
博士前期課程2年 自動車工学研究室(城戸研究室)
川原 友希 さん
[RESEARCH THEME]
積雪寒冷地における路面μの非接触定量計測
自動運転に関する研究は精力的に進められていますが、路面μ(滑りやすさ)を定量的に計測する有効な手段は未開発です。そのため、積雪寒冷地における自動運転の実現には課題が残されており、前方の路面状態を正確に把握する技術の確立が求められています。本研究では近赤外カメラを用いた路面判別と、凍結路面μの非接触定量計測を試みています。
水や氷は近赤外線(900〜2500nm)の領域に吸収バンドを有し、特に1500nm近傍の光を著しく吸収します。実験では表面の粗さの異なる凍結路面を近赤外カメラで撮影し、異なる波長の画像間で除算処理を行って画像強度比と摩擦係数μの関係性を調査しました。これまでの成果として、1300、1400、1500nmの3波長画像でDry、Wet、Iceの路面状態を判別し、1300nmと1500nmの除算からは摩擦係数μまで定量できることが明らかになりました。
一方で路面μの計測値にはばらつきが大きく、氷の温度管理やフィルター交換など細心の注意を払いながら、実験環境の見直しや氷の下地の影響調査など精度改善に取り組んでいます。誤差を一つずつ潰していく積み重ねが技術の信頼性につながると考えています。
私は、学部3年次に冬季路面の課題を知り、東北のような積雪寒冷地が抱える「高齢化に伴う交通弱者の増加」という社会課題の解決を目指してこの研究を始めました。将来的な車載化を見据え、滑りやすさをリアルタイムで計測できる技術として、過酷な環境下での自動運転の実現に貢献したいと考えています。教員や研究室内外のメンバーとの議論を通じて、見えなかったことが明らかになる瞬間に大きなやりがいを覚えます。
卒業後は自動車メーカーに就職し、人々の楽しく自由な移動の実現に貢献することが目標です。
【PROFILE】
2021年岩手県立大船渡高等学校卒業。2025年東北学院大学工学部機械知能工学科卒業。卒業論文タイトル「近赤外カメラによる凍結路面μの定量計測」。


博士前期課程1年 メディアアナリシス研究室(金研究室)
丸子 兼成 さん
[RESEARCH THEME]
複合現実技術をつかった電気回路教材の開発と検証
コンピュータがデジタル画像を分析できる方法について探求する「メディアアナリシス研究室」において、従来の学習形態では理解しづらい内容に対し、複合現実(MR)技術の特徴を活かした教材を用いることで、学習理解を深める研究を行っています。現在は電気回路に着目、電流や電圧など目に見えない現象を視覚的に補助し、理解を促す教材の開発に取り組んでいます。
具体的には、まず目指す教材を製作し、ある程度完成した段階で複合現実環境にそれを表示します。大学生複数人を対象にその教材を使用し、動作時の挙動や見え方などを細かく確認しながら修正を重ねています。誰が手にしても使いやすい操作感や、高い視認性を確保し、よりわかりやすい教材となるよう調整中です。
これまでの成果としては、実際の実験科目で扱っているテーマの疑似的な再現を行いました。具体的には、電気回路内の電圧や抵抗値を複合現実環境で自由に操作可能にし、それに伴う電圧と電流の変化を視覚的に表示しました。大きな手応えを得るまでには、まだ時間がかかりますが、研究が少しずつ、前に進んでいるのを感じています。
この研究の大きな面白さは、自分がイメージしたアイデアを自らの手で形にできる点にあります。一方で計画通りに進まない難しさもあり、直感的に使いやすい操作性や、高い視認性を確保することの難しさも実感する毎日です。
今後の目標は、現在、目指している完成形を実現させること。その次に、今の電気回路から応用して、電気回路以外の分野や日常生活の中で活用できるシステムへの展開にも興味があります。将来的には、実際の授業に教材として導入し、学習理解の向上に役立てていければと考えています。
【PROFILE】
2022年仙台南高等学校卒業。2026年東北学院大学工学部電気電子工学科卒業。卒業論文タイトル「キルヒホッフの法則を題材とした複合現実教材に関する研究」。


