研究最前線リポート電子工学専攻 03

Professor Report

位相変化型磁界センサの高分解能化と
その応用装置の開発。

◎ 小澤 哲也 教授

磁性体に対して外部から磁界を与えると、磁性体内部の磁気モーメントの向きが傾くため、交流電流を通電した時の透磁率が変化する現象が生じ、磁性体のインピーダンスが変化します。この現象を磁気インピーダンス効果と呼びます。

磁性体内の磁気モーメントは素材固有の共鳴周波数を持っており、共鳴周波数付近における透磁率は、インダクタンス成分に寄与する実部成分と抵抗成分に寄与する虚部成分に分離する現象が顕著になります。このときに外部から磁界を加えると、透磁率は非常に大きく変化しやすく、通電した交流電流に位相を与え、損失も発生させます。この位相の変化は、外部から加えられた磁界を起因とした現象であるため、外部磁界で位相が変化するという位相変化型磁界センサの原理が成り立ちます。この位相の変化を可能な限り高分解能で測定できれば、高感度な磁界センサとして利用することができます。

ただし、位相変化型磁界センサの位相を正確に測定することは、容易ではありません。磁性体内の磁気モーメントが共鳴する周波数は約1GHzであり、1GHzの交流の周期は1nsです。この1周期1nsの交流波形の位相変化を0.01°の分解能で得るためには27fsの時間差測定精度が必要になりますが、現時点でfsレベルの時間差分解能を持つ信号測定装置は存在しません。

そこで、高周波信号をミキサなどの電子回路を組み合わせることにより低周波数化させ、現存する測定装置で測定可能な測定回路を開発しています。加えて、位相変化型磁界センサを利用した渦電流探傷装置の開発にも着手しています。

Student Report


磁性材料の研究を入り口に、半導体メモリの未来を拓きたい。

博士前期課程2年 電子応用システム研究室
及川 正登

静電気放電(ESD)によって発生する電磁ノイズ特性について、その発生メカニズムを解明する研究に取り組んでいます。

電子機器の小型化・省エネ化と共に信号処理速度の高速化が進み、それに伴ってノイズ耐性(電磁両立性/EMC)問題が深刻化しています。人体との接触やデバイス同士の接触でESDによるノイズが発生し、誤動作や故障を誘発してしまうことを防ぐため、電子機器が販売される際にはESD耐性試験が行われます。しかし、耐性試験に合格した製品でも誤動作の事例があります。これは、ESDに起因する電磁ノイズの発生メカニズムが十分に解明されていないからこそ起こる現象であり、そのミステリアスさに惹かれたことが、この研究に取り組んだきっかけでした。

これまでの研究で、ESDによる電磁ノイズの発生メカニズムには、電極の表面を流れる放電電流が大きく関係することが分かりました。その成果を基に今後も実験を重ね、IoT時代に不可欠な、ノイズ耐性に優れた製品開発につなげたいと思います。