東北学院大学

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「東日本大震災5年緊急シンポジウム 霊性を読み解く―タクシーの幽霊現象の反響と課題」開催報告

2016年03月07日

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 本学教養学部金菱清教授のゼミ生が、石巻市のタクシードライバーが体験した幽霊現象をまとめた論考集が『呼び覚まされる霊性の震災学—3.11生と死のはざまで(新曜社刊)』です。
 発行以来、国内のみならず海外においてもクローズアップされ、大きな反響を呼んでいることから、単なるオカルト話ではなく、人々が死に対してどのように向き合ってきたのか、死者とどのように向き合っていくべきかなどを論じる「東日本大震災5年緊急シンポジウム 霊性を読み解く―タクシーの幽霊現象の反響と課題」が2月24日、土樋キャンパスの押川記念ホールにおいて開催され多くのメディアを含む約150名の参加者が集いました。
160229-4_03.jpg 第一部での冒頭、佐々木俊三学長特別補佐は、本学が発行している『震災学』でも死者について議論していることや宗教の意味が問われていることなどに触れ、「大学がものを言う死者の領域を学問としてしっかり考えていることをお伝えし、160229-4_02.jpg皆さんと議論していきたいと思います」と聴衆に訴えました。
 金菱教授からは、あらためてシンポジウムの趣旨説明が行われ、続いて4名の報告者からそれぞれの活動から見た霊性についての報告が行われました。
160229-4_01.jpg まず初めに登壇した本学教養学部金菱ゼミ所属の工藤優花さんは、タクシードライバーをはじめとした石巻の幽霊現象200件以上の聞き取りを行った経緯を解説。最後に「大震災から前向きに復興へ挑んでいる方々、前を向き切れていない方々、そのどちらでもないグレーゾーンの方々もいます。私の調査は霊がいる・いないではなく、グレーゾーンの方々の心が霊的な現象に反映しているのではないかと思います」と締めくくりました。
160229-4_06.jpg 通大寺(栗原市)住職でありながら、移動式喫茶「カフェ・デ・モンク」のマスターとして被災地を回っている金田諦應氏は「動かなくなった心をどうやって動かそうかという目的のもと、被災地を回って傾聴活動を行っています。100人全員に効く薬はないので、一人ひとりの物語を聞き、寄り添うことで苦しんでいる人たちをこれからもケアしていきます」と語りました。
160229-4_07.jpg 仙台市の出版社、荒蝦夷の代表であり、東北をテーマにした本を数々手掛けてきた土方正志氏は「インターネットを通じて実話、創作を問わない、みちのく怪談コンテストを2010年から行っています。様々な作品を通して思うことは、幽霊が〈いる〉とか〈いない〉ではなく、いると感じた人にとってはいるのです」と、文学的な視点からの報告がありました。
160229-4_08.jpg 宗教学者で、東北大学大学院文学研究科の鈴木岩弓教授は「生きている人にとって死者は恐い存在。なぜなら我々は死んだことがないからです。わからない世界の話に対してどう考えたらいいのかという文化の問題として、霊的な話が出てくるのだと思います」と報告。
 第二部では登壇者全員によるパネルディスカッションが行われ、それぞれの調査・活動・研究に基づく議論が交わされ、シンポジウムは終了しました。

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160229-4_10.jpg 当日は22社もの報道関係者が関東・中部・甲信越や大阪、ブラジルからも来学しました。プログラム終了後の囲み取材では、工藤さんの他論考をまとめた4名の学生も加わり、今回のフィールドワークについて取材に応じました。シンポジウムの様子は当日のNHK仙台のニュースでも報じられ、その後国内のテレビ・新聞・雑誌でも続々と報じられています。
 本シンポジウムを主催した「東北学院大学 震災学編集検討委員会」では、今後も様々な角度から「霊性の問題」について調査・研究を行い、継続して報告会を行う予定です。次回は初夏を予定しておりますので、決定次第ホームページなどでご案内いたします。

【お願い】
今回の『呼び覚まされる霊性の震災学―3.11生と死のはざまで』で紹介されている、金菱ゼミ学生の卒論の紹介はしておりませんが、すでに上記書籍として出版されていますので、版元の新曜社へお問い合わせください。また、シンポジウムの冒頭でもお断りしました通り、本書の第1章にあります、タクシードライバーの紹介は致しかねます。同様にタクシードライバーへの取材はご遠慮いただいています。
現在、各地域でこうした取材が行われていると伝えられていますが、本学及び金菱ゼミでは一切情報公開しておりませんのでご承知くださいますようお願いいたします。
また、本書の論考をまとめた金菱ゼミ学生7名は、3月24日の卒業式を持って本学の学籍を離れます。その間の問い合わせにつきましては広報課が対応いたしますが、卒業後は上記書籍の出版社へお問い合わせください。