東北学院大学

新着情報

『地理学概論』 南三陸ホテル観洋 女将 阿部憲子氏 特別講義「東日本大震災からのあゆみ~人々の架け橋として~」

2023年06月27日

 2023年6月16日、地理学概論(テーマ「被災地の地理学」:L507教室)にて「南三陸ホテル観洋」の女将、阿部憲子氏による特別講義「東日本大震災からのあゆみ~人々の架け橋として~」が行われた。当日は台湾から当ホテルにインターンシップで来ている学生11人(静宜大学、文藻外語大学、致理科技大学、高雄科技大学)も熱心に受講した。

 まず東日本大震災とそれに続く大津波発生後のホテルが取った行動を、従業員や避難してきた住民の驚きと悲しみの様子を織り交ぜながら語っていただいた。それは、水と食料と電気がなく、そして情報が錯綜する中で、女将として多くの重大な決断を連続的に迫られた「真剣勝負の時間」でもあった。その後も避難住民に加え、支援に駆け付けたボランティア、医療関係者、建設・土木関係者等の滞在を、副社長はじめ従業員等と共に支え続けた。避難生活が長期化してくると生活面での支援も必要になり、内職のお世話や、子供向けに寺子屋やそろばん教室を開いたりもした。仮設商店街に移転する余力もなく、またマスコミにも取り上げられることもなく、細々と経営を続けていかざるを得ない零細商店を応援するため「南三陸てん(てん)まっぷ」(特典付き買物地図)を作成し、地域とともに復興していく大切さを、身をもって実践したことを話された。これらの経験と教訓は「語り部バス」(2023年1月現在43万8000人が体験)に受け継がれている。真剣な表情で聞く学生の姿から「1000年に一度の災害は、1000年に一度の学びの場」という、阿部女将の言葉がストレートに響いたに違いない。

 この教訓や知恵はコロナ禍で活かされることになる。阿部女将は「みやぎおかみ会」の会長として、県内の主な旅館・ホテルをとりまとめ、低迷する同業者の喫緊の収入確保のために「みやぎお宿エール券」を構想して積極的に販売したり、「((もり)券」(地域を盛り上げたいという意味)という地元で使える商品券を宿泊者相手に提供したりして、「みんなで復活していこう」という取り組みを実践した。単なる学びで終わらせない阿部女将の底力に、受講後の感想文では「感動した」「私もそうありたい」「自分も何かできないかを考えたい」という感想が多数寄せられた。

 このように、今回の特別講義は「被災地の地理学」としてリアルな話を通じた学びの多い時間となった。

230622-2_1.jpg 230622-2_3.jpg
230622-2_2.jpg 230622-2_4.jpg