英文学科で学ぶとは 英文学科長 豊島 孝之 いわゆる「英語」を専門とする学科やコースは、医療・体育・工業等の単科大学でない限りほぼどの大学にもありますが、「英語の東北学院」として知られる本学の英語教育は、前身の仙台神学校での神学との二本柱として本学の中核をなしてきました。140年近くを経た現在も英文学科がその伝統を引き継いでいます。卒業生は県内外の教育関係、英語力を生かした航空・旅行業界のみならず、グローバル展開する企業から地域に根ざした企業まで、多種多様な業種に人材を輩出してきています。 英文学科の教育理念・目的は、「国際語としての地位にある英語の運用能力の涵養をはかるとともに、他文化・他者性に対して鋭敏な感覚を育むことで、多元的な文化に寛容な真の国際人を育成する」ことにあります。英文学科では、「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能を、4年間で段階的に高めるカリキュラムを用意しています。他大学では英語運用スキル上達のための科目は、2年次までで終わってしまう場合が多いようですが、4年間を通じて英語力を高めるカリキュラムが組まれているのは東北学院大学英文学科の特徴です。 携帯型翻訳機や人工知能がこれほど発展してきた現代では、単なる英語運用技能が必要な仕事などは今後置き換えられていくでしょう。しかしながら、英語とは単なる表面的なコミュニケーションの道具ではありません。上述の教育理念・目的の後半にある「他文化・他者性に対して鋭敏な感覚を育むことで、多元的な文化に寛容な真の国際人を育成する」ために国際語としての英語の成り立ちや、その背景にある文化を深く学べる2つの専門分野カリキュラムを英文学科では整えています。英米文学分野では、英米を中心に英語で書かれた詩・演劇・小説など文学作品をとおして、言葉の壁を超えた考え方の異なる多様な他文化・他者性に対して鋭敏な感覚を育みます。英語学分野では、英語そのものを研究対象として、英語の歴史的変遷から英語の発音に関わる特徴や英語を含む言語の一般的特性、人間だけが持つ言語能力を研究します。 英文学科では英語教員免許をはじめ、博物館学芸員や図書館司書など、さまざまな資格を取得することもでき、また正課に加え、さまざまな海外留学制度や、ボランティア活動など、視野を広げる多くの活動に参加できる機会も用意しています。 大学で教えていると、専門分野について「何の役に立つのですか?」というような質問を受けることがよくあります。皆さんも英文学科を志望される時、周りから同じような質問を受けるのではないでしょうか。英語が好きだから?英語の何が好きですか? はっきり申しまして、人文学分野の学問は、現代の経済功利に基づく近視眼的な見方からは直ぐには何の役にも立ちません。では7世紀の古英語から続く英文学が何故今でも読まれ、また最近目覚ましい発展を遂げている人工知能の背景にある言語分析はどうなっているのでしょうか。医療、法律、経済、テクノロジーなどは生活を豊かにするでしょうが、「豊かな人生」とはどのようなものでしょうか。文学や芸術、あるいは思想や哲学は人間が生きる意義を照らすものです。英文学科ではその一助となる学びを提供しています。