先端を駆ける研究者たち|材料信頼性工学研究室

新たな金属微細材料を創製し、信頼性を向上して次世代技術に応用。新たな金属微細材料を創製し、信頼性を向上して次世代技術に応用。

PROFILE

2011年千葉大学大学院工学研究科人工システム専攻博士後期課程修了。
東北大学工学研究科助教を経て、2016年より東北学院大学工学部機械知能工学科准教授。

創製手法開発と特性評価実験

太陽光発電やタッチパネルの透明導電膜、リチウムイオン電池の薄膜型電極などの製造に不可欠な、金属微細材料。IoTデバイスの普及や再生可能エネルギーの実用化が進む現在、そうした金属微細材料のさらなる高性能化・低コスト化が、強く求められている。李准教授が目指すのは、時代のニーズに応える新たな金属微細材料を創製し、なおかつ次世代技術に応用可能なレベルへと信頼性を向上させていくことだ。
「原子やイオンの拡散現象に着目し、異なる駆動力で誘起した拡散現象を利用して、より比表面積の大きい金属微細材料を創製しようと考えました」。
意図的に金属粒子の移動を制御することにより、高比表面積を持つ金属微細材料を創製する。
「本来は材料創製の妨げとなる拡散現象を、あえて有効利用するところに、表裏一体の面白さを感じます」。
さらに、創製した金属微細材料に対し、構造材料としての力学的・熱的特性、および機能材料としての電気的特性を評価する実験を行う。

複合微細構造体の創製に成功

最近の実例としては、脱イオン水滴下法を用いて、絶縁基板上に配置されている電極間に電圧を印加し、意図的にイオンマイグレーションを誘起させるという実験を行った。実験の結果、複合微細構造体(Cu-CuO)の創製に成功した。また、これらの微細材料を用いて充放電特性を評価し、安定したサイクル特性を確認した。この成果によって、リチウムイオン電池負極への応用可能性を示すことができた。
「この成果を基に、次は電圧印加下におけるジュール発熱の支配因子を究明し、透明導電膜への応用を目指します」。
一つ目標を達成したら、そこでまた新たな目標ができる。想定外の実験結果が出て困難を感じることも多いが、その理由を探る過程で、新たな発見もある。
「研究は人生と同じで、山あり谷ありです。でも、千里の道も一歩から。興味を持つ対象があれば、その思いを起点として日々努力できます。その道の先には、きっと絶景が広がっています」。
自身の起点となった出来事は、ある予備実験だった。電極側付近にデンドライト状な生成物が瞬間的に伸びていく光景を目にした時の感動は忘れられない。
「こんな奇跡のようなことを、自分の手で起こせたらいいなと思いました」。
これまでの研究では、単独の拡散現象を対象にしてきたが、現在は異なる拡散の融合に力を注ぐ。いかに相乗効果を引き出せるか工夫し、多様な形態を持つ微細材料の複合を実現したい。