博士前期課程2年 情報通信システム研究室(石上研究室)
大友 悠真 さん
[RESEARCH THEME]
GTEMセルによる電磁界センサ・プローブの高精度校正方法の検討
近年、IoT化の進展に伴い多様な製品に電子機器が組み込まれるようになりました。その結果、機器間の電磁波による妨害・干渉が課題となり、放射ノイズの測定方法や許容値の標準化が求められています。本研究では、GTEMセルを用いた電磁界センサ・プローブに対する新しい高精度校正方法の提案を目的とし、従来の電波無響室とは異なる手法で校正プロセスの簡易化と高精度化を目指しています。
現在は「TEM導波路の一種であるGTEMセルを用いた光電界センサ等の電磁界センサ・プローブに対する新しい高精度校正方法の検討」と「GTEMセルによる校正の信頼性の向上を目標とした、GTEMセルの時間領域・周波数領域両特性および校正の不確かさの評価」の2点を研究しています。成果として、従来は周波数帯ごとに複数必要だった光電界プローブの校正を、提案手法により一つで実施でき、より確からしい校正が行われることをデータで確認できました。
本研究では試作段階のアンテナなども用いるため、すべて想定通りになるとは限りません。その予測できない部分に、この研究の面白さや醍醐味があると感じています。
私がこの研究に興味を持ったのは、大学院へ進学した年にGTEMセルが研究棟に配備されたことがきっかけでした。その特性や活用法を明らかにしたいと考え、研究を開始しました。大学院に進学したのも、より専門的な講義の受講や研究活動に取り組みたいという思いからです。日々の研究を通して進学前には想像できなかった新たな知見を得られ、とても楽しいです。
今後は博士後期課程へ進学し、研究職に従事することが目標です。これまでの研究で得た知見をさらに深化させ、分野に大きく貢献できる研究者を目指しています。
【PROFILE】
2021年古川高等学校卒業。2025年東北学院大学工学部情報基盤工学科卒業。卒業論文タイトル「複数波源による電磁雑音の測定と通信への検討」。


博士前期課程2年 構造動力学・維持管理学研究室(李研究室)
SHAH BINITA [サハー・ビニタ] さん
[RESEARCH THEME]
ボールベアリングを用いた転がり免震装置における残留変位低減手法に関する研究
ネパールの山岳地帯をモデルケースとし、組積造建築に適した低コストで施工性の高い免震工法の開発を研究しています。日本は幾度も大きな地震を経験し、その教訓を活かす技術者によって耐震技術を向上させ、被害軽減と人命保護に貢献してきました。一方、発展途上国では日本ほど耐震性への意識が高くなく、建築基準や工法の整備も不十分です。2015年と2023年のネパール地震の被害データからも、その課題は明らかです。現地に多い組積構造物の地震時の損傷を軽減し、人命を守る免震工法の必要性を強く感じたことが、本研究のきっかけです。
具体的には、エルセントロ地震、熊本地震、神戸地震を入力した振動台実験を行い、異なる性質の地震に対して復元材を検証し、どのようにすれば現地に適した高性能な免震システムを作成できるのか、その計画を立てています。日本とは異なり、山岳地帯では組積構造物による住宅が建築され、入手しやすい材料も限られています。そのため、施工条件を考慮した低コストで安全性と使用性の高い免震システムを開発することが本研究の課題です。
私が日本の免震・耐震技術に興味を持ったのは、日本へ留学後、何度、地震の振動を受けても崩壊せず使い続けられているアパートメントや地域のインフラを実際に目にしたことがきっかけでした。将来は、大学院で得た専門知識と研究成果を活かし、地震などの災害から、日本ほど技術が優れていない国でも、その条件の中で人命を守ることのできる技術者になりたいです。そして、災害後も継続して使用できる建築基準や工法をネパールのような発展途上国へ広め、災害時の人命救助に役立てたいと考えています。
【PROFILE】
2010年Shree Padmodaya Public Model Higher Secondary School高等学校卒業。2013年Tri-Chandra Multiple Campus Kathmandu大学 Science and technology学部 Math,Physics Major科卒業。
