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東北学院大学アジア流域文化研究所公開講演会「シルクロードの青き輝き:"博物館都市"ヒヴァ・イチャンカラ」開催報告

2019年07月30日

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 ウズベキスタン共和国西部の一都市ヒヴァの旧市街地はイチャンカラ(「内城」の意味)と呼ばれ、東西400m・南北650mの城壁内にはアルク(王宮)、モスク、ミナレット(尖塔)、マドラサ(学院)、聖者廟など多くの歴史的なイスラーム建造物が残っています。このイチャンカラは一般住民の居住区・住居も含めて全体が歴史保護区に指定されており、1990年にはユネスコの世界遺産に登録されました。“博物館都市”という異名をもつ美しい町並みは、近年では多くの外国人観光客を惹きつけ、日本人にも人気の旅行先の一つとなっています。
 2019年7月6日(土)、東北学院大学アジア流域文化研究所の主催により、このヒヴァ・イチャンカラに焦点をあてた公開講演会「シルクロードの青き輝き:“博物館都市”ヒヴァ・イチャンカラ」が開催されました。本講演会は、日本学術振興会科学研究費助成事業「ウズベキスタン世界遺産ヒヴァの持続可能な発展・開発のための実践的博物館活動の研究」プロジェクト(2017~2019年度)のメンバーを講師に招き、その取り組みを紹介いただくという意図のもとに企画されたものです。
 まず、中央アジアの歴史を専門とするの木村暁氏(東京外国語大学特任講師)が「博物館都市ヒヴァの歴史と現在」と題して講演をおこないました。1512年のヒヴァ・ハン国の成立後間もない時期に、アム川の流水経路の変更によりヒヴァへの遷都がなされ、これがヒヴァの発展の契機となり、19世紀以降、コングラト朝期に市域の整備・拡大が進み、1873年にロシア帝国に征服された後も継承されながら、現在のイチャンカラの景観が整えられたといいます。また、日本の研究者と現地研究者との学術交流の歴史が紹介されました。

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 続いて、プロジェクトの研究代表者である南博史氏(京都外国語大学教授)が登壇。冒頭、博物館と町・住民のつながり、博物館都市の概念について日本の京都を事例に解説がなされた後、ヒヴァで実施している歴史的建造物の保全活動や博物館学的な調査・支援内容が紹介されました。またその活動を通じて、イチャンカラの井戸の水位は低下しているものの、城壁などの建造物には局所的な地下水の上昇が原因と考えられるダメージが生じているという、逆説的な問題が明らかになりました。今後、世界遺産ヒヴァの持続可能な発展・開発のためには、この水問題解決に向けた歴史・考古学調査が必要となってくると結びました。
 当日は多くの聴衆が訪れ、二つの講演を熱心に聞き入っていました。質疑応答では、今後も継続するプロジェクトに大きな期待を寄せる声も聞かれ、ヒヴァの歴史と文化、そして学術的な支援に対する関心の高さがうかがえた講演会となりました。

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