東北学院大学

新着情報

ステンドグラス修復完了記念礼拝 開催報告

2018年03月20日

180320-3_1.jpg 3月2日(金)午後1時からラーハウザー記念東北学院礼拝堂において「ステンドグラス修復完了記念礼拝」が執り行われました。震災による影響で傷みが激しかったステンドグラス(英国ヒートン・バトラー&パイン工房製)は、1世紀近い年月を経て、このたび修復され、正面に再度設置されました。これを記念して、礼拝と講演と音楽による祝福のイベントが開催されました。

180320-3_2.jpg 記念礼拝は教養学部の今井奈緒子教授によるパイプオルガンの前奏J.S.バッハの「いざもろびと 神に感謝せよ」からはじまり、礼拝堂の中に荘厳なる調べが響き渡りました。本学宗教部長の野村信文学部教授が登壇し、賛美歌66番「聖なる聖なる聖なるかな」が歌われました。聖書朗読は「ルカによる福音書」24章50~53節、そして賛美歌168番「イエス君の180320-3_3.jpg御名に」と続きました。「父なるみ神の右にのぼりて」と題した説教で野村教授は、ステンドグラスが86年の歴史を経て再生した経緯を語りました。「神のなされることは皆その時にかなって美しい」という言葉を引用しながら、今回修復に関わった人々と、先人への感謝の気持ちを表しました。ステンドグラスの絵に描かれているキリストと二人の天使、十一使徒の背景には夕暮れが浮かび上がっています。「一日は日没からはじまる」という聖書の言葉から、新しい一日の先頭に立ってキリストは私たちを導いておられ、たとえ暗い闇の中にいてもキリストは光として輝いておられるというメッセージを私たちに豊かに示していると説かれました。そのあと頌栄544番「あまつ御民も」が歌われ、そして後奏としてJ.L.クレープス「大いに喜べ、おおわが魂よ」が演奏されました。

180320-3_4.jpg 180320-3_5.jpg 180320-3_6.jpg


 休憩をはさんでの第2部の冒頭、松本宣郎学長が「ステンドグラスの修復により、イエ180320-3_7.jpgス・キリストが戻ってきました。十字架にかけられて3日後に復活し、また戻ってくると伝えて昇天しました。それを先取りしていると思います」とあいさつ。
 続いて修復作業を担当した光ステンド工房の代表・平山健雄氏(横浜180320-3_8.jpgマイスター)による記念講演「修復を終えて:甦るひかり」が始まりました。まず「86年前の姿そのままに生まれ変わりました」と7ヵ月間にも及んだ修復作業を成し終えた喜びを伝え、これまでステンドグラス制作の道を歩んできた人生の経緯を話されました。サンチャゴ・デ・コンポステラ巡礼路の村コンクで不思議な光の体験をし、気づいたら聖堂の中に。その聖フォアの聖堂での「光の洗礼」を受ける体験などについて話されました。そしてパリでステンドグラス制作を学んだ経験から、「光は神からのものだと体験しました。ステンドグラスは神のメッセージを伝え、光のもっている力により勇気をいただいている」と語りました。
 横浜の工房でステンドグラスを預かっての修復の日々。この間、地震が起きないことを祈り続けたそうです。作品の状態としては重病人にあたり、一刻も早い手当てが必要で、昨年8月からスタートした修復作業の流れを写真とともに詳しく説明しました。鉛桟を写し取るトレスからはじまり、パネルの変形度を測りながら分解。きれいに洗浄して、ガラスの割れを修復。絵付けの剥げたところは炉で焼成し、新しい鉛桟で組立て直す。最後はパテ詰から掃除、磨きをかけて完成に至りました。
 ステンドグラスはもともと修道士の修業のために、神への奉仕として始まったとのこと。もう一度、神中心の精神を蘇らせようとしたヒートン・バトラー&パインの名作が、日本に唯一、ここ仙台に、建物とともに残っているのは奇跡に近いと説明されました。最後に平山氏はラーハウザー記念東北学院礼拝堂が、建築家のJ.H.モーガンによる設計で、近代建築として知られる横浜山手聖公会とは兄弟にあたるという縁から、横浜につながる「東北学院のステンドグラスの修復、その再誕に深く関わることができて、すべてのものに感謝いたします」と静かなそして力強い言葉で結びました。

180320-3_9.jpg 180320-3_10.jpg 180320-3_11.jpg
180320-3_12.jpg 180320-3_13.jpg


 第3部は音楽による讃美プログラムが催され、今井教授によるパイプオルガンの奏楽と、180320-3_14.jpg中川郁太郎特任准教授による独唱が披露されました。まずステンドグラスの「復活」になぞらえて、神の復活、そして今が四旬節であることからも、受難の曲であるバッハのコラール変奏曲「おお人よ、汝の罪の大いなるを嘆け」が選曲され、同じくバッハの139番のカンタータより「成し遂げられた」が歌われ、そしてメンデルスゾーンの「われ心より焦がれ望む」による変奏曲、そして讃美歌「あめなるよろこび」、エルガーの晩祷曲集作品26第3曲「アンダンティーノ」、スタンフォードの聖書歌曲集「知恵の歌」、パリーの「夕べ」と続きました。パイプオルガンの天上的な響きと中川准教授による低音の表現力ある歌声が一体となって天と地が繋がったかのようで聴衆を魅了しました。
 そして、グリークラブOB合唱団による黒人霊歌の合唱が披露されました。曲目は「Steal away」と「Nobody knows de trubble」、「Deep River」。学院の歴史180320-3_15.jpgを感じさせる年配のOBによる、メッセージのはっきりとした人間的な神の讃美によって懐深いあたたかさに包まれました。
 美術と音楽と建築空間がひとつとなって神を讃美する。訪れた140人の来場者には、芸術本来のあり方である天上的な体験でした。その余韻を味わいながら、終了後は多くの方が壇上に上がり、見上げるステンドグラスのきらめきに圧倒されながら、貴重な時間を愉しんでいました。

180320-3_16.jpg 180320-3_17.jpg 180320-3_18.jpg
180320-3_19.jpg 180320-3_20.jpg 180320-3_21.jpg