2005年東北大学大学院理学研究科物理学専攻博士後期課程修了。東北大学金属材料研究所研究機関研究員、東北学院大学ハイテクリサーチセンター研究員、東北学院大学工学部電子工学科講師などを経て2017年より東北学院大学工学部電気電子工学科准教授。
持続可能なエネルギー社会の実現を目指し、次世代二次電池および触媒材料の作製と性能評価を行っているのが、「機能材料研究室」だ。再生可能エネルギーを電気の形で貯める次世代二次電池の電極材料と、水素やメタンを効率的にエネルギー資源として変換・回収できる触媒材料の開発に挑む。
「これらの研究を通じて、日本のように資源が乏しい国においてもAI社会や脱炭素社会に必要なエネルギー資源を確保できると期待しています」。
現在、NaやKを含むイオン二次電池の電極を、チタンナノワイヤーと廃棄物や日本初の材料であるセルロースナノファイバーを用いて作製しようとしている。これはリチウムイオン電池と比較して、低コストかつ安全性が高い点が特徴である。研究を進める中で、ナノワイヤーの形成過程に複数のパターンがあることが明らかになり、さらなる発見の可能性が広がっている。
「どんなに革新的な研究であっても、根本原理には普遍の知識が存在していることが多いと感じています。ですから基礎を大事にして、自然に対しても謙虚でありたいと思っています」。
この研究に取り組むきっかけは、他者からの助言だった。アプリケーションの部分をテーマにしていた研究者から、「形成過程の原理を探求してはどうか」という提案を受けたことが一つ。さらに、電極の形状にするための手法について悩んでいた際にも、知人からのアドバイスが大きなヒントになった。自らの学び続ける意欲に、他者からの刺激が掛け合わされて、新たな研究テーマとの出会いに繋がった。
「未知の事柄が解明された瞬間は感動的ですが、その時点で次の疑問が生まれます。その繰り返しが研究の醍醐味です」。
また、重視しているのは「安全管理」で、特に学生と共に行う実験では、危険物を使用しないよう細心の注意を払う。
「大学院進学を考える学生に伝えたいのは、技術革新が進む現代では、専門性と広範な知識を備えることが重要であるということです。将来に向けた長期的なキャリア形成には、博士課程前期課程での学びは必須と感じます。自分への投資として、大学院で学ぶことを検討してください」。
桑野准教授は、さらに学びを深めたい学生の背中を押す。