連携大学院(国研)産業技術総合研究所東北センター

連携大学院 (独)産業技術総合研究所東北センター連携大学院とは大学院の学術研究及び教育水準の向上を図ることを目的として、国や企業の研究機関に所属する優れた業績を有する研究者を客員教授として招聘し、また大学院生が連携先の設備を利用して研究を行うことが出来る画期的な制度です。工学研究科では「国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)」と連携協定を結んでおり、院生は宮城野区にある「産総研東北センター」にて研究指導を受けたり、実験を行うことができます。詳しくは指導教員または教務課(大学院係)へ相談してください。

2022(令和4)年度 研究課題

研究場所
国立研究開発法人産業技術総合研究所 東北センター
仙台市宮城野区苦竹4丁目2-1
指導教員
三村 直樹
(n.mimura@aist.go.jp)
研究課題
触媒反応に関する研究開発
― ナノサイズの「ものづくり」で地球環境への貢献を目指します ―
研究概要
金ナノ粒子の電顕写真

金ナノ粒子の電顕写真
出典(Catal Lett (2014) 144:2167–2175)

金属(特に金やルテニウムなどの貴金属)をナノサイズ(10nm以下)化して固体物質の表面に固定化することで高性能な「触媒」(化学反応を促進する働きを持つ物質)を作製します。金属の形状や大きさをコントロールしたり、担体として規則的な細孔(ナノサイズの穴)を持つ物質を用いたりすることで、高性能触媒を生み出し、地球環境問題の解決に貢献することが目標です。
研究内容は、自ら考えて作製した触媒を、温室効果ガスであるCO2の削減につながるバイオマス(植物由来の資源)の変換反応や、二酸化炭素のメタン化による燃料合成のような実際の化学反応に適用し、性能調査を行います。自分の手で作り出したナノ構造と触媒性能(化学反応の進み具合)の関連性を詳しく検討することで、高活性な触媒の設計手法の確立とナノサイズのものづくり技術の高度化を目指します。
特に、バイオマス資源のもとになる植物は、光合成により空気中の二酸化炭素を取り込んで生長しますので、その植物由来の原料を空気中の酸素と反応させて高機能分子を合成して有効利用することができれば、「空気から役に立つ物質を作りだす」技術として世の中に貢献できます。
使用機器
窒素吸着測定装置、熱重量-示差熱同時測定装置、ガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフ、紫外可視分光光度計、触媒反応装置、ほか
その他
★ 卒業研究生受け入れ実績:2019年:2名、2020年:1名、2021年:1名
★ 薬品を使う化学実験だけではなく、化学反応に用いる装置の設計・製作・自動化など、学生の興味関心も取り入れたテーマも設定します。
研究場所
国立研究開発法人産業技術総合研究所 東北センター
仙台市宮城野区苦竹4丁目2-1
指導教員
西岡 将輝
(m-nishioka@aist.go.jp)
研究課題
電子レンジ技術(瞬間加熱・選択決)の産業利用とSDGsへの貢献
研究概要
今年度開発を目指す理化学用電子レンジ・手のひらサイズが目標。

