東北学院大学

学長の部屋

2024年度入学式告辞

本日ここに、2024年度入学式を挙行するにあたり、新入生の皆様に心よりお祝いを申し上げます。また保護者の皆様の喜びはいかばかりかとお察し申しあげます。昨年度から開学した五橋キャンパス押川記念ホールに皆さんを迎え入れることができ、本当に喜ばしい日となりました。

皆さんは、それぞれに高校での学びを終え、選ばれて入学の権利を勝ち取られ、東北学院大学の学生になりました。私たちは皆さんを一人ひとりかけがえのない人格として尊重し、受け入れ、これから卒業までの4年間、全力で支えていくことをお約束します。

東北学院大学は、9つの学部と、6つの大学院研究科、学生総数11,000名を擁する東北・北海道地区最大の私立総合大学であります。日本で最初のプロテスタント教会の一員となった押川方義、その押川を支えて学院設立に尽力したアメリカ人宣教師ウィリアム・ホーイによって、1886(明治19)年、仙台神学校として、最初は2名の教師、6人の学生からスタートし、今年で創立138周年を迎えます。仙台神学校は5年ほどで、「東北学院」(North Japan College)と名前を変え、ホーイの後継者であるデイヴィッド・シュネーダー宣教師の下で発展し、1949年に大学となり、今日に至っています。創立以来、総計20万人を越える卒業生を送り出してきました。

まず本学の教育理念の基盤、これを「建学の精神」といいますが、それは、キリスト教による人格教育であります。私たちは、この建学の精神を、LIFE LIGHT LOVEというスクールモットーとして説明しています。これは、東北学院の卒業生の間で、長い間親しまれている言葉であります。LIFE(いのち)とは、他者の命と人格を自分と同じように大切にすること(個人の尊厳)、LIGHT(ひかり)とは、学問や科学、部活の成果によって他者を明るく照らすこと(社会貢献)、LOVE(あい)とは、自分が愛するだけでなく他者からも愛されるようになること(隣人愛)を意味しています。

この建学の精神によって、五橋と土樋にあるキャンパスでは、毎日10時20分からこの押川記念ホールとラーハウザー記念東北学院礼拝堂において大学礼拝が行われています。心を落ち着かせ、静謐で厳粛な大学礼拝に出席して、パイプオルガンの音色の下、聖書を読み、聖書に基づくメッセージを聴き、学院の根幹の精神を知り、自分とは何者か、隣人とどう向き合うべきかを考えてほしいと思います。

ところで、皆さんがこれから学ぶ大学と、これまで学んできた高校の違いは何でしょうか。高校の勉強には教科書があり、教科書通りその正解を覚えていれば、大学という次の進路が約束されています。しかし、大学卒業後には、約束された次の進路はありません。大学を卒業すれば、あとは死ぬまで自分の力、すなわち、実力で生きていかなければならない市民社会が待っているだけです。皆さんは大学における4年間で、生涯をよりよく生きていくための知識や技術を身につけなければならないのです。

そのため、勉学の仕方が違います。高校時代は先生や教科書から習うという受動的な勉学態度を意味するのに対して、大学においては、学生自らが、どれほど力を身につけることができるかという、より主体的な勉学態度が求められるのです。よく大学なんて卒業できさえすればいいのだという人がいますが、大きな間違いです。もうそんな時代ではありません。学卒なんて山ほどいます。そのような人は、将来発揮すべき実力を身につけずに丸腰しで市民社会に出ていくようなものです。

では、実力を身につけるにはどうしたらいいのでしょうか。東北学院大学は、以下の3つの新しい学びの仕組みを用意しました。

第一は、現代の「読み書きそろばん」と言われているデータサイエンスです。ご存じのように、大量データを高速で運ぶSociety5.0やChatGPTに代表される対話型生成AIの出現によって、急激な世界の変化が「暴走列車」のような勢いで進展しつつあります。皆さんは、AIを駆使し、またコンピュータが残す膨大なデータから価値創造をしていかなければなりません。私は、文系で数学受験ではないから、そのような仕組が分からなくていいということでは済まされなくなってきているのです。データサイエンスの学びの入り口として、全学生が履修できるTGベーシックに「統計的思考の基礎」という科目を選択必修科目として配置しました。情報学が専門の先生方が文系の学生のためにわかりやすく説明してくれます。「文理融合」の総合大学の強みです。

第二は、アクティブラーニングです。皆さんは高校時代に「総合的な探究の時間」を履修したと思います。現代社会は、複雑なメカニズムから構成されていて、例えば、法学なら法学、工学なら工学という単一の学問だけでは、課題解決はできません。そこで、アクティブラーニングという主体的な学修方法が求められます。全学生が履修できるTGベーシックの「課題探求」という科目群は、キャリア、地域、ボランティアなどの課題について、問題解決のための方法を学び、実際に調査して考え、異なる学部の学生が厳しく評価し合うような問題解決型の授業であり、さらには少人数のゼミまで配置しました。学部が異なればこんな見方もできるのかとお互いに切磋琢磨してほしいのです。そのために、大学は、土樋のホーイ記念館に、五橋のシュネーダー記念館の図書館に、日本でも有数のアクティブラーニングの施設を用意しています。

第三は、eポートフォリオといわれる「TG-folio」の活用です。「TG-folio」は、学生たちが自分の学修成果を振り返り、目標に対して能力をどれぐらい身につけたかをパソコンで確認することができる仕組みです。就活といわれる就職活動の際には、そこから「ディプロマサプリメント」といわれる証明書をダウンロードして、それを求人先に見せることになります。そこには、学業成績のみならず、体育会・文化団体連合・サークルなどの課外活動、外国語外部試験のスコア、留学やボランティア、今年度から始まりますが、学内でのピアサポート経験などが記載され、証明されるようになります。「TG-folio」を活用して、自分の目標を見失うことなく、学生生活を送ってほしいのです。

さあ、今日から大学の一員です。東北学院大学も新しくなりますが、皆さんも新しくなります。自分の目標をしっかり立てて、体育会や文連、サークル、ボランティア、ピアサポートに居場所を求めて友人を作り、通学に便利で、仙台の街中に最も近いアーバン・キャンパスのメリットを最大限に活かし、充実した大学生生活を送ってください。

最後に、聖書の有名な言葉を贈ります。「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。叩きなさい。そうすれば、開かれる」(マタイによる福音書7章7節)。ご入学おめでとうございます。

2024年4月3日
東北学院大学 学長 大西 晴樹