東北学院大学

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『牡鹿半島・海のくらしの風景展in石巻』開催報告

2014年11月21日

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 本学では東日本大震災以来、牡鹿半島の民具を中心とした文化財のレスキュー活動に携わってきました。活動4年目となる現在では、民具を救出・保全する段階から、民具にまつわるデータを蓄積してゆく段階へと移行しており、その活動の一環として、民具を被災地で展示し、学生が聞き書き調査をおこなっています。
 去る10月25日と26日、本学は石巻市にある宮城県慶長遣欧使節船ミュージアム(サンファン館)と共催し、館内でさまざまな企画をおこないました。
141121-1_03.jpg 民具を展示したコーナー「牡鹿半島のくらしを未来に伝えよう」では、来館者から民具にまつわる思い出について聞き書き調査をおこないつつ、併せて本学のこれまでの活動を紹介。今回で7回目を数える移動展示を通じて得られた昔のくらしのエピソードは、累計一千枚を超えています。これらのデータをいかに分析し被災地に還元してゆくかが今後の課題となっています。
 「牡鹿半島・海とくらしの風景」と題したギャラリー展示では、近代捕鯨基地として栄えた牡鹿半島・鮎川の古写真と捕鯨道具を展示し、学生が写真の解説と来館者からの聞き書きをおこないました。写真には昭和初期から中期にかけての鮎川の街並みや当時のくじら祭りの様子が写し出されており、これらの貴重な資料は学生が整理と調査を進めています。
141121-1_02.jpg 25日午後には「海と向き合う人々の民俗学」と題してシンポジウムを開催しました。小島孝夫氏(成城大学文芸学部・教授)の基調講演をはじめとして、海辺の人々のくらしについて調査してきた民俗学者4名が研究報告をおこないました。会場には津波で被災した三陸沿岸の博物館学芸員も多く来場しており、討論会ではフロアを巻き込んで「民俗学が一人ひとりの生き方に向き合うことの重要性」について、活発な議論が繰り広げられました。
 このように被災地での活動を継続してゆくなかで、地元の方々とのさまざまな交流が生まれてきています。今回展示した古写真は「鮎川の風景を思う会」(震災により仙台に移住した方々からなる会)から提供していただきました。また、学生は展示会をきっかけとして生まれた地域の人々との繋がりをもとに、各自の関心に基づいて民俗調査に取り組み始めています。文化財レスキューのメンバーは、過去の資料が牡鹿半島の今後を考えるうえでどのように活用できるのか、地域の人々とかかわり続けてゆくなかで、ともに考えてゆきたいと語っています。