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東北学院大学研究ブランディング事業国際シンポジウム「ジョン・ラファージの中世主義-ジャポニスムとステンドグラス復興-」開催報告

2019年03月04日

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 2月23日(土)午後1時30分から、東北学院大学研究ブランディング事業国際シンポジウム 『ジョン・ラファージの中世主義-ジャポニスムとステンドグラス復興-』が土樋キャンパス・ホーイ記念館ホールにおいて開催されました。

190301-1_3.jpg 開会のあいさつとして松本宣郎学長が登壇し、最初に本学文学部の鐸木道剛教授が「ステンドグラス〈地上の天国〉」と題して、第2回目となるジョン・ラファージのシンポジウムの趣旨説明を行いました。12世紀のゴシック建築によって創出されたステンドグラスは、宗教的な暗さを表そうとしたものではなく、むしろ光の芸術として人々に灯を与え続けてきたことを先達の美術史家たちの言葉を引用しながら解説。「地上が天国につながっている」と語り、米国におけるステンドグラス復興とジャポニスムのパイオニアであったラファージが、日光での自然との一体感から得たインスピレーションにより、この地上を楽園にするがごとく美と光で満たそうと、全く新しいオパレセントグラスによる輝くばかりのステンドグラスを制作したことを紹介し、しかしそれとともに仏教的な不二の精神と不可知論も知っていたラファージは暗いステンドグラスも制作していること、その矛盾に満ちたと評されるラファージの芸術をどう理解するか、それは本学の建学の精神にもつながるアメリカのキリスト教の重要問題でもあると指摘されました。

 続いてジョン・ラファージの曾孫であり、フランクフルト大学スカンジナビア研究所研究員のベアトリス・ラファージ氏が登壇し、「ジョン・ラファージ一家 ~ボストン・ブラーミン社会との繋がりとアメリカ史における190301-1_4.jpg位置~」と題して、家系図と肖像写真などを織り交ぜながら語りました。ジョン・ラファージの父であるジャン・フレデリック・ラファージはフランス南西部の出身でナポレオン軍に参加。その後、船でフィラデルフィアに到着。貿易関連の商売で財を成し、米国の上流階級に入り込んでいきました。母であるイザ・ビンスの家系は、アイルランド出身。18世紀にはフランスからハイチに移住し、砂糖のプランテーションを経営。フランス革命後にイザ・ビンスの父ルイ・ビンスはニューヨークに移住して画家となり、後に孫であるジョン・ラファージに最初の素描を教えています。ビンス家はニューヨークでフランス学校も経営して、親戚にはフランス文学者も多く、彼は母の家系から文化的な影響を受けました。自宅での日常のエピソードも交えて、曾祖父であるジョン・ラファージの一族の物語を語ってくれました。

190301-1_5.jpg 次に登壇したケース・ウェスタン・リザーブ大学のヘンリー・アダムス教授はラファージ研究の第一人者で、日本文化に関しても造詣が深いために招聘されました。マネやホイッスラーからはじまる日本美術の影響を受けた西洋美術が、近代絵画や現代絵画まで綿々といかに影響を受けてきたかを紐解いてくれました。日本美術からの影響は3つの段階に分けられるとのこと。①版画から構図を借用して、新しい構図に応用すること。②総合芸術と建築に至るまでを研究して創造性に活かすこと。③鈴木大拙のような禅師からの精神性がビート世代に影響を与えて今なお進行中であること。ラファージは早い時期に第2段階まで至っていることを指摘しました。日本の禅が誕生した経緯も辿りながら、全体的な存在と合一する「悟り」の境地から芸術が発露されていることを感受して、ステンドグラスにも反映。「日本文化に沈潜している人には当たり前のことでも、日本美術のどこがユニークで特別なのかを新たに気づくことができる」と語り、ラファージに触れることで日本文化を再発見する契機となることを教えてくれました。

 続いて帝京大学の岡部昌幸教授(群馬県立近代美術館館長)が「ラファージ、ティファニー190301-1_10.jpgと日本のステンドグラス」というテーマで講演。ルイス・C・ティファニーはラファージの影響を受けながら、1910年代以降もアメリカでステンドグラス芸術を隆盛させた立役者で、ラファージとともにジャポニスムをアール・ヌーヴォーに融合。岡部教授は2001年に松江市に開設された「ルイス・C・ティファニー庭園美術館」の総合プロデュースを担当して、ステンドグラスやランプ、花瓶などの素晴らしい作品群を日本に紹介しました。また、日本画家の小川三知は1900年にシカゴ美術学校に留学してラファージやティファニーを研究。帰国後は日本におけるステンドグラス勃興の中心的な作家として活躍しました。世紀の転換期における日米の唯美主義と装飾美術を、この3人のステンドグラスを軸として見直す価値がある、と結びました。

190301-1_11.jpg 最後に愛知学院大学准教授の井上瞳氏が登壇。「ジョン・ラファージと日本美術」と題して、日本美術と対比しながら類似点を示し、どのように自らの作品に転換していったのかを克明に解説しました。ラファージは、蔵書や作品などかなりの数をコレクションしていたことが旧蔵品売立目録からもわかっています。特に葛飾北斎や河鍋暁斎の描写から着想を得て、自身の作品として再構築しています。彼がもっとも惹かれたイメージが、観音菩薩の涅槃図。丸山応挙や明兆、狩野芳崖の観音を手本として、崇高な理想的境地の表現であることを深く理解していました。「もしも文明が最後に心の世界と物質の世界とを完全なものとすることができるとしたら、こここそが涅槃の地であり、私たちは仏として涅槃に住むことになるだろう。」と時空を超えた叡智を記述しています。井上准教授は「神の国が私たちの内にあり、いまここの現世にある」と語り、エッセンスを教示しました。

 休憩の後にパネリストによるディスカッションが行われ、ここまでの感想を一人ひとりが述べて、ラファージを通じて広がった友愛関係のつながりを再認識しました。会場には専門家も多く詰めかけて質問を投げかけ、静かなる熱気の内にシンポジウムは幕を閉じました。

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