【歴史学科】金子ゼミの学生が福島県知事を訪問 伝統芸能の継承支援活動を報告
2024年03月05日
2月16日、歴史学科金子ゼミ(民俗学)の金子祥之准教授と同ゼミ3年の今野実永さん、佐久間奈帆さんが福島県庁を訪問し、内堀雅雄知事に県の「大学生と集落の協働による地域活性化事業」による活動成果を報告しました。
事業は新しい視点や行動力などを持つ大学生と人口減少や高齢化が進む集落の交流によって、地域の復興や活性化を図るのがねらい。2009年度に始まり、これまでそれぞれ82の集落とグループ(43大学)が参加。今回は本学の他に宮城学院女子大学、東京藝術大学と武蔵野美術大学の活動団体も報告しました。
(左から)今野さん、内堀知事、佐久間さん、金子准教授 |
金子ゼミでは昨年度から、学生たちが中心となりこの事業の採択を受けています。交流・連携先となった集落組織は、福島県浪江町南津島に伝わる伝統芸能「⽥植踊り」を継承する南津島郷土芸術保存会。学生たちは保存会の協力を得ながら「南津島⺠俗調査プロジェクト」を進めました。当⽇は保存会のおかれた厳しい状況を説明し、その上で保存会が⽥植踊りを披露する際に学生たちが支援していること、また津島地区や田植踊りのPRを進めていることを報告しました。
津島地区には4集落に伝わる⽥植踊りのほか、神楽七芸など県の重要無形⺠俗⽂化財に指定されている芸能が数多くあります。しかし東⽇本⼤震災で同地区が帰還困難区域となったことから居住者は他地域への避難を余儀なくされ、⾼齢化も相まって芸能の継承は⼤きな困難に直⾯しています。
そこで金子ゼミの学生たちは南津島郷⼟芸術保存会と連携して、不⾜している配役を学⽣たちが習得し「踊りのリレー」として伝統ある芸能を次へつなぐ取り組みを⽀援。津島地区が再建された際そこに住む人々で⽥植踊りが続けられるよう、1年⽬は津島地区の聞き取り調査のほか⽥植踊りの習得に向け、⼆本松市はじめ福島県内各地に⾜を運び練習を重ねてきました。1年⽬の終わりから2年⽬にかけてはイベントの舞台などに協⼒する機会も多くなり、これまでの出演は10を数え(3⽉5⽇時点)、3⽉17⽇には仙台市で開催される「⾷べて応援しよう︕in仙台2024」で⽥植踊りを披露する予定です。
保存会の方から踊りを教わる(2022年8月) |
泉キャンパスで自主練習(2022年9月) |
地元の祭で保存会の方に交じり田植踊りを披露(2023年11月) |
プロジェクト立ち上げのきっかけとなった今野さんは浪江町出身で、地元の芸能を残したいと考えて本学歴史学科に進学。内堀知事から「8年過ごした故郷で13年ぶりに踊れて何を感じましたか」と聞かれると、「幼少期お世話になった地元の方と久しぶりに会えてうれしかったです。自分にとって最も大切な場所で多くの関係者と舞台に立てて感無量でした」と喜びを口にしていました。報告会後、プロジェクトについて「当初は関心を寄せてくれる人は少ないと考えていましたが、大勢の学生が興味を持って熱心に取り組んでくれています」と話した今野さんは、全員の熱意が保存会の人たちにも伝わり活動が継続できたと実感。今後に向けては「保存会の継承支援を続け次の世代へバトンがつなげられれば」と意気込んでいます。
プロジェクトの副代表を務めた仙台市出身の佐久間さん。内堀知事とのやり取りで「地元の伝統芸能に”よそ者”が参加するという後ろめたさがありましたが、保存会の皆さんの熱意を受け自分で壁を作っていたと感じました」と参加した当時を振り返りつつ「現在は保存会の会長から『学生たちもメンバーだ』と言ってもらえるほどになり感極まっています」と心境の変化を伝えました。佐久間さんは報告会の後、昨年10月に津島地区で行われた標葉(しねは)祭りで、同地区では震災後初となる田植踊りを披露したことが印象的だったといい、「南津島の方々にとっての宝である田植踊りを貴重な瞬間に共有していただけたことがうれしかったです。今後は南津島の芸能の姿と保存会の方々の思いをつなぐ一助となるよう一層精進していきたいです」と語ってくれました。
金子ゼミでは今後、学生たちがボランティアの踊り手になるだけでなく、現在進めている「芸能を核にした地域の記録作成」の取り組みや、伝統芸能の情報を分かりやすく発信する活動にも力を入れていく予定です。
【関連リンク】
大学生と集落の協働による地域活性化事業(福島県HP)