東北学院大学

新着情報

時代の音「明治の音」/第3回公演「明治の長唄」開催報告

2019年04月16日

190401-1_1.jpg 190401-1_3.jpg

 2018年度は「明治の音」と題してレクチャーコンサートを行ってきた「時代の音」の第3回公演が3月17日、90周年記念館大ホールにて開催されました。
 第1回公演の「近代日本のうたの始まり」では近代日本で作られた新しい歌の世界を伝え、第2回公演の「ドイツ・日本・朝鮮に響いた明治の箏曲」では箏曲生田流の実力ある若手演奏家のご協力を得て、新しい時代に響いた箏曲を紹介。そして、このたびの第3回公演では、歌舞伎の伴奏音楽として18世紀から江戸を中心に発達した「明治の長唄」に焦点を当てました。
 開演前にあいさつした今井奈緒子教養学部教授は、「先般、教養学部は30周年を迎えましたが、時代の音は教養学部20周年を記念した演奏会をきっかけに始まりました。昨年度までは西洋における時代の音をお届けしてきましたが、今年度は日本の時代の音をお聴きいただきたく、東京藝術大学の塚原康子先生をお招きして、今回は長唄の魅力をお届けいたします」と述べました。
 第1部の《元禄花見踊》では、長唄は歌舞伎と共に発展し、唄、三味線、お囃子から成る音楽であることに加えて、踊りの伴奏や芝居の効果音としての役割も果たしたことから歌舞伎には欠かせない専用の音楽となり、後に数々の名曲が作られたことなど、長唄が誕生した背景を紐解きました。
 また、塚原教授は「元禄花見踊には一度聴くと忘れられない印象的な旋律がたくさんあります」と話し、三味線の小島直文氏、山口聡氏、佐藤さくら子氏、唄の味見純氏、守屋沙弥香氏をステージに招き、その一部の解説と旋律を紹介しました。その後、唄の杵屋正則氏、笛の鳳聲千晴氏、小鼓の藤舎朱音氏、大鼓の堅田喜代実氏、太鼓の梅屋巴氏を含めた総勢10名で《元禄花見踊》が華やかに披露されました。
 休憩後の第2部では《神田祭》(《百夜草》下の巻)についてのレクチャーが行われ、明治44(1911)年に作られた《神田祭》は、同年の10月1日の長唄研精会100回記念演奏会で「百夜草」下の巻という名で初演されたこと。そして、明治の末になると江戸時代の風習を知る人たちが少なく、江戸時代最大の祭礼だった神田祭をせめて音曲に留めたいと念願して作られたことなどを教えてくださいました。
 また、お囃子の奏者4名をステージに招いて、正しい並び順(上手から下手に向かって楽器の位置が低くなっていくこと。※向かって右から笛・小鼓・大鼓、太鼓の並び)や客席から見えにくい部分で音の出方を使い分けていることなどがレクチャー。その後《神田祭》(《百夜草》下の巻)が披露されました。
 約18分に及ぶ演奏後、会場は惜しみない大きな拍手に包まれ、最後に塚原教授は「本日ご紹介した長唄は、どちらも江戸時代の風物を描いた曲です。元禄花見踊は元禄時代の春に上野で踊る人々を想像で描き、神田祭は江戸の秋の祭りを音で表現したものでした。長唄には、他にも面白い唄がたくさんありますので、機会を得て曲に触れていただければ幸いです」と締めくくりました。

190401-1_2.jpg 190401-1_4.jpg 190401-1_5.jpg
190401-1_6.jpg 190401-1_10.jpg 190401-1_11.jpg
190401-1_7.jpg 190401-1_8.jpg 190401-1_9.jpg