東北学院大学

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2018年東北学院大学経営研究所シンポジウム 「東北地方と自動車産業〜自動車産業での受注獲得と取引継続に向けて〜」開催報告

2018年12月03日

181203-3_2.jpg 2018年東北学院大学経営研究所シンポジウム「東北地方と自動車産業~自動車産業での受注獲得と取引継続に向けて~」が、11月17日に土樋キャンパスホーイ記念館ホールにおいて開催されました。
181203-3_1.jpg 冒頭、本学経営研究所所長・経営学部学部長の斎藤善之氏は「当研究所は2008年頃に若手と中堅の教員たちがグループを作り、これからの東北経済に大きな役割を果たす自動車産業について学生たちと共にしっかり研究していくことを目的に発足しました。今回のシンポジウムでは、広島・九州・中京圏における自動車産業と比較しながら、東北における課題や発展の方向性を考えていきたいと思っています」とあいさつしました。
 はじめに、本シンポジウムの総合司会を務めた経営学部教授の村山貴俊181203-3_3.jpg氏が「テーマの意図ならびに東北の自動車産業が抱える問題」と題して基調報告を行いました。東北において自動車産業を確立させていく上で①地場の中小企業の参入が進んでいない。②自動車や部品メーカーのニーズを把握できていない。③東北では産学官連携による支援が不十分といった3つの課題を提起。そして、「成功している他地域のサプライヤーをベンチマークすること。技術情報や最終権限を持っている組織との接触が必須であること。東北に比べて進んでいる広島県の取り組みのように、成果をあげられる産学官の連携強化に努めていく必要があります」と、解決に繋がる考えを述べました。
181203-3_4.jpg 続く第1報告では「東北の自動車部品2次メーカーの新規受注と取引継続の取組」と題し、株式会社長島製作所代表取締役社長の新宮由紀子氏が登壇。新宮氏は異業種から父親が経営していた製作所に転職。以後、経営を受け継ぎ、どうしても減らせなかった不良品を無くせるよう社員と共に考えながら取り組んできました。「どんなに良い設備を導入しても、最終的には人材育成に行き着きました。自動車用語をあらためて勉強したり、五感を磨くよう心がけたり、今日も疲れたではなく、今日もやりがいがあったと話したり、現状から夢に向かっていく途中のプロセスが大事であることなど、品質向上のためにはメンタルを鍛えることが大切でした」と、6年間不良品ゼロで表彰されるまでのサクセスストーリーを語りました。
 第2報告では、Koqoon Mobilites Co.,Ltd.のCEO川邊安彦氏が「自動車メーカーによる発注先選考および人的ネットワーク構築に基づくニーズ把握」と題して講演。181203-3_7.jpg川邊氏は約30年、日産自動車で世界を相手に手腕を振るってきましたが、自身の手術で約3時間心肺停止を経験したことをきっかけに退職。タイ政府の要望で自動運転車両の未来を見せる企業として同社をタイに設立しました。「発注のプロセスで大事なことは全てに対して“できる・できない”と言わないことです。品質についてはOEMごとに複雑な評価基準があり、単純な質問に答えていると落とされてしまうことがあり、OEMは取引というより戦いなのです」と話しました。海外での部品製造については「今の自動車メーカーは開発費が高く儲かりません。では、自動車メーカーはどうやって儲けているのかというと、アフターサービスなんです。グローバルの視点では国によって異なる税金を上手に活用していくことが大切です」と述べました。
181203-3_8.jpg 第3報告では、広島大学大学院工学研究科客員准教授の岩城冨士大氏が「広島での産学官連携および企業支援の成果と今後の取組」と題して登壇。広島県に本拠を構えるマツダで様々な改革に取り組んできた岩城氏は「広島県では地域の自動車産業を支援するために、2000年頃にモジュール開発に助成金を付けるなどの地域企業を支援。技術のある会社だけではなく、Tier1、Tier2、Tier3までを含めた研究会を産学官金(金融)が連動して研究会を発足させました」と実例を紹介。続けて「今は100年に一度の大改革がきています。強みを鍛え上げていくための人材育成やトライアルラボに取り組んでいくなど、地域が新しい技術を持つことで活性化させていくプロセスが動き出しています」と、広島県の取り組みを報告しました。
 続いて、村山氏が進行役を務め、新宮氏、川邊氏、岩城氏の報告者3人に加えて、法政大学経済学部教181203-3_12.jpg授の馬場俊幸氏と本学経営学部教授の折橋伸哉氏を招いたパネルディスカッションが行われました。インダストリー4.0(第4次産業革命)に対して日本の強みを活かした生産技術のあり方や海外展開は必要なのかなどについて、パネラーそれぞれの経験談や考えを述べるなど、活発な意見交換が交わされました。
 アカデミックコメントとして馬場氏は「アベノミクスでは女性を活かすと言いながらも閣僚には女性が一人しかいないというチグハグなことをやっている中で、新宮さんの活躍を知れたことはとても良かったです。需要と供給という面から見ると新宮さんのところは供給が強く、川邊さんの話では需要を作ることが多かった。岩城さんの話では、いかに新しい市場を生み出すのかという市場創出。具体的にどんな技術で、どのように生み出したのかというケースが盛りだくさんでした。今日はお金を取ってもいいんじゃないかと思えたほど、含蓄のあった興味深いシンポジウムでした」と振り返り、シンポジウムは終了しました。

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