先端を駆ける研究者たち|建築計画研究室

都市の安全性・利便性・快適性を地域性や行動学の視点で追究。都市の安全性・利便性・快適性を地域性や行動学の視点で追究。

PROFILE

2001年東京電機大学大学院工学研究科建築学専攻博士課程修了。秋田工業高等専門学校准教授、東北学院大学准教授などを経て、2023年より東北学院大学工学部環境建設工学科教授。

建築・都市計画の指針策定に寄与

生活の中で人々が感じる「安全性・利便性・快適性」は多種多様で、場所ごとに条件が異なる。人間の行動や感じ方を調査し、建築・都市計画の指針策定に寄与することが、恒松教授の研究目的だ。
快適性においては、主に良好な都市景観について研究を進めている。
「高度成長からの急激な都市化により、失われつつある景観の地域性を次世代に継承するため、景観法という法律がありますが、地域ごとの基準を定めるのは非常に難しいことです。本研究では、街並みや屋外広告物などの視点から調査を行い、地域の特色を提案しています」。
これまでに複数の自治体へ、景観計画策定の基礎資料として研究成果を提供した。
「ある地域で得た成果が、他の地域にも適用できるわけではありません。地域が主体で活動することの重要性が改めて確認できました」。
また、安全性については、建物からの避難をテーマに取り組んでいる。
「図書館の閉架書庫内にいる人が、避難時にどのような行動をするか、現地で実験しています。地震で停電した場合、明るい方や広い通路に向かうといった、状況による行動特性などを調査しています」。

「絶対」や「普通」がないことが魅力

建築・都市空間は、工業製品のように試作することができない。つくってから不備があったとしても、数年から数十年は存在し続けてしまうものだ。
「だからこそつくる前のシミュレーションが重要であり、その成果が確かな指針となることを目指しています」。
都市の未来に関わる研究をする上で、常に心がけているのは「絶対」や「普通」といった考え方をしないことだという。
「思い込みは、新たな発見を放棄する行為です。たとえば景観では、同じ自治体内でも中心部か住宅地かで考え方が全く異なります。人間の行動では、想定外の結果に驚くことも多々あります。全く異なる条件で共通する要素が見つかった時などは、研究の面白さを改めて実感します」。
大学院進学を目指す若者にアドバイスしたいのは、修了後の目標を持つこと。明確でなくても、将来の指針づくりをすること。
「大学院=研究者ではなく、自分が進む分野の専門性を高める時間と考えれば、きっと有意義な時間が過ごせるでしょう」。