東北学院大学

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「2020年度東北学院大学入学式」動画配信

2020年04月03日

 新型コロナウイルス感染症のリスクを鑑み、4月2日に予定されていたカメイアリーナ仙台(仙台市体育館)での入学式は取り止め、同日、規模を縮小し、大学院・学部の新入生代表者のみが出席した「2020年度東北学院大学入学式」が、土樋キャンパスのラーハウザー記念東北学院礼拝堂において挙行されました。
 11時より始まった式典では、讃美歌、聖書朗読、祈禱が行われ、大西晴樹学長の告辞、新入生総代の萬眞之介さんによる宣誓後、大学院・学部の新入生代表者に大西学長より聖書と讃美歌が手渡されました。
 大学院・学部をあわせた新入生(2,786名)と保護者の皆様にとっては思い出に残る記念行事でありますが、安全面に配慮した新入生の迎え入れにご理解を賜り、感謝申し上げます。

2020年度入学式 大西晴樹学長告辞

 本日ここに、2020年度入学式を挙行するにあたり、2,786名の新入生の皆様に心よりお祝いを申し上げます。保護者やご家族の皆様の喜びはいかばかりかとお察し申しあげます。残念ながら、新型コロナウイルス感染症拡大防止のために、多くの新入生、来賓、保護者の出席のかなわない代表者入学式となりましたことをお断りしなければなりません。

 本日、入学される皆さんは、それぞれに高校での学びを終え、選ばれて入学の権利を勝ち取られ、東北学院大学の学生になりました。皆さんをお迎えする大学としてはこのうえない喜びであります。私たちは皆さんを一人ひとりかけがえのない人格として尊重し、受け入れ、これから卒業までの4年間、全力で支えていくことをお約束します。

 東北学院大学は、6つの学部と、6つの大学院研究科、学生総数11,000余名を有する東北以北最大の私立総合大学であります。ここ仙台の地で、1886(明治19)年、日本で最初のプロテスタント教会の一員となった押川方義、その押川を支えて本学院設立に尽力したアメリカ人宣教師ウィリアム・ホーイによって、仙台神学校として設立されました。今年、設立134年目を迎えます。仙台神学校は5年ほどで、東北学院と名前を変え、ホーイの後継者であるデイヴィッド・シュネーダー宣教師の下で発展し、1949年に大学となり、今日に至っています。創立以来、東北学院は総計19万人を超える卒業生を送り出してきました。仙台で、東北で、それのみならず、世界各地で、あらゆる職場で、また家庭で良き働きをしています。

 まず学院の教育理念の基盤、これを建学の精神といいますが、それは、「聖書の示す神に対する畏敬の念とイエス・キリストにならう隣人への愛の精神を培い、文化の発展と福祉に貢献する人材の育成を目指す」と定められています。私たちは、この建学の精神をかみ砕いて、スクールモットーとして3つのLを標榜しています。LIFE  LIGHT  LOVEです。これは、シュネーダーの時代から使われ、東北学院の卒業生の間で、長い間親しまれている言葉であります。LIFE(いのち)とは、有限な生命体の命以外に、神が人間に与えられた個人の尊厳を大切にすること、LIGHT(ひかり)とは、学問や科学の成果によって新しい時代を切り開くこと、LOVE(あい)とは、隣人愛をもって地域や世界に仕えることを意味しています。

 この建学の精神によって、大学の3つのキャンパスでは、毎朝10時台に、短くではありますが礼拝が必ず行われています。心を落ち着かせ、静謐な環境の礼拝堂で、ステンドグラスからの光を仰ぎ見、聖書を読み、聖書に基づくメッセージを聴き、学院の根幹の精神を知ってほしいと思います。

 皆さんがこれから大学で学び、生きていく時代は、「大きな変化と危機の時代」です。いまから30年前に起こった東西冷戦体制の崩壊と、コンピュータによる情報革命の到来は、ヒト・モノ・カネの自由な移動を誘発し、グローバル化と呼ばれる「地球一体化」をもたらしました。人工知能(AI)やデータ・サイエンスは、便利な社会を生み出すと同時に人間の生活や労働を大きく変え、いまや、外国語の習得とともに、情報について学び、情報テクノロジーを利用することなしには、よりよい生活ができなくなってきています。

