東北学院大学

学長の部屋

2023年度入学式告辞

本日ここに、2023年度入学式を挙行するにあたり、新入生の皆様に心よりお祝いを申し上げます。また保護者の皆様の喜びはいかばかりかとお察し申しあげます。今年度から開学したばかりのここ五橋キャンパス押川記念ホールに新入生を迎え入れることができ、本当に喜ばしい日となりました。

本日、入学される皆さんは、それぞれに高校での学びを終え、今年は、新キャンパスと4つの新学部の開設ということも手伝い、多くの受験生を数えましたが、選ばれて入学の権利を勝ち取られ、東北学院大学の学生になりました。私たちは皆さんを一人ひとりかけがえのない人格として尊重し、受け入れ、これから卒業までの4年間、全力で支えていくことをお約束します。

東北学院大学は、9つの学部と、6つの大学院研究科、学生総数11,000名を擁する東北・北海道地区最大の私立総合大学であります。日本で最初のプロテスタント教会の一員となった押川方義、その押川を支えて学院設立に尽力したアメリカ人宣教師ウィリアム・ホーイによって、1886(明治19)年、仙台神学校として、最初は2名の教師、6人の学生からスタートしました。今年は創立137年周年を迎えます。仙台神学校は5年ほどで、東北学院(North Japan College)と名前を変え、ホーイの後継者であるデイヴィッド・シュネーダー宣教師の下で発展し、1949年に大学となり、今日に至っています。創立以来、東北学院は総計20万人の卒業生を送り出してきました。仙台で、東北で、それのみならず、世界各地で、あらゆる職場で、また家庭で良き働きをなしています。

まず本学の教育理念の基盤、これを「建学の精神」といいますが、それは、キリスト教による人格教育であります。学則第一条に、「東北学院大学は、キリスト教による人格教育を基礎として、広く知識を授けるとともに深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させ、もって世界文化の創造と人類の福祉に寄与することを目的とする」と記しています。私たちは、この建学の精神を、LIFE LIGHT LOVEというスクールモットーとして説明しています。これは、東北学院の卒業生の間で、長い間親しまれている言葉であります。LIFE(いのち)とは、他者の命と人格を自分と同じように大切すること(個人の尊厳)、LIGHT(ひかり)とは、学問や科学、部活の成果によって他者を明るく照らすこと(社会貢献)、LOVE(あい)とは、自分が愛するだけでなく他者からも愛されるようになること(隣人愛)を意味しています。

この建学の精神によって、五橋と土樋にあるキャンパスでは、学期中は月曜日から金曜日まで毎日10時20分からこの押川記念ホールとラーハウザー記念東北学院礼拝堂において大学礼拝が行われています。心を落ち着かせ、静謐で厳粛な大学礼拝に出席して、パイプオルガンの音色の下、聖書を読み、聖書に基づくメッセージを聴き、学院の根幹の精神を知り、自分とは何者か、隣人とどう向き合うべきかを考えてほしいと思います。

さて、皆さんがこれから学ぶ大学と、これまで学んできた高校の違いは何でしょうか。高校の勉強には教科書があり、教科書通りその正解を覚えていれば、大学という次の進路が約束されています。しかし、大学卒業後には、約束された次のステージはありません。大学を卒業すれば、あとは死ぬまで自分の力、すなわち、実力で生きていかなければならない市民社会が待っているだけです。皆さんは大学における4年間で、生涯をよりよく生きていくための知識や技術を身につけなければならないのです。

そのため、勉学の仕方が違います。高校時代の学習という言葉は、漢字で書くと、学ぶに習うと書きます。大学では、学ぶに修める、と書いて学修と呼びます。修めるという字は、修行の修、修士号の修という字であり、身につけるという意味があります。すなわち、高校時代は先生や教科書から習うという受動的な勉学態度を意味するのに対して、大学においては、学生自らが、どれほど力を身につけることができたかという、より主体的な勉学態度が求められるのです。よく大学なんて卒業できさえすればいいのだという人がいますが、大きな間違いです。もうそんな時代ではありません。学卒なんて山ほどいます。そのような人は、将来発揮すべき実力を身につけずに丸腰しで市民社会に出ていくようなものです。

では、実力を身につけるにはどうしたらいいのでしょうか。東北学院大学は、今年度から新キャンパスの開設や4つの新設学部を設置しましたが、それ以外にも、新入生には、以下の3つの新しい学びの仕組みを用意しました。

第一は、現代の「読み書きそろばん」と言われているデータサイエンスです。ご存じのように、大量データを高速で運ぶ5Gソサイエティやすべてのモノに人工知能を宿らせるIoTによって、生産、消費の大量化、加速化が急激な勢いて進展しつつあります。皆さんは、これらの情報手段を駆使し、また情報手段が残す膨大なデータから価値創造をしていかなければなりません。私は、文系で数学受験ではないから、そのような仕組みが分からなくていいということでは済まされなくなってきているのです。データサイエンスの学びの入り口として、全学生が履修できるTGベーシックに「統計的思考の基礎」という科目を選択必修科目として配置しました。選択ですが、臆せずに履修することです。情報学が専門の先生方が文系の学生のためにわかりやすく説明してくれます。「文理融合」の総合大学の強みです。

第二は、アクティブラーニングです。皆さんは高校時代に「総合的な探求の時間」を履修したと思います。現代社会は、複雑なメカニズムから構成されていて、例えば、法学なら法学、工学なら工学という単一の学問だけでは、複雑な社会において課題解決はできません。そこで、アクティブラーニングという主体的な学修方法が求められます。全学生が履修できるTGベーシックの「課題探求」という科目群は、キャリア、地域、ボランティアなどの課題について、問題解決のための方法を学び、実際に調査して考え、異なる学部の学生が厳しく評価し合うような問題解決型の授業を増やし、さらには少人数のゼミまで配置しました。学部が異なればこんな見方もできるのかとお互いに切磋琢磨してほしいのです。そのために、大学は、土樋のホーイ記念館に、五橋のシュネーダー記念館に東日本随一のICT機器を備えた「ラーニング・コモンズ」というアクティブラーニングのための施設を用意しています。

第三は、eポートフォリオといわれる「TG-folio」の活用です。ポートフォリオとはもともとは資産運用のための金融用語ですが、「TG-folio」は、学生たちが自分の学修成果を振り返り、目標に対して能力をどれぐらい身につけたかをパソコンで確認することができる仕組みです。就活といわれる就職活動の際には、そこから「ディプロマサプリメント」といわれる証明書をダウンロードして、それを求人先に見せることになります。そこには、学業成績のみならず、体育会・文化団体連合・サークルなどの課外活動、外国語外部試験のスコア、留学やボランティア経験などが記載され、証明されるようになります。「TG-folio」を活用して、自分の目標を見失うことなく、学生生活を送ってほしいのです。

3年間、われわれを苦しめたコロナ禍もどうやら収束に向かいつつあるようです。さあ、今日から、東北学院大学の一員です。東北学院大学も新しくなりますが、皆さんも新しくなります。自分の目標をしっかり立てて、体育会や文連、サークルに居場所を求め、通学に便利で、仙台の街中に最も近いアーバン・キャンパスのメリットを最大限に活かし、充実した学生生活を送ってください。大学は、そのためのサポートを惜しみません。

最後に、聖書の有名な言葉を贈ります。「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。叩きなさい。そうすれば、開かれる」(新約聖書マタイによる福音書7章7節)。ご入学おめでとうございます。

2023年4月4日
東北学院大学 学長 大西 晴樹