東北学院大学

東日本大震災 東北学院1年の記録

学長メッセージ

卒業生への学長からのメッセージ

 平成23年3月24日に予定されておりました大学院学位記授与式、大学卒業証書・学位記授与式は、このたびの東北・関東大震災(注:後に東日本大震災と改められた)のため中止という苦渋の判断をしなければなりませんでした。晴れの式典を挙行し、心からのお祝いを申し上げることが出来ませんでしたので、ここに、新たな旅立ちにあたってのはなむけの言葉をお贈りし、お祝いのことばといたしたいと思います。また、学位記については、別途郵送させていただきますことをお伝えいたします。

 3月11日の大震災以来、教職員一同が全力を挙げて学生諸君12,217名の安否確認を行なってまいりました。3月25日14時30分現在で、11,925名(97.6%)までの確認を済ませております。その中には犠牲になられた方も判明しております。心から哀悼の意を表し、天国での平安をお祈り申し上げます。

 このような大震災に遭遇した卒業生の皆さんにおかれましても今後の歩みについて大きな戸惑い、不安がつのることと思いますが、これまでの東北学院大学の礼拝で心に響いた讃美歌や聖書に関連した多くの言葉を思い起こし、心豊かな人生を歩んでいただきたいと願っております。

 ここでは、20世紀を代表する神学者ラインホルト・ニーバーの祈りの言葉をお贈りしたいと思います。原文は英語です。

Oh God, Give us

SERENITY to accept what can not be changed,

COURAGE to change what should be changed, and

WISDOM to distinguish the one from the other,

Amen !

日本語に直せば次のようになります。

「神よ、 変えることのできないものについては、

それを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ。

変えるべきものについては、

それを変えるだけの勇気を与えたまえ、

そして、変えるべきものと、

変えることのできないものとを識別する知恵を与えたまえ」

 ここで、SERENITYは、日本語訳にありますように「冷静さ」を意味します。COURAGEは、「勇気」、また、 WISDOMは、識別する「知恵」の意味です。

 実際、我々の人生においては、我々の知恵や努力によってできること、また、できないことが複雑に交錯しております。まさに今回のような大震災による自宅の倒壊や流失、最愛の肉親の死去などの事態に我々は冷静さを保つことさえ難しくなっています。今後の復興についても、想像を絶する困難が伴うと思われます。また、皆さんがこれから直面する新しい環境での仕事においても多くの困難が予想されます。

 しかし、このような状況にもかかわらず、皆さんには、周囲にいる多くの友人、知人などと知恵を結集することによって解決できることがあると、私は確信しています。このときに本当に重要なのは、対象になっている現実の事柄が、自分らの努力によって克服できるものなのかどうかを見極め、識別する「知恵」であると思います。そして、それを、自分の能力だけに頼り解決しようとするのではなく、「全能の主たる神様」からの知恵、いいかえれば、聖書に示されている言葉に導かれることによって、多くの問題が解決されることを信じた人生を歩むということです。

 それが、最も確かで豊かな人生を約束してくれることであると信じます。まさに、皆さんは東北学院大学に在籍中、このようなものの考え方をすることを学んだのではないでしょうか? そして、皆さんの心の中には、すでに無意識のうちに備わっていることと言っても良いでしょう。

 東北学院の教職員そして15万人を超える卒業生諸氏が皆さんのこれからの人生を応援しています。卒業生諸君の今後の歩みが豊かで、神様の御守りの中で充実したものであることを心から願い学長からのメッセージといたします。

平成23(2011)年3月25日
東北学院大学 学長 星宮 望