研究最前線リポート機械工学専攻 01

Professor Report

エネルギーを「集めて、貯めて、運んで、
活かす」新しいシステムの提案。

◎ 星 朗 教授

人類がその発展の基礎としてきた化石燃料多消費型の物質文明のツケとして、化石燃料の枯渇問題が取り沙汰されており、21世紀には化石燃料に依存しないエネルギー技術が求められることになります。

さらに、環境にインパクトを与えないエネルギー利用の一方法として、太陽エネルギーを中心とする自然エネルギー(太陽熱・光、地熱、風力、放射冷却など)の利用が考えられます。太陽エネルギーなどの自然エネルギー(環境エネルギー)は無尽蔵で広く分布していますが、エネルギー密度が極めて小さく、間欠性を有します。そのため、何よりも量を集めて高密度エネルギー貯蔵することが重要となります。

一方、現代社会には低温排熱が散在しており、回収して電力などに変換することができれば、創エネルギーに大きく貢献できます。具現化にあたっては、未利用エネルギーを排出する側と利用する側との受け渡しにおける「時間、場所、質、量」のミスマッチを、技術的に解消することが必要になります。

そこで本研究室では、エネルギー・環境問題の解決策を工学的見地から研究し、持続可能エネルギーをベースとした新しいシステムの提案を行っています。潜熱エネルギー貯蔵システム、太陽・風力エネルギーなどの自然エネルギー利用、木質バイオマスエネルギーの有効活用、さらにはスターリングエンジンに関する研究など、多岐にわたる研究内容で実験と理論に取り組んでいます。

Student Report


蓄熱と熱交換技術の活用で、排熱を無駄にしない社会へ。

博士前期課程1年 エネルギー・環境工学研究室
澤田 瞬

潜熱を利用した貯蔵型熱交換器の設計・製作に取り組んでいます。冬にバイクを運転している時に、エンジンの熱がただ放出してしまうのがもったいないと感じたことが、蓄熱や熱交換の研究を始めたきっかけです。今の社会にはこうした「無駄になってしまう熱」がたくさんあります。火力発電所などから排出される熱を蓄えておき、必要な時と場所で再利用することができれば、エネルギー効率の高い社会の実現につながります。

私が製作している熱交換器は、物質の融解・凝固などの相変化による潜熱を使用するものです。蓄熱材が充填された熱交換器のチューブに熱水を通水して蓄熱し、次に冷水を通水して放熱させます。チューブ形状や水量、熱水・冷水温度、蓄熱材の種類など、いろいろと条件を変えて実験をしています。

将来、空調や自動車などの分野で生かせる成果が得られるよう、今後はさらに改良を加えつつ、シミュレーションを行って実験結果と比較することなどを計画しています。