝堂のステンドグラス『昇天』の調査報告

2016年12月02日

 東北学院創立130周年記念事業、キリスト教文化研究所 第57回学術講演会「ラーハウザー記念礼拝堂の『昇天』ステンドグラス:イギリスにおける中世美術復興」が、11月5日に土樋キャンパスのラーハウザー記念東北学院礼拝堂において開催されました。

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 1932年に献堂されたラーハウザー記念東北学院礼拝堂(2014年12月、国の有形文化財に登録)のステンドグラスは、キリストが11人の使徒に最後の祝福を与えて昇天する場面が色鮮やかに表現されています。そのステンドグラスを調査・鑑定した専門家からの報告が行われるとあって、当日は140名という多くの聴衆が礼拝堂に集いました。
 開会にあたって松本宣郎学長は「創立130周年記念イベントの中でも、大きな題目のひとつが礼拝堂のステンドグラスの解明です。戦争や東日本大震災といった数奇な運命にさらされながら大切に守られてきたステンドグラスの奥底に込められたメッセージや芸術的価値などを掘り下げていただくことに大変嬉しく思っています」とあいさつしました。
 「時を超えた光のメッセージ ステンドグラス」と題した講演を行った光ステンド工房代表の平山健雄氏は、ステンドグラスの作り方やその起源などの歴史的背景にふれながら「これほど奥行き感のあるステンドグラスはとても珍しく、絵付け職人がパーツ毎に制作し、キリストと天使たちの衣は同じ黄色でも異なる色で表現され、手足の指の描写もとても繊細です」と解説。「“頭光”という使徒たちの頭に描かれている光彩もひとつひとつ微妙に変えられているなど、濃密な要素の中にも空間構成が見事に描かれています」と、2016年6月に行ったステンドグラスの調査結果を報告しました。

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 このステンドグラスは、英国のヒートン・バトラー&バイン工房で制作されたもので、当時日本には3ヵ所にあったといいます。しかし東北学院の一年前1931年に設置された横浜クライスト・チャーチ(横浜山手聖公会)の作品は1945年に焼失。もう1ヵ所の作品は神戸にあって、おそらく民間の邸宅に設置されたもので現存しません。つまり日本国内に当時のステンドグラスとして現存しているのは東北学院の礼拝堂のみということが判明しました。
 続いて、「東北学院の象徴としての意味の拡がり」と題して、本学文学部の教授であり、キリスト教文化研究所所長の鐸木道剛氏が登壇。新たに発見された1931年にステンドグラスを発注した際に交わされた貴重な書簡などについて解説し、その一文に、「横浜の東北学院」と記されていたことなどを披露しました。
 鐸木教授は中世キリスト教美術史の研究者である視点から、「ステンドグラスは建物と一体となっていて、その姿は天候によって左右されます。つまり、自然とつながっている芸術なのです」とステンドグラスの魅力を伝えました。

161110-1-10.jpg  また、平山氏は「ステンドグラスの外側にガラスが入っていたおかげで80年以上保たれたことは幸いでした。ステンドグラスのメンテナンスがしやすい工夫を十分に考えた結果だといえます。今なら修復しやすい状態になっています。しかし、錆びた鉛やたわみが原因で破損してしまう可能性があります。美術的にも大変希少なステンドグラスです。早急な手当てをお勧めします」と語りました。 
 当日は、平山氏と鐸木教授の解説によって、ステンドグラスの細部を拡大したスライドを見て、またオペラグラスや双眼鏡で確かめながら、熱心に解説に聞き入っていました。鐸木教授が語ったように、日々行われる礼拝の際、このステンドグラスを見上げ幸福感を得ることは、東北学院に集う者の特権かもしれません。
 ステンドグラス『昇天』は今後、修復作業を行っていく予定です。
 続報は、最終的な鑑定結果が報告された後、改めてお知らせいたします。

 ※本学の「東北における神学・人文学の研究拠点の整備事業」については、こちらをご覧ください。