先端を駆ける研究者たち|情報通信システム研究室

避難時の人流メカニズムを解明し、防災都市計画・建築計画に貢献。避難時の人流メカニズムを解明し、防災都市計画・建築計画に貢献。

PROFILE

1992年電気通信大学大学院電気通信学研究科電子工学専攻博士前期課程修了。電気通信大学電子工学科科助手、
国立研究開発法人情報通信研究機構研究マネージャーなどを経て、2016年より東北学院大学工学部電子工学科(現:情報基盤工学科)教授。

妨害波測定用超広帯域アンテナを開発

電子電気機器に囲まれたIoT社会において、電磁両立性(EMC)の重要性はますます高まっている。石上教授は現在、3つの研究でその課題に取り組んでいる。
その1つが、妨害波測定用超広帯域アンテナの設計・開発だ。
「市販の妨害波測定用アンテナの周波数範囲をはるかに超える、超広帯域アンテナの開発により、妨害波測定の時間・コスト軽減を目指しています」。
この研究では、開発アンテナの試作利得などを電波無響室で測定し、また、ワークステーション+高性能GPUを用いて、電磁界解析手法による特性解析を行った。
「現時点までに、400MHz〜40GHz帯を単独で測定可能な、超広帯域アンテナの開発に成功しました」。
2つ目は、独立成分分析による電磁雑音波形の抽出に関する研究。これは、電磁波の波形を抽出し、無線通信に有害な電磁雑音成分を特定可能にするものだ。
「独立成分分析の『Python』によるプログラミングと、電波無響室での実証実験という形で研究を行い、4成分が混ざり合った電磁波から、それぞれの成分の波形抽出に成功しました」。

国際規格への寄与も重要なミッション

3つ目は、再生可能エネルギー関連機器からの電磁雑音測定方法の研究だ。太陽光発電モジュールやパワーコンディショナなどを対象に、効果的な測定方法を検討し、国際規格への寄与を目指している。
「超広帯域アンテナ開発などによる産業への貢献と並行し、国際標準化活動についても、重要なミッションとして取り組んでいます。研究によって、策定検討中の新規国際規格へ寄与できるデータが得られ、論文化を達成いたしました」。
工学者として「科学を使って人のために役立つ」という工学の基本原理を、常に心がけている。研究の日々は困難の連続で、振り返る暇もないほど忙しいが、時には立ち止まって考えることも大切だという。
「研究は、何が飛び出すかわからないジャングルをかき分けて進むようなもの。迷子にならないよう、一定距離ごとに自分の立ち位置を確認しながら歩んでいます」。
6年間の大学教育を行う医学部や薬学部のように、工学部の学生もぜひ大学院へ進学し、研究者に必要な作法(研究の方法)をじっくり学んでほしいと願っている。