研究最前線リポート電子工学専攻 05

Professor Report

電磁波を計測技術で解明し、
電子システムの安定動作を支える。

◎ 川又 憲 教授

私の研究テーマは、電磁波の計測技術を通して、高度化する電子システムの安定動作を支えることです。電子回路の動作に伴い、周囲には微弱な電磁波が発生します。この電磁界変動を詳細に測定・分析することで、電子システムの動作状態を確認したり、誤作動を起こした場合の原因を探ったりすることができます。当研究室では、このような電磁波を捉える技術を駆使して、高性能化する電子システムの開発や設計のための基礎データを提供しています。具体的には、次のような課題に取り組んでいます。

静電気による放電(ESD)はインパルス(瞬時)的な電磁妨害波を発生し、ネットワークで結ばれる通信システムやウェアラブルデバイス、ICTを支えるデジタルハイテク機器などの動作に深刻な障害を与え、故障や破損に至る事例が多数報告されています。また、意図的な電磁妨害波印加による秘密鍵情報の盗取など、システムセキュリティの問題も指摘されます。これらの対策を進めるため、インパルス性電磁妨害波の測定法や、特殊な電磁波の発生メカニズムの解明などを行っています。

目には見えない電気・磁気現象でも、イメージを膨らませて考え、技術を駆使して計測することができれば、それはもう「見える」現象なのだと言えます。当研究室では、実験をベースに知識や知恵を振り絞って正確に観測・測定・分析し、物事の真髄を「見抜く」力を培ってほしいと思います。

Student Report

博士前期課程1年 スピンエレクトロニクス研究室
佐藤 啓

磁性材料の研究を入り口に、半導体メモリの未来を拓きたい。

次世代不揮発性メモリの材料となる、磁性薄膜の基礎研究に取り組んでいます。電子機器の主記憶装置として現在主流である揮発性メモリは、データを保持するために電力を供給し続ける必要があります。これを不揮発性メモリに置き換えることにより、消費電力を大幅に減らせると共に、ノーマリーオフコンピューティングの実現にもつながります。研究の具体的な内容は、電子ビーム蒸着の手法を用いてMnGa薄膜を作製することです。従来のCo-Fe-B薄膜と比較して、データ書き換えに必要な電力が少なく、データ保持に必要な値も良いため、近年急速に研究が進んでいる材料です。MnとGaでは蒸発する速度が異なるため比率調整が難しく、試料作製には苦労しています。しかし、良くも悪くも想像以上の結果が得られた時には、未知の世界に挑む研究の面白さを感じます。