東北学院大学

学長の部屋

2022年度入学式告辞

本日ここに、2022年度入学式を挙行するにあたり、2,862名の新入生の皆様に心よりお祝いを申し上げます。また保護者の皆様のお喜びはいかばかりかとお察し申し上げます。残念ながら、新型コロナウイルス感染症拡大防止のために、来賓、保護者の出席をご遠慮していただき、新入生だけの出席のうえ、ディスタンスをとるために、キャンパスごとに分けて挙行していることをお断りしなければなりません。

本日、入学される皆さんは、それぞれに高校での学びを終え、今年は多くの受験生を数えましたが、選ばれて入学の権利を勝ち取られ、東北学院大学の学生になりました。皆さんをお迎えする大学としてはこのうえない喜びであります。私たちは皆さんを一人ひとりかけがえのない人格として尊重し、受け入れ、これから卒業までの4年間、全力で支えていくことをお約束します。

東北学院大学は、6つの学部と、6つの大学院研究科、学生総数11,000名を擁する東北・北海道地区最大の私立総合大学であります。ここ仙台の地で、1886(明治19)年、日本で最初のプロテスタント教会の一員となった押川方義、その押川を支えて本学院設立に尽力したアメリカ人宣教師ウィリアム・ホーイによって、仙台神学校として、最初は2名の教師、6人の学生からスタートしました。今年、設立136年目を迎えます。仙台神学校は5年ほどで、東北学院(North Japan College)と名前を変え、ホーイの後継者であるデイヴィッド・シュネーダー宣教師の下で発展し、1949年に大学となり、今日に至っています。創立以来、東北学院は総計20万人の卒業生を送り出してきました。仙台で、東北で、それのみならず、世界各地で、あらゆる職場で、また家庭で良き働きをなしています。

まず本学の教育理念の基盤、これを「建学の精神」といいますが、それは、キリスト教による人格教育であります。学則第一条には、「東北学院大学は、キリスト教による人格教育を基礎として、広く知識を授けるとともに深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させ、もって世界文化の創造と人類の福祉に寄与することを目的とする」と記しています。私たちは、この建学の精神を、LIFE LIGHT LOVEというスクールモットーとして説明しています。これは、東北学院の卒業生の間で、長い間親しまれている言葉であります。LIFE(いのち)とは、他者の命と人格を自分と同じように大切すること(個人の尊厳)、LIGHT(ひかり)とは、学問や科学、部活の成果によって他者を明るく照らすこと(社会貢献)、LOVE(あい)とは、自分が愛するだけでなく他者からも愛されるようになること(隣人愛)を意味しています。

この建学の精神によって、大学の3つのキャンパスでは、現在はコロナ禍により制約を受けており、週に1度10時台に、短くではありますが礼拝が行われています。心を落ち着かせ、静謐な環境の礼拝堂で、パイプオルガンの音色の下、ステンドグラスからの光を仰ぎ見、聖書を読み、聖書に基づくメッセージを聴き、学院の根幹の精神を知ってほしいと思います。

さて、皆さんがこれから大学で学び、生きていく時代は、「危機の時代」です。地球温暖化による気候変動、それと連動するかのように登場した新型コロナウイルス感染症の拡大、今度は、武力による国際秩序の破壊活動としてのロシアによるウクライナへの軍事侵攻、そして核兵器使用への誘惑。人類は、いま「危機の時代」に直面し、この危機を乗り越えなければ、希望ある未来を描くことができないというボトルネックに差し掛かっているのです。

人類はこれまで、いく度となく「危機の時代」を迎えてきましたが、過去の経験を学び、英知を結集しながら、その危機を乗り越えてきました。今日の問題でいうなら、温暖化に対しては、温室効果ガスであるCO2の発生を抑えるためのカーボンニュートラルの促進を、感染症に対してはウイルスの拡散を抑えるためのワクチン接種を、そして戦争や核兵器の使用に対しては、和平のための取り組みや経済制裁を通じて、危機を乗り越えようとしているのです。皆さんがこれから入学する東北学院大学は、総合大学として、文学部、経済学部、経営学部、法学部、工学部、教養学部という6学部と優秀な教授陣を備えており、「危機」を打開するための学問と科学技術を学べる宝の山です。人類が直面している危機を打開できるかどうかは、新入生の皆さんの意欲にかかっているといっても過言ではありません。

