先端を駆ける研究者たち|電気システム制御研究室

新たな理論に基づくモータ制御法で、電動化社会の技術革新を目指す。新たな理論に基づくモータ制御法で、電動化社会の技術革新を目指す。

PROFILE

1989年東北大学大学院電気工学専攻博士課程後期課程中退。
東北大学電気通信工学科准教授を経て、2004年より東北学院大学工学部電気情報工学科教授。

独自の制御理論・方法で有効性を実証

自動車産業をはじめ、電動化が進む社会において、モータを「より正確に、より省エネルギーに」制御する技術は、今後ますます重要性を増していくだろう。
「そのためには、まず新しい制御方法の理論を立てる必要があります。理論上の研究として取り組んでいるのが、ディジタルロバスト制御系の設計です。さらに、その理論を応用し、モータの高性能制御に関する研究を同時に進めています」。
郭教授が提案する制御方法は、従来のベクトル制御法とは違い、電流の相ごとに制御が可能なものだ。独自の理論を応用したこの方法は、文部科学省から研究費の助成を受けて有効性の検証が行われ、確かな手応えを得ている。
「現時点ではまだ、応用を専門とする方々には、従来の制御法のほうが信頼されています。新しい理論・方法が理解されるには、時間が必要でしょう。今後はもっとアピールして、実用性を認識してもらえるように地道な努力を重ねていきます」。
理論・方法の開発にあたっては、常に実用性を重視している。根底にあるのは「研究とは自分のためのものではなく、人類のために必要なものだ」という信念だ。
「大学院生の頃、初めは制御理論の研究をしていましたが、単純な理論よりは応用問題を解決できる理論を開発するほうが、社会に役立つだろうと思い至りました。以来、モータの制御という分野を中心に、理論と応用の両立を目指してさまざまな研究に取り組んできました」。

研究は、未知を探求する魅力的な「旅」

「構想し、実験を繰り返し、理論的な根拠を確立するのは、決して簡単なことではありませんが、研究とは“未知なる世界への旅”だと思っています。わくわくしながら探求し、旅先で新しい発見があった時の感動は、とてもすばらしいものです」。
大学院進学を目指す若者たちには、ぜひ将来、人類のために貢献できる研究者を目指してほしいと願っている。その原動力となるのは未知への探求心であり、困難を克服した時の達成感なのだと伝えたい。
また、大学院では多種多様な研究にチャレンジしてほしいとも思う。
「時代の潮流に乗ることも悪くはないけれど、将来を広げるには多様性を持つことが大切だと思います。私自身も、そうありたいと心がけています」。
晴れ舞台に立たなくてもいい。名声を求めるよりは、より多く研究の種をまくことに力を注ぎたい。そんな姿勢を貫く教授のもとで、学生たちは一人一人が主体性を持って研究に取り組んでいる。
「研究室の運営も、学生が主体となって行っています。モータの制御に関する研究以外にも、自然エネルギーによる発電システムなど、皆がさまざまなテーマを持ち、いきいきと研究生活を送っています」。