東北学院大学

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年頭所感-大西晴樹学長-

2020年01月06日

新しいぶどう酒は新しい革袋に

 
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学長 大西晴樹
 


 明けましておめでとうございます。
 昨年4月に東北学院大学の学長に就任してから、初めての新年を迎えることになりました。2020年という新しい年は、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催もさることながら、3年後に控えた2023年4月の五橋新キャンパスの開校に向けて、3・2・1というカウントダウンが始まった年であるとの覚悟をもって臨みたいと考えております。そこで、年頭所感として、よく引き合いに出される「新しい酒は新しい革袋に」という言葉を取り上げてみたいと思います。実はこの言葉、新約聖書に由来します。マタイによる福音書9章の17節にはこう述べられています。「新しいぶどう酒を古い革袋に入れる者はいない。そんなことをすれば、革袋は破れ、ぶどう酒は流れ出て、革袋もだめになる。新しいぶどう酒は、新しい革袋に入れるものだ。そうすれば両方とも長持ちする」。なぜ、このような言葉が聖書に出てくるかと言えば、新しいぶどう酒とは、未発酵の酒のことで、その酒が発酵すると古い革袋が容易に破損したからです。転じて、ソフトを入れ替えてもハードが新しくなければ長持ちしないし、その逆も真で、ハードを建て替えてもソフトが新しくなければ長持ちしないという経験上の真理を表す言葉になりました。
 松本宣郎前学長は、TG Grand Vision 150に基づき、学長退任直前の昨年三月に「東北学院大学の将来像」において大学像・人材育成方針について四項目を提示しました。
1、東北を代表する高いレヴェルの大学
2、「地域」を担う中核的人材の養成
3、「国際(グローバル)化」と「情報化・AI化」の重視
4、「多様性・ダイバーシティ」の重視
 私も着任後の昨年六月に以下のような四つの諮問を提示しました。
1、「教養教育に関する諮問」
2、「新設学部に関する諮問」
3、「国際教育に関する諮問」
4、「IT・図書館活性化に関する諮問」
 その後、これらの諮問に対する答申が提出され、現在、東北学院大学においては、大きな意思決定とそれを実現するための準備が着実になされようとしています。
 東北学院大学の歴史を振り返るならば、戦前の旧専門学校の流れを汲む文経学部が新制大学として誕生し(1949年)、この学部から文学部と経済学部に分離独立しました(1964年)。多賀城キャンパスには工学部が誕生し(1962年)、土樋には、法学部が設立されました(1965年)。1960年代に東北学院大学はベビーブーマーである青年人口の増大と、経済成長による大学進学率の向上に押し出されて、総合大学として高い評価を確立したのです。その後1989年に、泉キャンパスには、教養部と専門学部の性格を兼ね備えた教養学部が設立され、経営学部が2009年に経済学部から分離独立し、現在の6学部体制が出来ました。日本は経済発展を遂げ、二十世紀の後半からは、グローバル化と情報化が叫ばれているにもかかわらず、いくつかの新学科が設立されたとはいえ、東北学院大学には、学部レヴェルにおいて、ニーズの高まった学問領域に挑戦する新しい学部はしばらく新設されてこなかったのです。
 今年、「新しい革袋」としての新キャンパスは槌音とともにその骨組みを見せるはずです。昨年11月から始まった解体工事は夏には完了し、来年にかけて、新キャンパスには、ホール棟、講義棟、高層棟、研究棟という四つの校舎の骨格が立ち上がってくるでしょう。「新しいぶどう酒」としての新しい教学の中味についてはまだ公表できませんが、2023年4月の新キャンパス開校に向けてその準備を鋭意進展させていかなければなりません。新しい学問領域に挑戦する新設学部以外に、教養教育を大切に守り続けてきた東北学院大学に相応しく、現在のTGベーシック科目をさらに発展させた教養教育のための新組織も立ち上げていかなければなりません。ということは、現在の大学機能の遂行という日常業務に、「新しい革袋」の実現のために、泉と多賀城の両キャンパスから土樋・五橋への移転の準備と、「新しい革袋」に相応しい「新しいぶどう酒」のいわば「醸造」という業務の2本の横串を刺し込んでいかなければなりません。新年からカウントダウンが始まるという事は、そういう事を意味するのです。
 東北学院は、今年創立134年目を迎えます。年頭にあたって、さらなる発展を遂げようとする東北学院大学のために祈りを併せ、ご支援をいただければ幸いに存じます。