それともうひとつ。「ピンチはチャンス」という言葉があります。この30年間の「情報革命」といわれる通信技術の飛躍的向上とそれに伴う地球一体化により、皆さんのスマホを見れば分かるように、例えば、SNSによって、人類の動向に大きな影響力を与えることが出来るようになってきました。大量データを瞬時に運ぶ5G(第5世代移動通信システム)やすべてのモノに知性を宿らせるIoT(Internet of Things)によって、生産、消費の大量化、加速化が急激な勢いて進展しつつあります。外国語、AI(人工知能)やデータ・サイエンスを学ぶことにより、フラット(平坦)、ファスト(迅速)、スマート(高性能)な時代において活躍できる可能性を皆さんは秘めているのです。専門的知識を活かし、語学を駆使し、インターネットを自在に操る力を身につけて、「危機の時代」を堂々と乗り越えていってもらいたいと思います。

東北学院大学は創立150周年にむけて作成された中長期計画TG GRAND VISION 150「ゆたかに学び、地域へ世界へ」の合言葉のもとに現在、三つの、大きな変革をなそうとしています。

第一は、情報機器の利活用、デジタルトランスフォーメーションへの対応です。本学は昨年度からBYOD(Bring Your Own Device)すなわち、PC端末必携を実施しており、遠隔授業でのPCの使用はもちろん、今年度末からは皆さんの「学修成果」(learning outcomes)が可視化できるようにe-Portfolio「TGfolio」を導入します。それによって、大学の卒業要件や皆さんの目標は何であり、皆さんはどの程度それを身に付けることができたかを、PCで一目瞭然に分かるようになります。こうして大学生活においてPCは学修のための「羅針盤」として必須のアイテムとなります。

第二は、コロナ禍で制限されていますが、「主体的学修」(active learning)の機会の増大です。東日本大震災以降、本学では、地域について学ぶ授業を積極的に推奨しています。大学の授業はなにも教科書を読み、教室で行われる授業だけではありません。実際に地域に足を運び、見聞きし、調査して考え、厳しく評価し合うような、問題解決型の授業があります。そのために、東北学院大学は、ホーイ記念館に最新のITメディア設備を備えたラーニングコモンズという学びの施設を用意しています。主体的学修という意味では正課ではありませんが、11年前の東日本大震災以来、本学の災害ボランティアステーションは、全国の大学ボランティア活動のキーステーションとなって活躍しています。どうぞボランティアに参加して、地域の人々と交わり、視野を広げ、自分は何をしたら世のため、人のために喜ばれるのかを判断できる能力を身に付けてください。本学はまた、建学の精神で謳われている人格形成にとって大切な体育会、文化団体、サークル等の課外活動も大切にしています。どこかのクラブやサークルに属し、大学での居場所を早めに確保してください。

第三は、来年に迫った新キャンパスの供用です。1年間だけ皆さんは、泉と多賀城のキャンパスに分かれて学びますが、泉の学生も、多賀城の学生も、1年後には、土樋・五橋の都心型ワンキャンパスに集合することになります。その時には、いわば3つの東北学院大学が、仙台の街中において、一つとなる未来の東北学院を皆さんは味わうはずです。

さて、今日から大学生としての4年間の学びがスタートします。皆さんは、日本の、いや世界の大学一年生と肩を並べ、同じスタートラインに立ったわけであります。受験勉強から解き放たれた皆さんは、大学生の4年間は高校生の3年間より長いということに思いを巡らせるべきです。4年間の大学での学びが皆さんの将来の「伸びしろ」を確実に用意します。もちろん大学はサポートを惜しみませんが、未来は、皆さんの学修意欲次第で決まるといっても言い過ぎではありません。

最後に聖書の有名な言葉を贈ります。「求めなさい。そうすれば、与えられる。…門をたたきなさい。そうすれば、開かれる」(マタイによる福音書7章7節)。「さぁ、ここからだ」。ご入学おめでとうございます。

2022年4月5日
東北学院大学 学長 大西 晴樹