研究最前線リポート環境建設工学専攻 07

Professor Report

構造物の非破壊検査技術によって
地域の保全・復興に貢献したい。

◎ 李 相勲 教授

私が現在、最も力を入れているのは、構造物の非破壊検査技術に関する研究です。聴診器で心音を聞いたり、超音波で赤ちゃんの様子を診たりして健康状態を把握する医者のように「相手を傷つけずに内部の欠陥や劣化状態が把握できる先端技術」に魅力を感じたのが、この研究に取り組むきっかけでした。

具体的には、衝撃弾性波法を応用したコンクリート内部欠陥の可視化手法において「一般的には除外する、構造物の寸法外(低周波数領域)にまで可視化の対象領域を拡張する」という新しい概念を適用した、欠陥探査システムを構築・検証しています。開発した欠陥検査システムを用いて、被災または老朽化した土木構造物に対する調査を行い、対象構造物の耐久性・寿命などを評価するための基礎データを蓄積し、地域の保全・復興に貢献したいと思っています。

当研究室では他にも多くの研究を行っていますが、共通するテーマは「動」です。高架橋のように長く連続する構造物やそれらを構成するコンクリート部材、レンガ造りの住宅構造物など、それぞれ構造も大きさも解析方も異なりますが、対象物の振動や波動問題を取り扱う点では皆同じです。また、これらの研究は全て、特殊構造物の耐震設計やコンクリート構造物の維持管理のための非破壊検査技術、貧しい国における経済性のある耐震設計指針など、現場ですぐに適応可能な実用性のある技術開発を目指しています。

Student Report

博士前期課程2年 環境生物工学研究室
加藤 俊明

微生物の環境浄化能力を高め、自然環境保全に貢献したい。

環境浄化細菌を用いたビオラセイン合成遺伝子群の発現と捕食回避能の有無について研究しています。土壌や水を浄化するため、汚染物質を分解する力を持つ微生物(細菌)を環境中に添加した際、原生動物によって捕食されることにより、浄化能力が著しく低下してしまうという問題があります。その問題を解決するために、微生物の遺伝子を組み換え、捕食を阻害する色素であるビオラセインを生産できるようにしようという研究です。微生物も原生動物も、私たちと同じ生き物ですから、なかなか理論通りの結果が得られるとは限らず、実験操作のわずかな誤差が失敗を招くことも多々あります。そのぶん、納得のいく結果が出せた時の充実感はかけがえのないものです。この研究を何としてもやり遂げて論文を発表し、自然環境保全に貢献したいと願っています。