夢を追う若き研究者たち

太陽熱発電でエネルギー・環境問題の解決へ。

博士前期課程2年 エネルギー・環境工学研究室 (星研究室)
木村 悠人さん

[RESEARCH THEME]
太陽熱の動力化に関する研究

外部から加熱することで稼動するスターリングエンジンは、高い熱効率性や燃料の多様性など多くの利点がある。
「その加熱部に太陽光を集光して発電するシステムを研究しています。カーボンニュートラル達成への大きな一歩となる成果を目指しています」。
これまでの研究で、実際に稼働してLEDライトを点灯させることができたが、まだ実用レベルには至っていない。
「それでも、太陽熱発電システムの可能性は確かに感じることができました。集熱方法とシステム設計を改良することで、現時点での課題は解決できると考えています」。
この技術が実用化すれば、電力の安定供給と環境問題の両面で、大きな社会貢献につながる。その思いが研究のモチベーションとなっている。
「工学系の技術開発全体に興味はありましたが、より直接的に社会へ貢献できる研究とは何かを考え、このテーマに取り組みました」。
高校時代から開発研究職を志望し、大学入学時点ですでに大学院進学を決めていたという。
「研究は楽しいだけでなく、苦しいことも多々あります。しかし、その度に教授や研究室の仲間と話し合いを重ね、試行錯誤を経て良い結果を出せた時の喜びは、研究活動を通してしか味わえないものだと思います」。
恩師や仲間と共に、より効率的な集光システムを構築し、より高出力なエンジンを用いた実験に取り組んでいく。

【PROFILE】
2019年宮城県仙台向山高等学校卒業。2022年東北学院大学工学部機械知能工学科卒業。卒業論文タイトル「太陽熱の動力化に関する研究」。

移動中ワイヤレス給電をモビリティで活用。

博士後期課程2年 生体電磁工学研究室 (佐藤研究室)
横澤 将貴さん

[RESEARCH THEME]
モビリティへの移動中非接触給電と漏洩磁界低減

電気自動車(EV)、無人搬送車(AGV)、自律走行搬送ロボット(AMR)などに対し、移動中ワイヤレス給電を実装することで、充電待機時間をなくして作業効率を向上させたい。
「その実現に向けて、ワイヤレス給電用のコイル形状や周囲への漏洩磁界の影響について研究しています」。
本研究では、主にシミュレーションによって給電コイルの特性を把握した後、実際に給電用コイルを作成して効果を検証している。
「現在、キャンセルコイルの特性が判明してきた段階です。もう一息で設計についてまとめられそうです」。
ワイヤレス給電技術は、単体で使われるものではなく、必ず何らかのデバイスとセットで運用されるものだ。
「だからこそ応用範囲は幅広く、さまざまなシステムに柔軟に適用させられる点が、この研究の魅力です」。
研究テーマとの出会いは、学部生時代に、先輩の院生が行う実験を手伝ったことだった。
「もともとは医療系ワイヤレス給電に興味があったのですが、モビリティのほうがたくさんのデバイスに適用できる柔軟性があって、より将来性がありそうだと感じました」。
大学院は、やりたいことを自由に追究できるのが魅力だ。同時に、すべてを自分の意志で決定しなければならない厳しさもある。
「大学院生活を充実させるには、常に研究意欲を高く保つことが大切です」。

【PROFILE】
2020年東北学院大学工学部電気情報工学科卒業。2022年東北学院大学大学院工学研究科卒業。修士論文タイトル「モビリティへの走行中非接触給電を想定した漏洩磁界低減用キャンセルコイルに関する検討」。

時代が求める新たな永久磁石材料の開発を。

博士後期課程1年 磁性材料研究室 (嶋研究室)
森 裕一さん

[RESEARCH THEME]
Sm-Fe系磁性薄膜の高保磁力化

ネオジム磁石は磁気特性に優れることから電気自動車やハイブリッドカーのモータなど多くの工業製品に利用されているが、高温環境下では性能が大きく低減してしまう。その改善策として、ジスプロシウム(Dy)と呼ばれる重希土類元素が添加されている。
「しかしながら、Dyは地殻存在量が少なく偏在しており、安定供給が困難な資源の一つです。そのため、Dyフリーの新しい磁石材料開発が切望されています。そこで私は、ネオジム磁石より優れた磁気特性が期待されるサマリウム鉄系磁石の開発に関する研究を行っています」。
嶋研究室ではこれまでに、サマリウム鉄系薄膜に軽元素であるホウ素の添加により、10倍以上の磁気特性の向上に成功した。さらに元素拡散により、性能がより向上しチャンピオンレコードを記録している。「このように、添加元素や金属組織の制御により、さらなる磁気特性の向上を目指しています」。
「国際学会で賞を獲得するなど活躍されていた先輩に憧れ、この研究室に入りました。私も2022年度に開催された学会において優秀ポスター賞をいただいたので、今後もワクワクするような結果が出せるような研究を行いたいと考えています」。
1原子レベルで材料内部の構造を探り、制御していく研究は困難も多い。その難しさが同時に面白さなのだと感じている。実験結果について、教授や学生仲間とディスカッションすることそして学会で成果を報告する楽しさが、大学院の大きな魅力だ。

【PROFILE】
2021年東北学院大学工学部電気電子工学科卒業。2023年東北学院大学院 工学研究科電子工学専攻卒業。修士論文タイトル「Sm(Fe-Co)系磁性薄膜の構造と磁気特性」。

地域と関わりながら空き家の活用法を研究。

博士前期課程2年 建築デザイン研究室 (櫻井研究室)
佐藤 光洋さん

[RESEARCH THEME]
地方における空き家活用手法に関する実践的研究

日本では近年、空き家の増加が社会問題となり、次第に深刻化している。
「その中でも特に、地方における空き家を対象として、活用法と継続化する仕組みづくりを研究しています」。
研究は机上のものではなく、所有者の協力を得て実践的に行っている。
「塩竈市の空き倉庫と、気仙沼市の空き古民家を使用させていただき、所有者様や地域の皆様と意見を交わしながら、可能性を探り続けています」。
空き倉庫については、地域交流の場というコンセプトで、すでに設計から改修までを行なった。
「学生として関わる短期的視点と、所有者としての長期的視点とでギャップを感じることが、しばしばありました。そのすり合わせが研究の難しさであり、意義でもあると思います」。
こうした気付きを糧に、現在は古民家の活用法を多角的に検討している。
「空き家を介して多くの方々と出会い、支えられてきました。小さなことでも活動を続けていくと、人づてに広がっていきます。地域課題への取り組みは、人と関わりながら時間をかけて行うものだと実感しました」。
将来は、建築に限らず自分の職能を生かせる道を考えているという。
「さまざまな技術が進歩する一方で、流れから置き去りにされる地域や人が存在していることに、わだかまりを感じていました。そこに山積する多くの課題に目を向け、少しでも貢献できるような仕事をしたいと思います」。

【PROFILE】
2018年宮城県利府高等学校卒業。2022年東北学院大学工学部環境建設工学科卒業。卒業論文タイトル「鶴ヶ谷団地における住環境改善及びコミュニティ活性化に関する基礎的研究」。