東北学院大学

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平河内健治理事長 復興に向けたメッセージ

2011年04月19日

 皆さんお早うございます。本日は全学集会にお集まりをいただき、有難うございます。 一言、このたびの3.11東日本大震災に関連して、御礼のご挨拶とお願いを申し上げます。
 
 東日本大震災においては、大学教職員の皆様には迅速な避難誘導と避難所設定、災害対策本部や部署の立ち上げ、安否確認と建物の安全確認など危険の最中(さなか)にあっても陣頭指揮と業務遂行に冷静沈着そして献身的に従事していただき、また、自宅に帰れない学生教職員の学内での避難生活を守り、安否確認を適切に行い、命をまもる使命を全うしてくださったことに、心より感謝申し上げます。管理部門と教学部門が一致団結して事に当たっていただいたことを誇りに想います。今は授業再開に向けての様々な計画とその実行に懸命な努力をしてくださっていることに対して、心より感謝を申し上げます。

 多賀城キャンパスでは、礼拝堂を避難所として提供し、災害支援車両の基地としても利用していただきましたが、多賀城教職員と応援職員が被災者でありながらも被災者に手を差し伸べるご奉仕の業にも合わせて従事くださり、建学の愛の精神を大いに発揮してくださったことにも敬意を表したいと思います。隣接する幼稚園児の避難場所としても提供くださり、また小さい命のケアをしていただき、誠に有難うございました。

 残念ながら、大学生3名が津波の犠牲になったことが判明しております。行方不明者も2名おります。大学教職員の家族の皆様の中にも災害の犠牲者がおられます。また、避難所生活を余儀なくされた方、家を失った方もおられます。衷心より、お悔やみとお見舞いを申し上げます。
 
 想定外の広域に渡る大規模な被災に、かの地この地で遭遇し、それぞれ固有の非日常生活を強いられ、悲しさ、悔しさ、切なさ、辛(つら)さ、申し訳なさ、もどかしさ、苛立ち、怒り、歯がゆさを皆様それぞれが感じておられることと想います。余震の怯えもあります。原発事故による放射性物質の拡散の不安も重なっております。

 このような時に、「こらえる」ことも、気持ちを強く持ち踏ん張ることも大事ですが、共に「涙を流す」こともまた大事なことかと想います。時が経つにつれ、重々しさが増してまいります。私自身も親しくしていた知人が犠牲になったことを聞く度に、胸がずしんと突かれ、重くなります。悲しみと涙の中で、互いにいたわり合い、思いやり合い、祈り合い、復興への希望を抱き、悲しみと辛さの中でも「出会いのよき思い出」を呼び起こし、それを「心の避難所」にして、命をつないで参りたいと思います。

 幸い、少しずつではありますが、心のゆとりと生活の改善が見られます。しかし、その分、不満や欲求も強くなってまいります。学生や保護者、そして、共に働く同僚同士の言い分も、これまで我慢していた部分が露骨になるかもしれません。それらを丁寧に聞く耳をお互いに持ちたいと思います。
 
 いかなる慰めの言葉も失っている今、私たちができることは、聖書の言葉に耳を傾けることしかありません。聖書には、次のような力強いメッセージが記されています。「あなたがたを襲った試練で、人間として耐えられないようなものはなかったはずです。神は真実な方です。あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、試練と共に、それに耐えられるよう、逃れる道をも備えてくださいます」(コリント信徒への手紙一、第10章13節)。

 また、聖書は次のようにも述べます。「主は愛する者を鍛え、子として受け入れるものを皆、鞭打たれる」(ヘブライ人への手紙、第12章6節)。NHK英語会話の人気講師で50歳を過ぎてから病気や娘さんの統合失調症発症や家庭不和の大変な試練を経た後にクリスチャンになられた東後勝明氏は『あなたはあなたでいい─あとはイエスにゆだねて』という著書の中で、「心の筋肉を鍛える」と表現しております。

 今こそ、「慈愛に満ち、慰めを豊かにしてくださる」(コリント二第1章3節)神の愛の中で与えられたかけがいのない「命」を信じ、大切にし、闇を照らす希望の「光」を輝かし、創意工夫をなし、知恵を発揮し、思いやりと「愛」をもって、心の筋肉を鍛えながら、復興の業に励んで参りたいと思います。

 理事会は常務理事会で復興に向けた基本方針を定め、また、常務理事を中心にした震災復興委員会を立ち上げました。基本方針に添って、施設設備の復旧に関する事項と被災学生生徒園児の修学に関する経済的支援事項、そして、被災教職員に対する経済的事項の三点を主要課題として具体的な施策を迅速に定めてゆくことにいたしました。何よりも、学生生徒諸君の教育環境を整えることが優先いたします。通学のための公共交通手段が一日も早く回復し、修理も整い、入学オリエンテーション、授業再開に間に合うことを期待しております。その中で、仙台市地下鉄が4月29日に全線復旧のニュースは朗報であります。東北本線全線復旧や仙石線の東塩釜までへの復旧が待たれます。

 しかし、本院本学の復興のためには、財政計画の抜本的変更をせざるを得ません。国の補助にも依存せざるを得ません。国内外からの義捐金の口座も設定いたしました。しかし、自助努力が私学にとって、最も大切なことであります。基本方針に基づき、早速、施設関係支出を原則凍結し、支出を抑制する具体的な補正予算を財務担当常任理事と財務部を中心に検討しております。授業料も上げることは控えざるを得ないので、かなり、厳しいものになります。今後4年間で数十億円の復興費が必要であることが試算されております。小さな節約にしかならないかも知れませんが、とりあえず、理事長車には大型を用いず、小型を必要に応じて利用することにいたしました。皆様にもあらゆるところで我慢をしていただくことになるかと思います。

 しかし、そのような厳しい中にも希望があります。先週の土曜日の4月16日の東北学院榴ケ岡高等学校の入学式と翌17日の東北学院幼稚園卒園式に出席してまいりましたが、いずれも保護者の方の出席が例年になく多く、榴ケ岡礼拝堂は満席となり、幼稚園ホールは立見席で立錐の余地もありませんでした。保護者の方々の次代を担う若人と子ども達の未来にかける熱い想いを感じ取りました。若人と児童の歌声にも勇気付けられました。「情けは人の為ならず」と言いますが、私達の勤めも人の為ならず、自分の幸せの為にあります。大学での奉職も同じかと思います。学生さんから得られる力と幸せを噛み締めながら、希望をもって業務に励んでまいりたいと存じます。

 理事会は東北学院と地域の復興に努力を惜しむことなく、全力を尽くします。皆様には、東北学院の使命へのご理解とその実現のためのご協力に感謝し、なお一層のご協力とご援助をお願いいたします。 

 有難うございました。

平成23年(2011年)4月18日
東北学院 理事長 平河内 健治

>> 東北学院大学の復興に向けた全学の集い 開催報告