先端を駆ける研究者たち|先端電力工学研究室

持続可能な社会を目指し、再生可能エネルギー実用化技術を開発。

呉 国紅 教授

【RESEARCH THEME】
再生可能エネルギー発電および次世代電力系統の安定化技術

マイクログリッド実験装置を完成

地球環境の悪化や資源の枯渇など、深刻な問題への対策として、クリーンで無尽蔵な再生可能エネルギーが、ますます注目を浴びている。
特に、エネルギー自給率が6%程度の日本にとっては、持続可能な社会を目指していく上で、非常に重要な資源として位置付けられている。
呉教授が取り組むのは、こうした再生可能エネルギーによる発電電力を、安定供給するための技術開発だ。
「太陽光や風力など、自然条件に左右される発電電力を、いかに安定化・高効率化できるか。また、それらを既存の電力系統へ大量導入する際の悪影響を改善し、いかに電力品質を高められるか。シミュレーションや専用の実験装置を用いて研究しています」。
その成果として、太陽光発電・風力発電を含むハイブリッドマイクログリッド実験システムを開発し、国内の大学では数少ない研究用マイクログリッド実験装置を完成させた。
また、配電電力品質改善装置としてのトランスレスSTATCOM、洋上風力発電システム、電力貯蔵システム、超電導発電機などの研究も並行して進めており、現在までに150以上の論文を発表している。

次世代電力技術を担う人材を養成

これらの研究に携わり、研究室を巣立っていった学生たちは、すでに100名を超える。全国各地で、それぞれ電力関連の仕事に従事しているという。
「彼らが、研究を通して身に付けた関連技術・知識を活用し、社会に貢献してくれていることを思うと、教員として誇らしい気持ちになります」。
再生可能エネルギー発電および次世代電力系統の安定化技術という研究テーマは、研究自体で成果を生み出すことと同じくらい、その重要性を啓発していくことも大切だと考えている。
「私が電力分野の研究者として歩み始めた頃、世の中では環境問題について盛んに議論されるようになり、各国で京都協定書の提案が進められていました。そんな中で、現在の研究テーマに強く興味を抱くようになったのです」。
それ以来、一貫して同テーマの研究・教育活動を続けてきた。
呉教授にとって研究とは、最終的に実用可能な技術として展開し、社会の発展に役立てるためのものだ。社会貢献にはもちろん、人材養成も含まれる。
研究者を志す若者たちに「書到用時方恨少、事非経過不知難」という中国のことわざを贈りたい。
学問は、使いたい時に初めて、自分の知識がいかに少ないかわかる。物事は、自ら経験しておかないと、遂行することがいかに難しいかわかるはずがない。

【PROFILE】
1998年東京大学大学院工学研究科電気工学専攻博士課程修了。東京大学工学部電気工学科リサーチアソシエイト、Postdoctoral Fellowship、東北大学大学院工学研究科電気・通信工学専攻寄付講座教員、東北学院大学工学部電気情報工学科講師、准教授などを経て、2011年より同学部教授。