三要文 1871‐1872年(明治4‐5年)

資料名

三要文 1871‐1872年(明治4‐5年)

解説

これは「十戒」「主の祈り」「使徒信条」の三つが記された縦16cmの小冊子です。日本においてキリスト教が禁教下にあった時期、アメリカ人宣教師J. C. ヘボン(James Curtis Hepburn 1815-1911 年)とその日本人協力者である奥野昌綱(1823-1910 年)によって訳され、秘密裏に出版されたと考えられています。

この「三要文」の翻訳こそが、現在でも主にプロテスタント教会で唱えられている「主の祈り」の元になったものです。この翻訳文は日本における「主の祈り」の原型であるため、貴重な資料です。ヘボンらはこの小冊子を出版した後、和訳聖書翻訳に取り組んでいます。植村正久(1858-1925)は、この三要文について以下のように回想しています。

「(略)基督教書にして最も早く刊行せられたるは蓋し三要文にてならん。僅々三四葉なる木板摺の小冊子當時は如何に珍重せられん」。(佐波亘『植村正久とその時代 第四巻』教文館 復刻版 1966 年 59 頁)

「三要文」は日本国内に三冊が存在していると言われていますが、現在、確認できる範囲では、東京女子大学比較文化研究所(元同大学学長齋藤勇氏よりの寄贈)に一冊、早稲田大学図書館の大隈文書に保管されています(「耶蘇教諜者各地探索報告書」のなかに組み込まれている)。京都にあるウイリアムス神学館にも保存されているといわれていましたが、現在のところその所在は不明です。

この一冊がどのような経緯で日本聖書協会に収められたかは分かりません。聖書協会で見出されたものは、所在が不明であるウイリアムス神学館に由来するものなのか、それとも、上記の三冊とは別に存在していたのか現在のところ明らかではありません。