東北学院大学

学長の部屋

2022年度
大学院第2学期入学式告辞

本日ここに、2022年度大学院第2学期入学式を挙行するにあたり、工学研究科機械工学専攻博士前期課程2名の新入生の皆さんに心よりお祝いを申し上げます。また保護者の皆さまのお喜びはいかばかりかとお察し申し上げます。

本日、入学される皆さんは、大学早期卒業制度によって、大学院工学研究科博士前期課程への入学が許されました。大学入学時より大学院入学という目標を掲げ、真摯に学部の教育課程で学んだ事が評価されての入学だと思います。大学院に入ったからには、研究を志す者として研究や実験に打ち込み、より評価の高い論文や、修士論文の執筆に打ち込んでもらいたいと思います。

時あたかも、皆さんは、来年4月からの五橋キャンパスの供用開始直前の大学院入学となります。他の多くの院生仲間は、大学院入学から五橋の研究棟での学びを開始しますが、皆さんは上級生に交じって、研究室の引越しを手伝い、おそらく、多賀城の大学院時代を経験する最後の院生として、東北学院の歴史にその名をとどめることになるのではないでしょうか。

東北学院大学の大学院は、現在、土樋に文学、経済学、経営学、法学という4つの文系の研究科、泉キャンパスに人間情報学という文理融合の研究科、そして多賀城キャンパスに工学研究科という理系の研究科合計6研究科に11専攻を擁しています。来年4月からは、五橋キャンパスに工学研究科と人間情報学研究科が配置され、土樋・五橋キャンパスが距離的に近いというだけではなく、大学院レベルの研究においても文理融合の時代を迎えるといっても過言ではありません。事実、文理融合の象徴となるデータサイエンス研究所は、全学や地域に開かれた研究所としての役割が期待され、その場所も工学部が入る研究棟の5階に開設される予定です。皆さんも専門の研究に、文理融合の要素も加えながら、総合大学における工学研究科のメリットを活かしてもらいたいと考えています。

さて、研究者を志す皆さんに、ちょうど100年前のドイツにおいて学問とは何かを講演したマックス・ヴェーバーの『職業としての学問』から、2つの教えを紹介したいと思います。

第一は、学問に終わりはないという事です。たとえ皆さんが立派な修士論文を提出したとしても、これは新しい問題提起をしたにすぎず、他人の仕事によって打ち破られ、時代遅れになるという運命を自ら引き受けることを意味するという事です。学問や研究を志す者は最初からそのような宿命を受け入れる者でなくてはなりません。

第二は、科学は、技術を向上させ、分析、予測をすることを可能とするが、世界の意味を人間に教えたり、価値を示したりはしないということです。世界の意味を教えたり、価値を示したりすることは、科学によってではなく、各自の世界観や価値観にもとづく判断力によるということを忘れてはなりません。

この点において、皆さんには、本学の「建学の精神」、すなわち、キリスト教による人格教育を大切にしてほしいと思います。本学の学則第一条には、「東北学院大学は、キリスト教による人格教育を基礎として、広く知識を授けるとともに深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させ、もって世界文化の創造と人類の福祉に寄与することを目的とする」と記しています。

東北学院はこの「建学の精神」を、LIFE LIGHT LOVEというスクールモットーとして説明してきました。これは、東北学院の卒業生の間で、長い間親しまれている言葉であります。LIFE(いのち)とは、他者の命と人格を自分と同じように大切すること(個人の尊厳)。LIGHT(ひかり)とは、学問や科学の成果によって他者を明るく照らすこと(社会貢献)。LOVE(あい)とは、自分が愛するだけでなく他者からも愛されるようになること(隣人愛)を意味しています。

本日、大学院に入学された皆さんが研究に励みながら、このような価値観を身につけ、東北学院大学を、新しい研究の拠点としてくださることを願って、学長からのお祝いの言葉とさせていただきます。

最後に聖書の有名な言葉を贈ります。「主を畏れることは知識の初め」である(箴言1章7節)。

2022年9月30日
東北学院大学 学長 大西 晴樹