 そのような変化の時代に二つの危機が到来しています。一つは、地球温暖化による気候変動です。産業革命以降、蒸気機関や機械を使うことにより人間は便利で豊かな消費生活を手に入れましたが、そのような生産には、廃熱と廃品というマイナス効果が伴うことを直視してきませんでした。人間は、地球の生態系が吸収できる以上のCO2をはじめとする温室効果ガスを放出しています。昨年の台風19号は、太平洋の海水温の上昇により、勢力を強め、東北地方に甚大な被害をもたらしたことを忘れるわけにはいきません。もう一つは今回の新型コロナウイルス感染症です。グローバル化によって、ウイルスが中国から到来し、瞬く間に国内や世界に拡大し、多くの命が奪われ、悲惨な現状を余儀なくされているのです。

 新入生の皆さんはこうした「大きな変化と危機の時代」只中に、東北学院大学に入学しました。まさにこれからの時代は、予想不可能な時代であり、羅針盤をもたずに航海に出るようなものです。このような困難な時代だからこそ、基礎的な学力と専門的な知識と技能をしっかり身に付け、その知識や技能を活用できると同時に、他者とのコミュニケーション能力をもち、責任ある行動をとれる人間になる必要があるのです。その人間像とは、まさに本学の建学の精神であるキリスト教による人格教育が目指しているものなのです。

 東北学院大学は2036年の創立150周年にむけて作成された中長期計画 TG GRAND VISION 150「ゆたかに学び、地域へ世界へ」のモットーのもとに現在、三つの、大きな変革をなそうとしています。

 その第一は、授業方法の工夫です。アクティブ・ラーニングという方式を授業で取入れるようになりました。その授業では、教授が教えたものを暗記するという詰め込み型の知識ではなく、教授の授業に触発された学生が主体的に授業に関わり、調査して考え、それを発表し、厳しく評価しあうような能動的な学修が求められています。そのために、東北学院大学は、ホーイ記念館に最新のITメディア設備を備えたラーニングコモンズという学びの施設を用意しています。

 第二は、情報化の時代だからこそ、ヴァーチャル・リアリティ(仮想現実)の世界に閉じこもり、現実の社会や地域のつながりを見失いがちです。東北学院大学は、人格形成にとって大切な体育会、文化団体、サークル等の課外活動以外に、ボランティア活動を推奨しています。9年前の東日本大震災以来、本学の災害ボランティアステーションは、全国の大学ボランティア活動のキーステーションとなって活躍しています。どうぞボランティアに参加して、視野を広め、自分は何をしたら世のため、人のために喜ばれるのかを判断できる能力を身に着けてください。

 第三は、仙台にある大学として、東北以北の地域のニーズと取り組む教養教育や専門教育を目指しています。そのために、東北学院大学は、都心型ワンキャンパス構想を掲げ、地域のニーズに近づこうとしています。現在工事中ですが、都心の市立病院跡地に五橋新キャンパスを完成させ、土樋キャンパスと架橋する「アーバン・キャンパス」を実現します。五橋キャンパスの供用開始は、あと3年後の2023年4月ですから、新入生の皆さんが4年生になった時、多賀城の工学部生も、泉の教養学部生も、全ての学生が、都心に位置する五橋・土樋ワンキャンパスに結集して学ぶことになります。それゆえ、皆さんは、「新しい東北学院大学」の先駆けになると言っていいかも知れません。

 東北学院大学の新入生の皆さん。授業の開始は、新型コロナパンデミックのために連休明け以降になる予定ですが、今日から大学生としての4年間の学びがスタートします。皆さんは、日本の、いや世界の大学一年生と肩を並べ、同じスタートラインに立ったわけであります。受験勉強から解放された皆さんは、大学生の4年間は高校生の3年間より長いということに思いを巡らせるべきなのです。4年間の学びが皆さんの将来の「伸びしろ」を確実に用意します。もちろん大学はサポートを惜しみませんが、未来は、皆さんの学修意欲次第で決まるといっても言い過ぎではありません。

 最後に聖書の言葉を贈ります。「求めなさい。そうすれば与えられる。…門をたたきなさい。そうすれば開かれる」(マタイによる福音書7章7節)。

2020年4月2日
東北学院大学 学長 大西晴樹