東北学院大学大学院 工学研究科では、高度な研究を行うために研究者・エンジニアとしての能力を実践的に養います。
2006年東北大学大学院工学研究科機械電子工学専攻博士後期課程修了。仙台高専機械システム工学科准教授、スタンフォード大学客員准教授などを経て、2019年より東北学院大学工学部機械知能工学科准教授。剣道錬士六段。
聴覚メカニクスの研究とは、聴覚器官の構造や機能を機械工学の見地から解明するものである。また、そこから得た知見を医療・福祉・スポーツなどへ応用することを目指している。
医療への応用としては、新生児の耳疾患を早期発見する診断装置を開発し、実用化に向けた研究を進めている。
「試作した聴覚スクリーニング装置は、新生児の中耳疾患の診断に有用であることが分かっています。生まれたばかりの私の子供たちにも、計測に協力してもらいました」。
スポーツ分野では、頭部への激しい打撃を伴うコンタクトスポーツに着目し、衝撃低減によって難聴を予防するプロテクターを開発中だ。
「３Ｄプリンタを用いて試作したプロテクターは、衝撃を大幅に低減できました。さらに改良を重ね、聴覚や脳への影響を最小限に抑えられるものにしたいですね」。
剣道の指導者として、競技の安全性向上に貢献したいという思いがあった。また、剣士として自身の聴力に不安があったことから、補聴器の開発など福祉分野に貢献したいという思いも、聴覚メカニクス研究に取り組むきっかけとなった。
聴覚のメカニクスという領域に取り組む研究者は、世界を見渡しても少ない。だからこそ、教員・学生を問わず、常に新しい発見が研究室から生まれており、そこに大きな魅力がある。
「私の恩師は“日本代表”という意識で研究に取り組んでいたそうです。その志を受け継ぎ、いつか当研究室が世界的拠点として認められるような成果を、学生たちと共に創り上げたいと思っています」。
そんな研究生活で心がけているのは、あまり深く考えすぎないことだという。
「研究室の中で考え込んで時間を浪費するくらいなら、家族と遊んだり剣道の稽古で汗を流したりしているほうが、新しいアイデアが浮かびやすいのです」。
多くの物事や人と関わり、バランス感覚を磨くことで、既存の常識や概念にとらわれない新発想が生まれると信じている。
「剣道、留学、野菜作り、料理、音楽など「可能性」のアンテナを広げ、多くのことにチャレンジしてきました。“Work Hard, Play Hard”が人生を豊かにすると実感しています」。
これから大学院に来る学生たちにも、さまざまな経験を通して、自身の可能性や世界を広げてほしいと願っている。
