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ヨーロッパ文化総合研究所公開講演会『大災害を伝える神話 ―「ノアの洪水」や「文明消失」は起こったのか―』 開催報告

2019年07月02日

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 本学土樋キャンパス5号館512教室において、2019年6月22日(土)15時30分からヨーロッパ文化総合研究所公開講演会『大災害を伝える神話 ―「ノアの洪水」や「文明消失」は起こったのか―』が開催されました。
 講演に先立ち、ヨーロッパ文化総合研究所所長の櫻井教授が開会のあいさつを述べて、関西大学・神戸女学院大学等非常勤講師の庄子大亮氏が登壇し、プロジェクターに資料の写真や動画を映しながら、興味深いテーマの講演会がさっそくスタートしました。太古から世界各地に伝えられてきた大災害による破局や滅亡の物語。その中でも「ノアの箱舟」と「アトランティス」が有名であり、由来や影響をわかりやすく解説してくれました。

 ノアの洪水に関しては旧約聖書の「創世記」に記述されていています。堕落した人間を滅ぼそうとした神は善良なノアの家族だけを救うために、箱舟を造り、さまざまな動物も乗船させるように啓示を与えます。やがて大雨が40日間ほど降り続き、洪水で人間は滅んでしまいました。洪水が落ち着くと、ノアの箱舟はアララト山地に漂着。鳩を飛ばすとオリーブの実を持ち帰り、家族が大地に下ると天に虹がかかって、神は彼らを祝福しました。この時に、神はもう人類を滅ぼさないと約束したと伝えられています。ノアの子孫や動物たちが増えて繁栄していきました。この箱舟が実際に実在したかどうかは、さまざまな人々が探索しましたが確証は得られていません。
 それでも、3,000年~4,000年前のメソポタミアの「ギルガメシュ叙事詩」には大洪水の記述が残っていて、また各地の地層から5,000年近く前に洪水が起こっていることが地質学的に確認されています。こうした実際の災害が脚色されて継承され、物語の原型になったと庄子氏は指摘しました。

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 また、ギリシアには「デウカリオンの洪水」が伝わっています。東方の文化の影響を受けて洪水神話が伝わったのか、あるいはエーゲ海で起きた災害が由来しているという説もあります。火山島サントリーニが前17世紀に噴火した際は周辺を地震と津波が襲ったと伝えられています。記録はありませんが、環境変動の調査研究から人類史上で未曽有の大災害であったことが判明しています。この災害によりクレタ島の古代文明に大きな被害をもたらしたことからアトランティス物語が生まれたという説もあります。紀元前4世紀のギリシアの哲学者プラトンが伝えたアトランティスは、現代から1万年以上前に大西洋に栄えた大きな島国が地震と洪水により滅んだという物語です。人間の傲慢が崩壊を招くという寓話の意味も込められ、印象的な話として後世に広まっていきました。
 この他にも世界各地に似たような洪水の神話が残っています。特にメキシコとハワイの神話とは「船で生き抜く」「鳥を放つ」「山に漂着」なども共通していて、キリスト教の影響を受けながら現地で共感されて定着したと考えられます。

 ノアの洪水を気象学的に考察してみますと、18,000年前から気温が上昇して氷河が後退し、10,000年前ごろに氷期が終了。6,000年前ごろにかけて世界中で海面が140メートルほど上昇したため、沿岸部が海に沈んだことから神話が生まれた可能性もありますが、人類滅亡という物語に直結するかは疑問ということです。
 「現代では地球温暖化による海面上昇が懸念され、異常気象などによる災害も多発しています。大災害の神話は人類と災害の絶えざる相克を意識させる物語として、意味を持ち続けています」という結びの言葉で、東日本大震災を後世にどう伝えていくかという大きなテーマを投げかけながら、興味の尽きない講演会は終了しました。

 休憩をはさんで、集計されたアンケートの質問に一つひとつ丁寧に庄子氏が答えました。特に東日本大震災に関連する質問が多く寄せられ、私たちが考え続けていくことが重要であることを示唆してくれました。会場に詰め掛けた庄子氏の多くの著書ファンの方々には、貴重な内容をダイレクトに拝聴できた満足感が漂っていました。

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