先端を駆ける研究者たち|群衆流動情報工学研究室

避難時の人流メカニズムを解明し、防災都市計画・建築計画に貢献。避難時の人流メカニズムを解明し、防災都市計画・建築計画に貢献。

PROFILE

2016年東京工業大学大学院総合理工学研究科人間環境システム専攻博士後期課程修了。東急建設株式会社、株式会社東急総合研究所、
東北学院大学工学部情報基盤工学科講師などを経て、2020年より東北学院大学工学部情報基盤工学科准教授。

実測調査を基に人流メカニズムを解明

門倉准教授が取り組む研究は、群集流動(大規模な人の流れ)が引き起こす現象の調査とモデル化、また、それに基づく人流シミュレーション技術の開発である。
「主に建物内の避難行動を対象として、避難訓練の実測調査や避難実験を行っています。人の流れを解明することにより、渋滞や混雑の解消、特に避難計画など防災分野での活用を目指しています」。
長年にわたる避難訓練調査の結果、高層ビルにおいて大規模避難者が一斉に避難した場合には、階段室内で滞留が生じ、階段室内を上層階に向かって滞留が伝播していくことがわかった。
「その滞留が生じる要因や、滞留が伝播する条件もわかってきました。この特性を考慮し、高層ビルの避難計画策定に寄与できればと思っています」。
避難訓練の実測調査は、参加人数による影響が大きい。コロナ禍では避難訓練の中止や人数制限など困難も多いが「めげずに興味を持って続ける」をモットーにしており、研究への意欲はますます高まる。
「避難時の人間行動は、未だ不明なことも多く、そのメカニズムを考察することに面白さを感じます。さらに解明を進め、避難シミュレーションへの実装に力を入れていきたいと思います」。

2021年の地震で研究の重要性を再認識

「階段室内の滞留現象の解明」と同時に「図書館内の避難行動」というテーマの研究にも力を入れている。
「本学の建築計画研究室との共同研究として、2年前から取り組んでいます。東日本大震災から10年を経て発生した福島県沖地震では、大学図書館で落本による通路閉塞が実際に起こり、研究の重要性を改めて感じました」。
今後も起こり得る震災をはじめ、さまざまな災害への備えとして、避難を考慮した都市計画・建築計画は必須であり、これらの研究が貢献できる分野は幅広い。研究の方向性が定まったきっかけは、恩師に誘われて避難訓練調査に参加したことだったという。
「もともとは、セルオートマトンなどシミュレーションそのものに興味を持っていましたが、建物の設計や施設の運営に人流シミュレーションが役立つことを知り、実際の人間行動に興味が湧きました」。
人間行動の観察を続けることで気付いた現象が、研究の種になったときの充実感は大きい。また、さまざまな人との協働で研究をすることの楽しさも大きい。人と関わることでこそ、得られる発見もある。
「大学院では、学部生時代よりも深い研究生活の中で、問題解決をしなければならない場面が増えるでしょう。ここで出会う多くの研究者と関わりながら培われる問題解決力は、社会に出てから必ず役に立つものだと思います」。