先端を駆ける研究者たち|伝送回路学研究室

5G・IoT時代を支え、進化させる、新たな高周波伝送回路を提案。5G・IoT時代を支え、進化させる、新たな高周波伝送回路を提案。

PROFILE

1991年東北学院大学大学院工学研究科電気工学専攻博士後期課程修了。東北大学情報処理教育センター助手、
東北学院大学工学部講師などを経て、2007年より東北学院大学工学部電気情報工学科准教授。

従来回路の改善と新しい回路の提案

5G・IoT時代において高周波技術の重要度はますます高まり、多岐にわたる産業分野で、常に技術革新が求められている。
「私の研究は、高周波伝送回路の回路設計論です。これまでに報告されている伝送回路の改善と、報告されていない性能を有する伝送回路の提案を行っています」。
具体的には、マッチング回路やパワーデバイダ回路など、さまざまな伝送回路の回路構成、設計手法について理論的に検討し、設計手法の妥当性を検証する。
「扱う数式を、いつも解析的に解けるとは限らないのが、本研究の難しいところです。そのぶん、自分の考えが正しかったと証明できたときの喜びは大きいですね」。
従来回路の改善実績を積み重ねていくなか、従来回路では得られなかった、新しい性質を有する伝送回路も提案できるようになってきた。
「できない、ではなく、できるようにする。それが研究者である──困難な壁にぶつかったときに思い出すのが、恩師から賜ったこの言葉です。この言葉に何度も励まされてきました。新たな伝送回路を考案するのは険しい道のりですが、まだ世の中になかったものを生み出せることが、研究の最大の魅力なのだと思います」。

初心を忘れず、未来に夢を抱いて進む

「現在の研究に取り組む直接的なきっかけとなったのは、大学の卒業研究でしたが、もともと小さい頃から無線というものに興味がありました」。
高周波伝送回路は、無線データ通信機器をはじめとする無線システムにおいて、特に有用とされる技術だ。
「無線への素朴な興味が原点にあるからこそ、伝送回路への情熱を失うことなく研究を続けていられるのだと思います」。
常に新しいものを提案し続けていかなければならないのは、大変なことだ。研究者として生きていく上で怖いと感じるのは、アイデアが枯渇することだという。
「研究者の先輩として、学生に向けて口癖のようにこう言います。コンビニの弁当は、客に飽きられないよう、常にアイデアを出して新商品を開発していかねばならない。研究はそれに似ているものだと」。
そして、アイデアの源泉となるのは、未来に「夢」を抱くことだという。
「自分の研究とはまったく関係ないことでもいいから、若き研究者たちには夢を持っていてほしい。私も“いつか惑星間航行システムが実現するといいな”とか考えてわくわくしたりします」。
通信速度の高速化や通信機器数量の増大など、質・量ともに技術向上の要求が高まっていく未来に向けて、さらなる新たな伝送回路の考案に意欲を燃やす。そして、研究者を目指す者に期待する。
「これからは、あなた方の時代です。若い力で、夢の技術を開発してください」。