今年度開発を目指す理化学用電子レンジ・手のひらサイズが目標。

一家に一台以上普及している電子レンジは、短時間で対象物のみを選択的に加熱できるため、省エネかつ高速の製造プロセスになると期待されていますが、電磁波照射の制御が難しいことから、産業利用は遅れていました。この研究では、電磁界シミュレータを用い電磁波照射の最適化を行いながら、3DCADや3Dプリンタを駆使し装置を設計・製作を行います・また、装置化に必要なプログラミングを行い、実際に利用できる小型産業用電子レンジを開発します。この技術が普及することで、加熱で消費される電力の削減がきたいされますので、その効果(省エネ効果、CO2排出量削減効果など)を試算することで、SDGsへの貢献度について調査を進めます。
使用機器
電磁界シミュレータ、3D-CAD、3Dプリンタ、Arduino、LabView、ネットワークアナライザー、信号発生器
その他
企業との共同研究テーマを通し、基礎研究がどのように民間企業の製品に繋がっていくか、一緒に経験してみませんか。
研究場所
国立研究開発法人産業技術総合研究所 東北センター
仙台市宮城野区苦竹4丁目2-1
指導教員
相澤 崇史
(t.aizawa@aist.go.jp)
研究課題
二酸化炭素圧着法による樹脂多孔体の作成と評価
研究概要
繊維状の樹脂を二酸化炭素中でプレスすると繊維同士が接合し樹脂多孔体が作成される。本研究課題では、プレス条件や粉体内包の条件を変化させて樹脂多孔体を作成し、これらの条件と、出来上がる樹脂多孔体の特性との関係について研究する。
使用機器
樹脂多孔体製造装置、走査型電子顕微鏡、引張試験機、反発試験機
研究場所
国立研究開発法人産業技術総合研究所 東北センター
仙台市宮城野区苦竹4丁目2-1
指導教員
中村 考志
(nakamura-mw@aist.go.jp)
研究課題
マイクロ波加熱を利用した電子部品実装技術の開発
研究概要
マイクロ波加熱によりペットフィルム上に接合した温湿度センサー

マイクロ波加熱によりペットフィルム上に接合した温湿度センサー

電子レンジでお弁当を温めると、お米やおかずは温まるのに、お弁当箱は温まりません。このように電子レンジ加熱(マイクロ波加熱)は条件を選ぶことによって、加熱をしたい部分としたくない部分を選択することができます(選択加熱)。私はこの選択加熱を利用することでプラスチックフィルム上の金属を選択的に溶かし、フィルムに損傷を与えることなく電子部品を取り付ける研究をしています。
研究では、電子部品の構成による違いがマイクロ波加熱のされやすさに与える影響とその加熱原理を調べています。この研究が進むことにより、マイクロ波加熱による電子部品実装の技術が社会で利用されることを目指しており、この研究が、今後益々広がる5GやIoT社会の下支えになればと思っています。
使用機器
マイクロ波照射装置、高機能サーモカメラ、シミュレーションソフト(電磁波、伝熱)
その他
本研究は、マイクロ波加熱を理解するため、シミュレーションから熱データの収集と解析まで、モデルと実学の両輪で進めています。実験においてはマイクロ波装置周辺の実験環境を工夫することにより、世界でだれも測定したことの無い実験データを取得することに力を入れています。
研究場所
国立研究開発法人産業技術総合研究所 東北センター
仙台市宮城野区苦竹4丁目2-1
指導教員
化学プロセス研究部門 敷中 一洋
(kaz.shikinaka@aist.go.jp)
研究課題
バイオマス由来のポリフェノール「リグニン」を用いた素材開発
研究概要
環境問題の解決に向けた石油資源のバイオマスへの代替は地球規模で取り組むべき課題です。本研究課題ではバイオマスの一種である植物に由来するポリフェノール「リグニン」を用いた素材開発を実施します。従来は有害な薬剤が必要だった植物からのリグニン抽出を水中における植物粉砕と同時の酵素反応「同時酵素糖化粉砕 (図1)」で実施し、環境に優しいプロセスを通じたリグニンの素材化をおこなっております。これまでに例えばリグニンの紫外線吸収能を活かした紫外線カット透明膜 (図2) を開発しております。この他にも化学反応を通じたリグニン機能素材化にも取り組んでおります。得られた素材は各種測定機器を用いて構造や機能を評価します。

図1:同時酵素糖化粉砕の概要
図1:同時酵素糖化粉砕の概要
図2:リグニンから成る紫外線カット膜
図2:リグニンから成る紫外線カット膜
使用機器
デジタルミクロスコープ、偏光顕微鏡、走査型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、抵抗・電流計、X線回折・散乱装置、微量混錬押し出し機、接触角計、熱重量測定装置、紫外可視分光光度計、赤外分光光度計、濁度計、有機合成装置、小型湿式ビーズミリング装置 等
その他
本研究を通じて、顕微鏡測定・化学反応・熱混錬を例とした素材の評価技術・合成技術・成型技術を多角的に経験できます。