先端を駆ける研究者たち|情報伝送システム研究室

電磁ノイズの謎を究明し、より高度で安定したIoTシステムを。電磁ノイズの謎を究明し、より高度で安定したIoTシステムを。

PROFILE

1989年東北学院大学大学院工学研究科電気工学専攻博士前期課程修了。
東北電力株式会社勤務、八戸工業大学助手、講師、准教授、教授を経て、2013年より東北学院大学工学部電子工学科・情報基盤工学科教授。

複雑で難解なESDを解き明かしたい

スマートフォンなど、高度に発達する電気・電子・情報機器が、本来の性能を発揮するためには、それらのネットワークを支えるシステムもまた、さらに高性能化していく必要がある。
そうしたIoT時代に欠かせない技術、それがEMC(電磁両立性)だ。機器やシステムが、互いに発する電磁ノイズで悪影響を及ぼし合うことなく、安定動作できる耐性を持たなければならない。
川又教授は、ESD(静電気放電)など瞬間的・不規則的に発生する電磁ノイズに焦点を当て、その発生メカニズムの究明に取り組んでいる。また、それらがIoTシステムにどう影響するかを探るため、さまざまな実験を行っている。
「電磁ノイズの発生メカニズムは、複雑で難解です。特にESDは、ごく短い時間で発生し、非常に高速な現象を示します。ですから、それを観測するためには、高度な測定技術が必要なのです」。
ESDの電磁ノイズによるEMC問題については、世界中で多くの研究者が取り組んでいるが、なかなか抜本的な解決には至らない。正確に測定すること自体が、それだけ難しいということだ。
「測定して得られた結果が、本当にその現象を表しているのかという、見極めも大切です。抜本的な解決を焦らず、一つ一つの現象にじっくり向き合い、一歩ずつ解明していきたいと思います」。 体の柔らかさを測定する方法で行う。

測定システムの創意工夫がカギ

観測が難しいからこそ、そこに大きなチャンスもある。
「測定システムを創意工夫することで、オリジナリティーを発揮することができます。たとえ、同じテーマに取り組む研究者が世界中にいても、オンリーワンの研究は可能なのです」。
創意工夫を生み出す、研究者としての基礎力は、大学院生だった時代に培われたと感じている。
「研究成果は、それまで重ねてきた知識や経験に基づく、研究者独自の価値観や物事の考え方、感性などのフィルタを通して見いだされます」。
自身の経験を踏まえ、学生時代には、基礎となる学力と柔軟な応用力を身に付けることを、ぜひ勧めたい。
「大学院での研究活動を通して、物事に対する鋭い感度と豊かな感性を磨いてほしいですね。研究室でのチームワークや学会発表などで社会性も育み、バランスの良い人間として、自己実現を目指してほしいと願っています」。
高度に発達する情報通信システムを支える電子機器やデバイスが、EMC課題を克服して互いに最大の能力を発揮できる関係性の確立。そんな次世代のIoT社会を実現するのは、専門能力と社会性を併せ持つ、次世代の研究者たちなのだ。