先端を駆ける研究者たち|コンクリート劣化診断研究室

世界唯一の診断評価手法で、コンクリート構造物の維持管理対策。

武田 三弘 教授

【RESEARCH THEME】
X線造影撮影法を用いたコンクリート劣化の定量的評価手法に関する研究

ひび割れを視覚的に検出して定量化

社会インフラの老朽化が深刻さを増す現在、緊急の課題となっているのが、コンクリート構造物の維持管理対策だ。
武田教授は、コンクリート内部のひび割れを視覚的に検出し、それを定量化する研究によって、維持管理技術のさらなる向上を目指している。
「胃のレントゲン検査で人間がバリウムを飲むように、コンクリート用に開発した造影剤をコンクリートに浸透させて、X線で撮影します」。
この手法で検出した微細なひび割れの状態を、劣化深度や強度分布、強度推定、凍結融解抵抗性などの評価に有効な数値データとして定量化する。
「この成果によって、現状の劣化診断だけでなく、今後の余寿命計算などにも応用が可能だと考えています」。
コンクリート構造物は、建設される現場によってコンクリートの性状が大きく変わる。従って、ひび割れの原因を究明するためには、現場ごとに異なる複雑な条件を考慮する必要がある。
試行錯誤の連続だが、そのぶん、失敗から学ぶことも多い。どんな結果にも必ず意味があり、その意味を読み解きたい気持ちが、研究を継続させる。
「原因を推定し、実験で究明できたときは、また一つコンクリートの未知の部分を理解できた、と嬉しくなります」。

初心貫徹で世界唯一の手法を開発

現在の研究テーマに心を奪われたきっかけは、鮮明に記憶している。
「コンクリート内部のひび割れを、初めて検出したとき、その視覚的な美しさに惚れてしまいました」。
ひび割れの視覚的な検出。それだけに特化した研究を続けたことが「世界で唯一の検出方法」の開発を実現した。
現在の研究対象は、実コンクリート構造物。つまり、実際に使用されている社会インフラである。
現場から依頼される課題に対して本気で取り組み、現実問題を少しでも解決していくのが、日々の研究目標であることは間違いない。
ただ、教授にとって研究とは、あくまでも 「コンクリートを理解したい」という、純粋な好奇心による行為だ。そのための努力は楽しいことであり、つい時間を忘れて打ち込んでしまう。
「継続は力なり、という言葉がありますが、私にとって研究生活とはそういうものだと感じています」。
研究者の道は奥深く、追究すればするほど新たな課題に直面する。成果を上げれば、それに伴う責務も増す。だからこそ、若き研究者には、こう言いたい。
「知りたい、という気持ちをとことん追求できるのは大学院だけです。興味あることに、貪欲に取り組んでください」。

【PROFILE】
1992年東北学院大学大学院工学研究科土木工学専攻修了。2004年学位取得(工学博士)。東北学院大学工学部助手、助教授、准教授などを経て、2010年より東北学院大学工学部環境建設工学科教授。