先端を駆ける研究者たち|情報インタラクション研究室

聴覚器官の仕組みを解き明かし、医療・福祉・スポーツに幅広く貢献。聴覚器官の仕組みを解き明かし、医療・福祉・スポーツに幅広く貢献。

PROFILE

2005年名古屋大学大学院人間情報学研究科社会情報学専攻博士後期課程修了。東京農工大学特任助手、情報通信研究機構有期研究員などを経て2015年より東北学院大学大学院工学研究科電気工学専攻准教授。

臨場感を向上させる音提示システム

リモートでのさまざまな活動を支援する、使いやすいシステムの開発に向けて、木村准教授は新たな立体音響技術の研究を進めている。
「現在注力しているテーマは、遠隔コックピットでの作業環境で上からの異常音に素早く気付ける音提示や、大画面遠隔通信会議システムにおいて映像内の話者の口元から声が聞こえる音提示システムです」。
これらの音提示を、より理想的に実現するために考案したのが、個人用三次元音場再生技術とMVP(Multiple Vertical Panning)方式による立体音響技術である。
個人用三次元音場再生技術は、8個の超指向性マイクロホンで音を収録し、コックピット内に配置した8個のスピーカアレイで再生するシステム。また、MVP方式は大画面ディスプレイの上下にスピーカを配置し、上下2個のスピーカから音量差のある音を再生するシステムだ。
「これらの開発によって、リモート環境での臨場感を従来手法より向上できました。提案技術の効果を示せたときは、研究者として大きなやりがいを感じます」。

知覚情報処理の仕組みを解明したい

モノの使いづらい点を改善し、作業をよりスムーズにしたい。そのために、人間が知覚情報をどのように処理しているのかを解明したい。それが木村准教授の研究へのモチベーションとなっている。
「誰がやっても同じ結果を出せるためにはどうすればいいのか、分析と考察を重ねています。それが研究の難しいところでもあり、面白さでもあります」。
人間の知覚情報は複数あるが、なかでも特に聴覚にこだわる理由は、学生時代の進路選択当時にきっかけがあったという。
「音に関わる仕事がしたくて、その分野の企業を志望していたのですが、あいにく就職氷河期世代でした。それで博士後期課程に進学したところ、どんどん興味深くなって研究の幅が広がり、研究者として生きていこうと心を決めました」。
研究者の世界は、結果こそがすべてという厳しいもの。この道を進むなら、ハングリー精神を持ち続ける必要がある。
「研究テーマを探すため、日夜ネタ探しに苦労しています。でも、やりたいことを仕事にしている満足感は大きく、この生き方を選んでよかったと思っています」。