東北学院大学

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年頭所感-大西晴樹院長・学長-

2026年01月05日

「連携」教育・研究の大切さ

 
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院長・学長 大西晴樹
 

 

 昨年の東北学院大学の大学祭のテーマは「LINK」でした。大学祭実行委員会の若い感性がこの言葉を選んだように、私も新年を迎え、「連携」教育・研究の大切さを実感しています。

 21世紀に入り、大学の位置付けが変化しました。20世紀の大学は、いわば「自己完結型」の大学でした。大学は、卒業生という出口を通じて社会とリンクしていればよかった。むしろ、社会と切り離されていた方が、「象牙の塔」という言葉が象徴しているように高等教育機関としての威厳が保たれていました。しかし、大学進学率が50パーセントを超え、大学がもはやエリート集団のものでなくなり、高度知識基盤社会が深まるにつれ、社会における大学の役割、すなわち、大学の「連携」教育・研究が注目されるようになってきました。

 本学の近年の変化もこの傾向を示しています。2011年の東日本大震災を機に、本学に災害ボランティアステーションが開設され、本学の学生は学外のボランティアセンターと連携して活動を開始しました。2013年に、学生が大学在学中に地域の企業において職業体験をするインターンシップが導入され、就職部は就職キャリア支援部に組織変更し、就職のみならず、企業と連携したインターンシップの支援も業務に加わりました。

 2014年に本学が文部科学省の「地(知)の拠点整備事業」に採択されました。文字通り、大学が「地域の拠点」「知識の拠点」として地域発展の担い手となる事業でした。本学は宮城県における唯一の採択校として、「地域共生教育による持続的な『ひと』づくり、『まち』づくり」を事業名に掲げ、地域と強く連携するようになりました。その後、この事業に地方創生推進事業(COC+)が加わり、助成期間が終了する2019年まで、本学は、地方創生の中核的人材育成、学生の地元定着の促進、地域と大学の連携強化の拠点大学の役割を果たしました。その結果、「地(知)の拠点」事業を担当していた学長室から2020年にスピンアウトする形で地域連携課が生まれ、五橋キャンパス開学の2023年に本学は、地域総合学部を開設、地下鉄の駅から一番近い本学シュネーダー記念館一階に「未来の扉センター」を開きました。

 しかし、学外との連携は地域だけとは限りません。本学にはこのところ、高大連携、産官学連携の企画が次々と持ち込まれるようになりました。高大連携でいえば、東北学院高等学校、東北学院榴ケ岡高等学校という両設置学校との連携は強い絆で構築されています。その他の高校においても専門知識をもつ本学教員が探究学習を教えるケースが増え、設置学校以外の私立・公立高等学校との連携も求められています。昨年は、聖ウルスラ学院英智高等学校、中新田高等学校と連携協定を結びましたが、中新田高等学校とは、本学、そして高等学校の所在地である加美町との三者連携でありました。今後受験生が増大することが見込まれる総合型選抜入試から勉学意欲のある生徒に入学してもらうためには、高大連携の重要性は増すばかりなのです。

 産官学連携は、技術系の工学部において企業との間に産学連携という形で推進されてきました。ところが、近年では官である国や自治体から、スタートアップやアントレプレナーシップ(起業家)教育の要請が本学に求められています。一昨年、東北大学を主幹校とする東北地方の国公立大学のプラットフォームMASPから、私立の2校、本学と東北芸術工科大学に加盟の要請があり、テック型イノベーションの分野ですが、本学もMASPに加盟しました。また社会科学系のソーシャル型イノベーションの分野では、仙台市からも助成事業に応募することが求められており、企業や銀行を巻き込んだ産官学金の連携によって、大学発のスタートアップの実現が求められています。昨年、東北の企業に多くの人材を輩出している東北学院の利点を生かして、大学、2つの設置校を含む学校法人として、アントレプレナーシップ教育体制の整備に着手しました。

 新年を迎えて、「連携」教育・研究をどのように進めるか苦慮するところであります。そのような時、東北学院「中興の祖」であるシュネーダー院長がキリスト教学校の設備について述べた一節は大いなる励ましを与えてくれます。「大半の官立学校の施設においてはまったく目にすることのない校舎や教室もいくつかあるとよい。これらのうちの1つはYMCAを含め、社会性を高めるためのあらゆる目的に用いられる社交的な校舎、あるいは教室である。このような設備は学校における友愛や団結の精神を養う上で、計り知れないほど価値ある助けとなる」(「日本のキリスト教教育総合的方針」1918年)。ここでいう「官立学校の施設」という言葉は、本学以上に先進的な試みをしている国公立大学はいくつもあり語弊がありますので、20世紀の「自己完結型」の大学という言葉に置き換えると分かりやすいと思います。シュネーダー先生は100年以上も前から先見の明をもち、「連携」教育・研究の大切さを見抜いていたのです。