東北学院大学

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東北学院史資料センター主催 2018年度公開シンポジウム「戦後平和主義と鈴木義男」開催報告

2018年10月18日

 東北学院史資料センター主催2018年度公開シンポジウム「戦後平和主義と鈴木義男」が、9月29日に土樋キャンパス押川記念ホールにおいて開催されました。
 鈴木義男は、東北学院が輩出した弁護士・政治家であり、日本国憲法第9条に「平和」の文言を入れることを提唱した人物です。東北学院史資料センターでは、鈴木義男に関する資料の収集や研究を行っており、これまで過去3回にわたって鈴木義男に関するシンポジウムを実施してきました。
 4回目を迎えた今回は、NHK文化・福祉番組エグゼクティブ・プロデューサーの塩田純氏、日本大学非常勤講師の岡田一郎氏、本学教養学部言語文化学科准教授の松谷基和氏を講師にお招きして、鈴木義男の新たな一面を知る機会となりました。
 冒頭、松本宣郎理事長・学長は「今回のシンポジウムでは、鈴木義男に関する新しい情報を発信してくださる方々にお越しいただき、鈴木義男をキーワードに、人類にとって大事な平和の問題について皆さんと考えてみたいと思います」とあいさつしました。

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 続いて、総合司会を務めた東北学院史資料センター調査研究員の日野哲氏が講演者のプロフィールを紹介。主催者を代表して同調査研究員の齋藤誠氏が「日本国憲法の制定に深く携わった鈴木義男が東北学院の歴史の中で発見され、本格的に注目を浴びたのは今から10年以上前になります。今回のシンポジウムでは、戦後の鈴木義男という人物を広い視野から位置づけてみたいと思います」と開催趣旨を述べました。
 第1部の報告には、3名の講師にご登壇いただきました。初めに、「平和国家はこうして生まれた」と題して、昨年放送されたNHKスペシャル「憲法70年平和国家はこうして生まれた」を制作した塩田氏が登壇。「平和という言葉は、戦後初めて行われた帝国会議で昭和天皇が『平和国家を確立する』とおっしゃったことに始まり、戦後の新しい政党が憲法草案を作っていく中で平和国家を掲げたのは、鈴木がいた日本社会党だけでした」と述べました。そして、「後の社会党の主流は非武装中立となりますが、鈴木はもっと国際的な平和維持機構の中に日本を積極的に位置づけることで、戦後の日本の平和を守りたいと考えていたであろうことを今後も探っていきたい」と報告しました。
 続いて、岡田氏が「日本社会党史における鈴木義男」と題して講演。「鈴木は終戦後に第一党となった日本社会党で司法大臣に任命され、とりわけ司法制度改革において大きな成果をあげています。片山内閣から芦田内閣に代わっても、GHQからの特別な申し入れで再任とされるほど、鈴木は高く評価されていました」と紹介。その一方で、約20年にわたって社会党を研究している岡田氏でも、鈴木義男という人物は今回のシンポジウムでの講演を依頼されるまで「その名を聞いたことがなかった」と話し、その理由などについて「50年代以降の日本社会党の歴史を振り返ると、党内で主流となったのは左派であり、対して右派の中でも中間派の日労系が主流となったため、派閥の力学によって主流でない社会民衆党系の鈴木のことがあまり残されなかったのだと思います。90年代半ばには憲法制定における鈴木の役割にようやく光が当てられており、鈴木の足跡が今後明らかにされることを期待しています」と結びました。
 3人目は松谷氏が「米軍資料にみる仙台占領と鈴木義男」と題して講演。鈴木と同郷の福島県出身である他、学生時代に鈴木の孫にあたる油井大三郎氏の授業を履修していたことや韓国・東アジアに造詣が深い点など、鈴木との共通点が多々あると自己紹介しました。松谷氏は米国国立公文書館に収蔵されている資料の中から、「GHQが作成した鈴木義男のパーソナルファイルによると、鈴木は過去に戦争協力したり、軍国主義団体に属したこともなく、公職追放の対象外である、つまり、信頼できる人物だと見ていました。また、GHQ東北民事部のファイルには、戦争末期に東北航空専門学校工業に改称され、キリスト教の礼拝や活動が困難になっていた学院を、本来のミッションスクールの姿に復活させたいと考えていたことをうかがわせる資料もあった。これ以外にも、仙台でもGHQが現地の政治、社会、教育などに深く関与していたことを示す記録が残されており、興味深かった」と述べました。
 休憩を挟んだ第2部は、3名の講師と齋藤氏が進行役を務めたパネルディスカッションが行われました。第1部の報告を振り返りながら、それぞれの調査・研究分野に特化した話題で盛り上がり、鈴木義男はもっと評価されないといけない人物であり、まだ発見できていない情報を今後も探っていくことで一致し、4回目のシンポジウムを終えました。
 次回の開催は12月1日を予定しています。詳細は決まり次第、本学WEBサイトに掲載いたします。

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