東北学院大学

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時代の音「明治の音」/第2回公演「ドイツ・日本・朝鮮に響いた明治の箏曲」開催報告

2018年12月15日

181215-1_1.jpg 演奏とレクチャーで紡ぐコンサートシリーズ「時代の音」。2018年度は「明治の音」と題し、第2回公演「ドイツ・日本・朝鮮に響いた明治の箏曲」が12月2日(日)、押川記念ホールにおいて開催されました。
181215-1_2.jpg 開演に先立ち今井奈緒子教養学部教授が、レクチャーを務める東京藝術大学教授の塚原康子氏を「塚原先生と私は東京藝術大学時代の同級生であり、専門分野は違いますが、こうやって目が開かれるようなレクチャーと音楽を聴かせていただくことを幸せに思います。」と紹介しました。
 塚原氏は「第2回の本日は明治の箏曲に光を当て、平田紀子さんと村澤丈児さんという箏曲生田流の実力ある若手演奏家のご協力を得て、新しい時代に響いた箏曲を4つの場所からご紹介します。」と挨拶されました。「1889(明治22)年にパリ万博に出品された箏・三味線・胡弓などの日本の楽器がドイツのライプツィヒ博物館に寄贈されていましたが、誰一人として音を聞いた者はいませんでした。オプスト館長は当時ベルリンに留学していた幸田幸が箏の名手であると聞き、日本音楽会を開催したのです。」とのお話を受けて、この演奏会でも奏でられた《六段》が村澤氏によって演奏されました。
 181215-1_3.jpg次に平田氏によって演奏された《姫松》と《さくら》は、1879(明治12)年に文部省に設置された音楽取調掛により、歌詞を文明開化の世の中にふさわしく整えられた改良歌です。「歌詞がいかに美しく整えられたかがわかるように元歌と改良歌の両方を歌っていただきましたが、《さくら》の元になった《咲いた桜》の歌詞は桜から紅葉や松まで盛り込まれたオールシーズンの歌だったことがわかりました。」と解説されました。
 続いて、明治時代には、箏二面で合奏する「明治新曲」が多数作曲され、その背後には女性や盲人ではない男性も専門家になれるようになったことや、雅楽に由来する箏を尊重しようという風潮があったことを伝え、明治・大正期に京都で活躍した松阪春栄が作曲した明治新曲の代表曲《楓の花》が演奏されました。
 休憩を挟んだ後半は、20世紀初頭に朝鮮で生まれた箏曲についてのレクチャーから始まり、400曲以上の自作曲を残し、近代音楽を語る上で欠かすことのできない宮城道雄がクローズアップされました。「宮城は一家の生計を支えるために13歳で朝鮮に渡って箏や尺八を教えましたが、早くから音曲教授生活に入ったためのレパートリー不足という悩みを、自ら新曲を作ることで打開したのです。処女作の《水の変態》は、水が霧・雲・雨・雪・霰・露・霜に姿を変える様を描いた『高等小学読本』所載の和歌7首を歌詞にした曲ですが、100年経った今聴いても色褪せることなく、新鮮な響きを保っています。」と述べられました。平田氏と村澤氏による繊細な合奏で見事に表現された水の様子に、聴衆は想像力を大いに掻き立てられたに違いありません。
 最後に塚原氏は「平田さんと村澤さんの演奏で、箏曲の世界も空間的にも曲調の上でも新たな広がりを見せた時代だったことがおわかりいただけたと思います。」と結ばれ、「明治の俗曲改良から生まれた《さくら》を箏伴奏で歌ってみませんか。」との呼び掛けにあわせ、会場全体が一体となって、第2回レクチャーコンサートは終了しました。
 第3回公演は2019年3月17日(日)に「明治の長唄」と題して土樋キャンパス90周年記念館大ホールにおいて開催予定です。皆様のまたのご来場をお待ちしております。

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